一人の部下兼親友ががシャワーを浴びていた。


二人の堕天使がそれを覗いていた。


・・・・・・・・・・・・ラクス、僕はどのような反応を取ればよろしいのでしょうか。(ホロリ



シャワー

     副題 : 皆さんの疑問に答えま章。



「ない、な。」

「あぁ、無い。

「隠れてたりは・・・」

「しないだろ、あのボリュームじゃ・・・・。」

・・・・・・なに、この怪しい会話。

 ご丁寧にもラクスの大事な水鏡を使い、アスランの入浴を魔術で覗いていた二人は、まだ僕の存在には気付いていない。

まぁ、水鏡の使用はすっごく気力と体力と魔力を使うし?しょうがないでしょうけどね。

 何が楽しくてアスランの裸体?ちょっと僕なら遠慮どころか液体である水鏡無意識に割っちゃう事くらいしそうなモノなんだけど。

ってかアスランも気づけよ。君覗かれちゃってるよ・・・?なんかじっくり見られちゃってるんだぞ・・・?


などと軽く現実逃避していたら、漸くスティングが僕の存在に気付いてくれた。

「お、キラじゃん。ちょっと聞いていいか?」

と、人の裸体を見ておいて、悪びれもなく。

まだ堕天使三人が魔界に来て一年と経っていないけど、ラクスさん、貴女ちょっと教育の仕方間違ったのでは?と思ってしまっても仕方が無いと思う。

 ラクスに彼らの教育を任したの、間違いだったかな・・・と半ば放心状態で思っていたところ、スティングがキラにもう一度声を掛けたのだった。

「おい、キラ?・・・アウル、もういいんじゃねぇ?いつまでもそんなん見てんなよ。」

「んぁ?そうだね〜。『了』っと。あれ、キラじゃん。どうしたの〜?こんな所で。」

いや、それはこっちのセリフです。

キラは痛む頭を抑え、スティング達に曖昧に返事をしておいて今自分がいる部屋の本来の主へと思念を飛ばしたのだった。

『ラクス・・・。君、今何処にいるの。』

『まぁキラ?いかがなさいましたの?わたくしは今マリューさんとテラスでお茶を楽しんでおりますの。アウル達が何かしまして?』

『してる。めっちゃしてるよ。いいから今すぐ・・・』

『そうですの。ではキラ、後は頼みますわ。あぁ、今回彼らに水鏡を渡したのはわたくしですから、そこら辺は気にしなくてよろしいですわよ?それでは、ごきげんよう。』


ブツッ


「え・・・?き、切られた・・・!?」

ラクスによって言葉を言い終わる前に遮られ、尚且つ思念の糸を切られて呆然としているキラの目の前で、アウルはのんきに伸びをしている。

 しばらくし、何とか我を取り戻すとスティングとアウルがそれに気付き、言った。


「で、キラ。質問なんだけど。」

と。

なんだか脱力してしまったキラは、力なく頷いてそこら辺にあった控えめな装飾が美しい椅子へと腰を下ろした。

 ラクスのものだけれど、仕掛けたのも彼女だし途中で思念を切ったのも彼女なんだから、別に構わないだろう、という変な理屈で小さなテーブルの上にあるクッキーもかじってしまう。

 だがアウルたちはそんな一種やさぐれているとも言えるキラの様子を意に介さず、更に言葉をつなげたのだった。


「なぁ、アスランって山犬一族なんだろ?獣耳尻尾って何処に行ったんだ?」


・・・・・・・・・は?


その疑問に、思わずクッキーを租借する動きを止めて彼らを見れば、二人とも好奇心いっぱいの顔で、しかし何処か真剣そうに自分を見ていたのだった。


 あぁ、そう言えば、ステラは何処にいったんだろう・・・。


などと、突拍子の無い質問に、全く関係のない疑問を覚えてしまったのは蛇足である。

 キラは何とかクッキーを飲み込みながら、わずかに微笑んで言ったのだった。

「ボソッ(ラクス、珍しくもメンドくさがったな・・・?)

あら、わかりました?という涼やかな声が聞こえたのは気のせいだ、気のせい。

すると、常に無くどよ〜んとした雰囲気をかもし出すキラをどう思ったのか、スティングが訝しげに声を掛けたのだった。

「ぁ?どうしたんだキラ、なんか今日変だぞお前?」


そりゃね、親友のシャワーシーン見せられて歌姫に面倒押し付けられて堕天使に変な質問されて。ちょっと僕精神的に疲れちゃったわけよ。


 だがそんな内心は苦笑いをすることで押し隠し、キラは漸く彼らの質問に答えてやったのだった。

「君たち、どうやら魔界の生命体について一から教える必要があるみたいだね・・・。いいよ、教えてあげるからステラつれてきて。まとめて説明するから。」

それを聞き、急いでステラを探しに行った二人を見やり、キラは一つどころか二桁位はため息を吐いたのだった。





「まずアスランの尻尾と耳の件は置いといて、魔界の種族について教えよう。」

数十分後、ステラを交えて先程と同じ場所にて。

―――本当は外で青空教室と洒落込もうかと思ったのだが、生憎と空は今にも雨が降りそうに低迷気味(自分のせい)なので、結局ラクスの部屋で、と言うことになったのだった。

まぁ、そんな事はとっとと思考から追い出し、キラは空中に3層に別れたピラミットのような絵と、そのまわりに楕円を二つほどを書いた。







そして、一番下を指差しながら言う。

「こうやって、主な魔界の生物はほぼ三層に分けられる。下位に属し数も種類も多いのが“獣型魔族”。哺乳類、爬虫類、鳥類、甲殻類、昆虫類・・・ぶっちゃけ、人間の形をしていないモノ全てを指すよ。
 これらは自我も知能も低いのが多いから、誤って人間界に渡ってしまうと急激な環境変化についていけなくなる。よって凶暴化や自我の損失が起こるんだ。そうなった獣型魔族を俗に、人間界では“魔獣”って呼ぶね。」

まんまだけど。そう言って苦笑し、キラは次に真中の層を指差した。

「次に、中位に属する“人型魔族”だ。こちらは知能が高く、ほとんどが魔術に流通している。先見や癒しの手など、特殊能力を持つもののほとんどがこの人型魔族に属するね。人型魔族は生まれた時から死ぬまで人型。姿は変えられない。」

それから一番上の層を指差して言う。

「一番上・・・上位に属し種族も数も少ないのが、“獣人型魔族”だ。ムウさんや、アスランもここに属する。この人たちは明確な種別に集まって住む事が多いから、「○○型獣人一族」って呼ぶのが普通だね。
特徴的なのは、人と獣、どちらの姿も自分の意志で選べるってところかな。ついでに、戦闘能力もすごく高い。だから昔はほとんどの宮廷人が獣人型一族で占められていたんだよ。」

そして最後に、欄外にある楕円二つを交互に指して言ったのだった。


「最後にこの二つ。魔界の自然の流れからは絶対に生まれてこないもの達。
堕天使は君たちのように、生まれが神族の者達のことで、転生は生まれが人間だったのが、高位魔族の手をかりて魔族に生まれ変わった者たちのことだ。君たちが知っているのは、ラクスくらいかな?
ここまでで、何か質問は?」


そう言って、茶器を自分の部屋から空間移動させて、煎れはじめる。

ちらりとみれば、堕天使たちは頭を抱えて必死に与えられた情報を処理中だ。説明苦手なんだよな・・・。と思いつつ、煎れ終わったお茶を彼らの前に置いて彼らが情報を処理し終わるのを待つと、しばらくしてまずスティングが顔を上げた。

「え・・・と、まぁ、特にない。読者の皆さんがこれでわからなかったら付け足してくれればいいと思うぞ。」

「・・・・・・そうだね。」

―――と言うわけで皆さん、質問しちゃって結構です。


まぁ、そんなちょっと物語から逸脱しちゃってる会話は放っておいて、話を戻して魔界の生物。

ステラとアウルに視線を向ければ、アウルが「まぁ、それでいい・・・。」と、ステラが「・・・うん。いい。」と、どちらも視線をそらして心なしか汗を浮かべながら言った日にゃぁ、その様子が子猫を思い出させてちょっぴり和んじゃってまた話が脱線しそうになっちゃうのはご愛嬌。


「まぁ、それで、アスランの尻尾と耳だっけ?さっきも言ったけど、獣人型魔族は人と獣の姿を自由に選べるんだ。
大抵の獣人型魔族の者たちは人型を選択するよ。そっちの方が何かと便利だから。でも疲れた時とか、必要性が感じられた時は獣型をとるらしい。てか、そっちが本来の姿っぽいね。・・・ぶっちゃけ僕も良くわからないのだけれど。
まぁ、やろうと思えば人型時でも爪や牙や翼を出せるらしいけど。でもそんなんほとんど必要ないから、皆普通の人間と同じような姿形を取ってるってわけ。アスランもそう。本人にその気があれば何時だって山犬の姿になれるけど、大抵人型でいる。人には尻尾や獣耳なんて、無いだろ?だから彼にそれらが無いの。わかった?」


 その言葉に、浅い頷きが返ってくるのを見、キラは先ほど入れたばかりのまだ熱いお茶で喉を潤し、一息ついた。


てかこんなん、アスラン本人に説明させりゃよかったかも。

今更そう思いながらもう一つクッキーをかじると、アウルが不意に顔を上げ、キラに好奇心いっぱいの顔で聞いたのだった。


「そう言えば、キラは何型魔族なんだ?一族はどこなわけ?」


と。キラはその質問に軽く目を見開き、苦笑と共に返す。

「・・・・・・内緒。」

と、おどけたように笑って、しかし目だけは真剣に。


その目の鋭さについつい息を呑んでしまった3人に苦笑し、キラは彼らの空になった湯飲みに新しいお茶を注ぎながら、言葉を重ねた。

「ちょっと複雑な生まれでね。僕獣型になれないから人型魔族だってことだけは言えるけど。あとはまた、いつか教えてあげるよ。」


そう言って、顔に微笑みを浮かべる。

すっかりその問題を忘れていたけれど、自分の出生はアスランにさえ言っていないのだ。いや、一応表向き・・・のものは知っているだろうが、・・・・・・本当は――――・・・



 キラは知らず苦笑を浮かべると、自分の状況を思い出して急いで立ち上がった。

「ごめん、僕執務抜けてきてたんだ!あぁぁぁあああ、アスラン怒ってる・・・!!じゃ、またねっ」

そう言って、堕天使たちに手を振ると、走って部屋から出て行ってしまった。



残された堕天使たちはと言うと。

「大変なんだな、キラも・・・。」

という、誰のモノともしれない呟きが、ラクスの部屋に虚しく響いたのだった。



『き〜らぁぁぁぁあああああああああ・・・・・・・!』

「わかってる、わかってるから!今そっちに向かってるから、あんま怒るなってっ!」

『お前、俺が汗を流しに行ってからすぐ逃げただろう・・・書類が一枚も減ってないぞ・・・』

「や、そんなことは・・・。ってかアスラン、君そのシャワーシーン、覗かれてたよ?(プププ)」

『はぁ!?なんじゃそりゃ!!?誰に!!?』

「え?内緒。・・・・・・そう、内緒、だよ。」

『・・・・・・キラ・・・?』

「ん?どうかした?」

『・・・いや、なんでもないさ。とにかく早く来いよ。』

「はいはい。無駄に広いんだって。城ってのはさぁ・・・」



 思念で無駄話に花を咲かせながら、アスランはキラの執務室で眉根を寄せて考えていた。


『内緒。・・・・・・そう、内緒、だよ。』


その声が、常に無く泣きそうに聞こえたのは、気のせいだったのだろうか。


 しばらく考えていると、キラの足音が聞こえ、アスランは思考を中断したのだった。






(あとがき)
はい。皆さんこういうのを駄文というのです、多分。

初めの方で、アウル達がボリュームうんぬん言ってたのは、髪の毛のことですね。
 耳は髪に隠れてるのでは?と聞き、ぬれて幾分ボリュームの無くなったあの髪には、隠れられないだろう。
そんな会話なのです。(ふっ・・・

 魔王陛下に更なる影が!?
なんなんでしょうね、キラの出生にはどんな秘密が!!?
・・・内緒です。“魔王陛下と部下達の奮闘”でそこら辺は明かされるはず。
まぁ、こんなものでも楽しみにしてくれてたりするとコレ幸い。



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