「ミニスカートぉ?」


なんでそんな単語が出てきたのかはわからない。

東方司令部へ定期報告にきて、通例どおりハボック達とお茶を飲んでいた時に、気が付いたらそんな話題になっていたのだ。


「そ、ミニスカ。」
「大佐が大総統になった暁には、女性用の軍服はミニスカにするんだと!」
「ロマンですね〜」


次々にミニスカに対する感想を述べていき、最後はお茶を飲みつつどこかに意識を飛ばす。

そんな彼らを、エドは呆れ半分、憐れみ半分の瞳で見ていた。



俺だって男だし





「ミニスカね〜・・・・。」


適当に相槌を打ちながらも、「こいつら溜まってるんだろうな」などとちょっと下世話な事を考えていると、


「ミニスカって言ったらウィンリィがいつもそうだよね!」


などと、何が楽しいのか鼻息あらく、アルフォンスも会話に加わりやがった。

するとその話題に大人たちも食いついていき(相手は15の小娘だぞおい)、いつの間にかミニスカ談義が花を咲かしてきた頃。

彼らの執務室のドアから二人の人物が入ってきたのだ。


「お前達、いったい何の話をしているのだね。」


怪訝そうに眉を寄せてそう言ったのは、この司令部の実質上の最高司令官、ロイ・マスタング。

彼の後ろにはいつものように、その副官であるホークアイ女史も控えている。

エドはロイを見、それから無言でホークアイに視線を移す。

そんな彼の動きも気にとめず、男たちは更にロイも加え、ミニスカ談義に花を咲かせというか頭を春に変えていった。

しかし、ずっとエドが会話に加わらねば、それに気付く者も当然いる訳で。

まずロイが逸早く気付き、次いでニヤニヤ笑ってエドに声を掛けた。


「なんだ鋼の、君にはまだ早いかな? この話題は。何と言ってもミニスカは大人のロマ・・・・・・」
「俺、スリットの方がイイ。」




「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・?」」」」」」




予想では。


『なっ、何言ってんだ! おおおおお俺は!!』


などと顔を真っ赤にして反論してくれるはずだった。

はずだった、のに。


「うん、ミニスカより絶対スリットだって。」


と真面目腐った顔で、しかし口元に淡い微笑を浮かべて言うのである。

思わずその場にいた全員が呆けたような声を出してしまっても、仕方がない・・・・はずだ。


だが、エドはそんな外周も気にせず、真面目腐った顔のまま、じっとホークアイを見て言う。


「何も足の付け根までもある深いスリットじゃなくていいからさ、太ももの半ば位まであるスリットがいい。ミニスカじゃなくて、膝丈のスカートで。」
「や、やけに具体的だな、鋼の・・・・・・」


何故か流れてくる汗を誤魔化すように引きつった笑いでそう問えば、エドは未だホークアイに視線を置いたまま、淡々と答えてくださった。

「・・・・・・だってそっちの方が、色っぽい。」



淡々と答えたのに、時間差で僅かに頬を染めて、その後俯いたエドに、


――――時間が、止まった(というより凍りついた)。





それから、何分経ったころだろうか。

コーヒーを飲んだ体制のまま固まっていたせいですっかり襟元が茶色く染まった某無能が、がしっとエドの両肩を掴んで叫びだしたのだ。


「ははははははは鋼のぉおおお!! 駄目だ、そんな! 君が女性なんかに興味をもっては!!」
「そうだよ兄さん!! スリットの方が色っぽくていいよね!! 何で僕気付かなかったんだろう!!」
「待て待て待て肯定しちゃうのかアルフォンス!? だめだ大将、女なんて怖いんだぞ!? 色香に騙されちゃいけねぇ!!」
「スリットとは、スカート・上着のわき・袖口などに入れる切れ込み・・・・」
「こんな時に淡々と解説するなファルマァァァアアアン!!」


男たちが何故か阿鼻叫喚し、エドに女性への興味を無くさせようと詰め寄って説得しているのを、ホークアイは半ば呆然と見ていた。

そして、我に返ると同時に、再び視線を自分を見ているエドにつかつか歩み寄り、彼の肩を掴んでいるロイを殴り飛ばし、その両手をガシッと掴んで言ったのだ。


穿いて見せましょう・・・・・・! あなたが望むのなら!!」


目をキラキラさせ、そう言うホークアイ女史。・・・・・キャラ壊れてます。


「え! ホントに!?」


そしてそれに嬉しそうに返したエド。





この後、ホークアイが本当にスリットの入った軍服を着たのか、ロイがミニスカという夢を捨てたのか・・・・・それは、当人達のみぞ知る。









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