ワガママキラは、割と重そうな物も軽々と持ち上げる。 自分が持ち上げることが出来ない荷物をひょいと持ち上げられてしまうと、ちょっとだけ・・・いや、かなり悔しい。 カガリはまさに今、そんな心地を味わっていた。 それが男と女の違いと言われてしまえばそれまでだが、何の運動もしていないキラと、体力作りが趣味の己を対比して考えてみれば、何だかそんな理屈では納得できない。 そんな腹立たしい思いをぶつけるべく、自分が持ち上げられなかった物――ラクスを俗に言うお姫様抱っこしているキラを、ぎっと睨みつけた。 「・・・・・・・・・・・・・カガリ・・・・。」 すると困り果てたような顔で名を呼んだキラ。 「そんな可愛い顔をしても無駄だ。私の怒りはちょっとしか揺らがん。」 「ちょっとでも揺らぐんだな・・・・・・。」 無粋な突込みを入れたアスランに取り合えず肘鉄を送っておいて、カガリはキラを指差した。 「おまえ、見た目そんなに細っこい癖して、なんだその腕力は!」 「・・・・・・・・・理不尽じゃない、これ?」 「ふふふ、わたくしは嬉しいのですが。」 何故かキラの腕力に怒っているカガリに、キラは未だ持ち上げられたままのラクスに同意を求めた。 しかし返っていたのは、的外れな言葉で。・・・そうか、嬉しいか。まぁ確かに、恋人のたくましい(見た目は細い)腕に抱き上げられれば、大抵の女性は嬉しがるだろう。 アスランは冷静にその状況を解説しながら、そんなことを思っていた。 ちなみに彼の片手にはコーヒー、もう片方の手には雑誌が開いて乗せられている。完全に傍観体制・・・というか、我関せずを貫いている状態だ。 そんな彼を恨めしげに見やって、キラはひとつため息を吐いた。 「・・・・・・・ってかカガリ、今更だけど。・・・・なんでラクスを持ち上げようとか思ったの。」 「気分だ。」 きっぱりさっぱり返された言葉は、最早諦めしか促さない。キラはゆっくりとラクスを床に下ろしながら、もう一度雑誌を読んでいるアスランに恨みがましい視線を送った。 すると彼はキラにちらりと視線を返し、そして彼と同じようにため息を吐いた。 それから、視線を雑誌から上げずに言ったのである。 「割り切れ、カガリ。キラの腹筋は綺麗に割れてるぞ。」 何をどうなったらそんな話の流れになるのか知らないが、これも彼なりのジョークなのだろうか。 カガリはカガリで「何ぃ!?」と言いつつ自分の腹を凝視していると思ったら、突然「見たい!」と叫びだしたりする。 「なぁ、見たい!!」 「・・・・・・冗談でしょ?」 「私は本気だ! 見せろ!!」 「・・・・・・・・・・嫌だよ?」 「ラクス、お前からも頼んでくれ!!」 「・・・・え? わたくしからも、ですか・・・・・・?」 「おいカガリ、我侭言うなよ。」 カガリが持ち上げられなかったラクスを軽々持ち上げてしまった上、見た目が細いのに腹が割れてる事が、彼女の神経をひどく逆撫でしてしまったらしい。 ・・・・・・まったく以ってよくわからんが。 微妙に退行している風のカガリを見て、キラは今度は苦笑してしまった。 しかし実際ラクスは羽のように軽かったし、男の癖に恋人を持ち上げられないだなんて、プライドも許さなかったのだ。 そんな事を考えている間に、現状はちょっと進んでいた。 雑誌とコーヒーを置いたアスランがカガリを宥め、のほほんとそれを見ているラクスを見て。 とりあえずキラはこのよくわからないその話題を替えるべく、他の題材を探すことに決めた。 しかしその途中で、ふと疑問に思う。 「・・・・・・・・・アスラン、何で僕の腹筋が割れてることを知ってるの。」 キラは腹筋をアスランに見せた覚えはない(当たり前)。 だからと言って、腹筋が透けて見えるような服を来たこともない。彼と再会してからは専ら、厚着ばかりしているのだ。 なので深く考えずに聞いてみたのだが、言葉を発すると同時に、カガリを宥めていたアスランの動きが止まる。 不自然なほど、ピタっと。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・何か言えよ、コラ。」 キラの額に、血管が浮き出た瞬間だった。 おしまい。(ぇ (あとがき) ノーコメントで(逃 ・・・・さっき発掘した、昔書いた話です。微妙なストーリーだったり、視点がコロコロ変わったりする事は気にしないでくださいUu |
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