「うえぇ・・・こんな量のチョコ、どうしろって言うんだよ・・・!?」

それは、一ヶ月前にエドの放った言葉だった。



ホワイトデー





場所はセントラル、ほぼ中央に位置するセントラル軍司令部にて、エドは大量の書類と格闘していた。

よりにもよって焔の中将は風邪で欠席だ。

このくそ忙しい時期に・・・!とエドは顔の引きつりを抑えるのに必死だった。

なにせ、毎年この日はある理由で軍本部もぴりぴりしている。
特に、女性が。

 エドはため息を一つついて、書類と格闘する時にだけつける眼鏡をはずし、椅子によっかかって天井を仰いだ。

ちなみに、エドは眼鏡なんて物を当然必要としない。
だが、先月のバレンタインの時、ホークアイ少佐からケーキとともにこの伊達眼鏡をプレゼントされたのだ。

 ラッピングを解いて中身を見たときは微妙に驚いた。

それをしばし呆然と見ていると、ホークアイが近づいてきて、彼女にしては珍しく微笑んで言った。

「エド君、書類を見るとき、格好だけでもいいからそれかけてみない?きっとカッコいいと思うの。知的にも見えるし。」
なにより童顔隠しにもなるわよ?

そういうリザの言葉に、ついついエドは頷いてしまった。
 彼女の微笑みが、「使うわよね?使わないとどうなるかわかって?」と言っているような気がしてならなかったのだ。

 しかもそれにロイまで加わり、なんと上官命令で「書類処理の際だけ、眼鏡の着用を義務付ける」とか言い出したのだ。

 エドはあまり気にせずにさしたる抵抗もせず、普通に眼鏡をかけていた。
それを見るたびホークアイとロイが嬉しそうな顔をし、若い女性仕官と時々男性仕官までもが、影で「萌えーーー!!!」と叫んでいても、あえてそれを無視して着用し続けていた。
おかげで今では、この眼鏡に愛着が湧き、エドのお気に入りとなっていた。

――――――話を戻すが、エドが眼鏡をはずし、頭を上に上げた途端、その綺麗な金髪が軍服の上をなぞり、眼鏡をとる仕草が妙に婀娜っぽくって、写真の激写する音が聞こえた。


そう、激写。

かしゃかしゃかしゃかしゃかしゃ・・・・・・・・・×∞

と。

その音にエドは目を伏せて口を引きつらせながらその写真のオンパレードを起こした人物達に声をかけた。

「おい・・・・ホントにこんなんでいいのか・・・・?」

するとすぐさま若々しい女性達の声が響く。

「はい!!いいんです!!むしろお菓子よりもこちらの方が目的でバレンタインをあげました!!!」
「大佐、次は射撃場行きましょう、射撃場!!」
「ああ、もうフィルムがない!!だれか、予備頂戴!!」
「あら、次はブラハと戯れるのはいかが?」
「それも良いですね!!どっちがいいですか、大佐!!」

エドはもう言い返す気力もなかったが、とりあえず自分の為になりそうな方を選んでおく。

「じゃぁ、射撃場で・・・。」

と。

そもそも、なぜシャッターの音や場所の指定をされたりしているのかというと、それは彼女達曰く「バレンタインのお返しとしてエルリック大佐の写真をとらせてください!」とのこと。

 エドはバレンタインに大量のお菓子をもらったのだが、昨日・・・ホワイトデー前日に、ロイが体を壊したせいでお返しのお菓子を買えずに軍部に篭り、結局そのまま当日をむかえることとなってしまったのだ。

それをホークアイに言ったところ、ならばお返しは別のものでしてくれればいい、という話になり、写真を撮りたい、となってその話はセントラル中に伝わり、エドにバレンタインにお菓子をあげた女性達が集まり、そのせいで軍は騒然となってしまったのだ。

 おかげでエドは始終女性達に付きまとわれるは、常にシャッターの音にさらされてたり、実は結構疲労していた。

おまけに集団となった女性達は末恐ろしい。
大総統に直談し、エルリック大佐の一日貸し出し権をもぎ取ったというのだ。よってエドは撮影場所を指定され、そのたびにシャッターを切られるはめとなった。

 集中することの出来る場面を選んではいるが、それもすぐにそこをつくだろう。

彼女達へのお礼のかわりと言えど、そろそろ泣きたくなってきたエドであった。

そして頭に浮かべるのは焔の中将のいけすかない顔。
(あのやろう、もしかしてこれがわかっていて休んだのか・・・!?)
と、変に感くぐってしまうのも仕方なかろう。




エドが女性達の前から文字通り姿を消したのは、それから30分後のことだった。








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