「Shadow of War」


突然介入してきたアークエンジェルとフリーダムはミネルバを背にして戦場を去っていく。主砲のタンホイザーを撃ち抜かれた事もあり、ミネルバクルーたちは苦々しげに二つの影を睨んでいた。
その視線に気づいたわけではなかろうが、フリーダムが180度向きを変えてミネルバに迫ってきた。機体は既に収容済みだったためブリッジは騒然となる。そこにメイリンの一声が響き渡った。
「フリーダムからの通信です。」
タリアは驚きつつも直ぐに攻撃される心配がないことに安心し、通信をつなげさせた。
「こちらはミネルバ。何か用かしら?」
と、言いながらも手振りで慌てるアーサーにMS発進の準備をするよう促す。
「こちらに敵対する意思はありません。」
「こちらの主砲を撃っておいてよく敵対する意思はないといえるわね。」
「あぁ、それはすみません。つい・・・・」
・・・・・・・・
いつまでたっても次の言葉は出てこなかった。『つい、何だよ!』クルーの心は一つになった。
「それで?」
「それでですね。僕はただアスランを一発殴りたいだけなんですv」
心底音声のみの通信でよかったと思った。今の場面、きっとパイロットの背後にはどす黒いオーラが見えただろう。
「というわけで、着艦許可くださいv」
「そ、それは。」





「落とすよ。」





「ハッチ開いて!!」
タリアの賢明な判断にクルーは感謝した。


フリーダムを収めたデッキには先ほどの騒ぎを知らない(ブリッジメンバーは全員医務室行き)見物人で溢れていた。パイロットが降りてきたのを確認してタリアは人ごみをかき分けながら近づいてきた。
「初めまして艦長のタリア・グラディスよ。」
「はじめまして。キラです。」
パイロットがヘルメットを取ると栗色の髪が舞った。現れたアメジストの瞳は全てを魅了してまるで時が止まったようだった。
「あの?アスランは?」
「彼なら待機室よ。案内するわ。」
タリアの後を追うキラの姿にココにいる全ての兵が心を奪われていた。
「そういえば何故アスランがココにいると知っていたの?連絡は取っていないはずよね?」
「簡単ですよ。」
キラは深く息を吸い込んで、
「まず、最初に陽電子砲を撃ったときに『キラ』ってつぶやいたんです。その後も『キラ、キラ』いいやがって。オレンジの『ザクとは違うんだよ、ザクとは!』って嬉しそうに言っていた人と黒いワンコを切った後の赤いガンダムを見て確信しました。赤の好きなあいつがこれ以外に乗っているはずないと!自爆しろって少し見てたんですけどワンコが怒ちゃって『ザクとは違う(以下略)』の人をぶった切ったんでお仕置きに蹴りを入れている間に戦闘が終わっちゃって連絡取れなかったんですよ。あっでもアスランは取ろうとしてたみたいですけど。」
と爽やかに言い切った。
というかコックピット内の人物の行動をあまりにも知りすぎである。
「・・・ニュータイプ?」
「違います。」
即答だった。
「それよりもコーディネイターのくせにハゲなアスランの方が新種―ニュータイプ―ですよね。」
タリアは顔を引きつらせながらある一部屋を指した。
「ココよ。」
「艦長自らありがとうございました。」
キラが部屋に入ると同時にタリアは医務室に針路を取った。


渦中の待機室では予想通りにザフトレッドたちは突然現れた人物に固まっていた。しかし当の本人は目的の人物ではなく金髪美少年を見て誰かに似ているなどと思っていた。
「キラ?」
やはり最初に声をあげたのはアスランだった。
「俺のために会いに来てくれたんだね!」
キラは抱きつこうとするアスランを裏拳で突き飛ばし、いまだ呆然としているパイロットたちに向けて極上の笑顔を見せた。
「はじめまして、すぐ終わりますから。」
内心、落ちたなと思いつつキラはよろよろと立ち上がろうとするアスランにも笑顔を見せ軽く跳んだ。
だけなら良かった。
キラは頚椎めがけ蹴りを入れ、アスランを撃沈させた。
蹴りの威力で飛ばされていくアスランは「俺が悪かった。」と言ったとか、言わなかったとか。どのみち「何が?」と聞ける勇者はいない。
そして、多くをと言うか全く語らずにキラは部屋を出ていった。


帰り際、MSデッキに向かうキラと医務室帰りのブリッジメンバー達は運悪く鉢合わせしてしまった。しまったと思ったもののそこは軍人、彼らの見た目はいたって冷静である。
「ありがとうございました。もう帰りますので。」
その一言でタリア以外のクルーは安心しきってしまった。
「まさか本当に一発殴るだけなんていわないでしょうね。」
どこかで聞いた台詞なのはこのさいスルーだ。
「そうですけど?あっ、蹴りも入れちゃいましたけどね。」
あなたもどうです?なんて顔で覗き込まれてしまった日にゃ、アスラン用棺桶の注文は必死だろう。本能が危険だと警鐘を鳴らす。
「それではさようなら。また今度。」
今度という言葉に引っ掛かりを覚えながらも、触らぬ神になんとやら。クルーたちは無視することに決めた。

こうしてミネルバは色んな意味で一人の少年によって落ちたのだった。








リンク記念に Eyes For Eternityの迅界空様からいただいて参りました。

設定は「戦火の蔭」後なのだとか。

キラ様カッコいいです!! アスラン馬鹿です! ミネルバ組はたじたじです!!

こうゆうわが道を行く系なキラ様は大好きでっす!






  TOP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送