×フレキラメイで10の御題×    By「Tinker*


@フレイnot存命。メイリンは若干黒く、キラは割と白い方。


Aギャグなしシリアス。


B一話一話は短いけど微妙に続いてる・・・?



以上の内容でもよろしければ、スクロールしてください。




























01:彼女の影


アスランを見舞いに来たはずなのに、幼馴染になど目もくれず、視線は共に運ばれてきた少女のみに注がれた。

紅の豊かに広がる髪、それはまるで毒のようにキラの心を侵食する。


「フレイ・・・・。」


思わず呟いた言葉に、隣にいたカガリがぎょっとしたようにキラを見た。

しかしそれにも気付かず、彼はゆっくりと少女の方へ歩いていったのだ。


顔は似ていない、雰囲気もこの少女の方がまだあどけない。

けれどその豊かな紅の髪、すこしだけ癖のある、長い、紅の、


似ているなんて物ではない、“彼女”の髪だ。


「キラ!」


何かを察したのだろうか。カガリが焦ったようにキラの肩を掴んで揺さぶった。


「・・・・・ゴメン、大丈夫だから」


その動作に失いかけていた正気を取り戻し、キラは少女から視線を外す。

見ればどうしても重ねてしまうから。

ただ髪の毛が似ているだけなのに、それでもその印象が強すぎて。

まるで果たされなかった再会を果たそうと、“彼女”が戻ってきてくれたかのように思ってしまう。


そんなことありえないのに、そう、思えてしまうのだ。

















02:絡む視線


不沈艦アークエンジェルに亡命して、早いものでもう数週間が過ぎようとしていた。

アスランもスムーズに話せる程度には回復し、動けるようになるのもあともう少しだと聞く。


するとメイリンの関心はもっぱらそこではなく、現在進行形で自分に纏わりつく視線についてへ移った。

アスランのことも心配ではあるが、こうまで見られればそちらの方が気になってしまっても仕方が無い。

なにせある時は複数、ある時は単数だが、人のいるところへ行けば常に纏わり着いてくるのだ。

だがどうやらそれは、アークエンジェルが地球軍所属艦だった頃からの艦員に限るようで。

しかしそんな馴染みの薄い人たちに面と向かってそれを聞くのも憚られ、とりあえず艦内で今一番気軽に話すことが出来る人に聞いてみた。

すると彼女は少しだけ目を伏せて、黙り込んでしまったのだ。


「ミリアリアさん・・・・・?」
「ごめん、ちょっと・・・・・。」


すごく、言いにくいの。

顔を覆いそう言った彼女に、メイリンは逃げるように「無理しないで下さい」と言って去ってしまった。

そこまで言いにくい事とは、いったい何なのだ。自分は何か失態を犯してしまったのだろうか。

疑問は尽きないが、それでも答えを知るのが何故か怖かった。

しかしあの視線が物珍しさや何かから来る物ではないことだけは解っている。

だってそうならば、あんなにも懐かしむような、それでいて辛そうな視線を送られるはずが無い。


・・・あぁほら、今もまた。


あの人はキーボードを打つ手を止めて、自分を凝視している。

悲しそうな、泣きそうな、狂おしいほどの強い感情を隠し切れずに、今も尚。

そっちを見るのが怖い。怖いのに、見たい。


ゆっくりとした動作で視線の主に視線をやると、彼は一瞬息を止めてからゆっくりと微笑んだ。


硬い、微笑み。離れない、視線。


恐ろしいのに、その悲しげな紫色の瞳に、魅入られてしまった。

















03:紅の幻想


アスランの穏やかな顔を見ていたら、何だか自分まで眠くなってきた。


パイロットであるキラにはやる事が少ないようで実は多く、けれど今日やるべき事は全て終わってしまって。

だから他の人の手伝いをしようと申し出てみたのに、逆に休めといわれる始末。

故に暇つぶしに医務室から動けない親友と雑談しにきたのだが、彼は暢気に夢の中。

最初の内はその寝顔を微笑ましく見ていたが、段々目蓋が重くなってきて、今に至る。


堪らずふわぁ、と小さくあくびをすると、次いで彼は眠そうに目をこすった。

こんな自分の姿を見たら新参の人たちは我目を疑うんだろうなぁと、数年前とは印象が違うらしい自分にちょっとだけ笑う。

しかしそれも、幼馴染を前にすれば無意識に感覚が戻ってしまう物で、どうも元のやんちゃなお子様という印象になってしまうようだ。

しかも今はアスランもネオも昼寝中で、誰の目も無いのだから尚更。


本格的に眠くなってきて、キラはアスランの横たわるベットにポスン、と頭を預けた。


それから気兼ねなく、睡魔に身を任せる事にしたのだった。

おそらくそう数時間もしない内に、親友に説教されながら起こされるんだろうな、と予想しながら。





「・・・・・風邪引きますよ、こんな所で寝てたら。」


しかし予想に反し、キラを起こそうとしたのは少女の心配そうな声だった。

それでも一度眠った事によって居座った睡魔には勝てなくて、薄く開いた目を再び閉じてしまう。

けれどその際、ぼんやりと見えたのは、鮮やかな紅の髪の毛。


「・・・・・・・・・・・・」
「え?」


キラが小さく呟いた言葉を聞き取れなかったらしく、起こそうとしてくれた少女は焦ったように聞き返す。

しかし彼はもう完全に眠りに落ち直してしまったようで、すでに何の反応も返してくれなかった。

よって少女は戸惑ったようにしばらく視線を彷徨わせていたが、普段からは想像もつかないほどあどけない表情を浮かべているキラを見て、なんとなく彼の隣に腰を下ろしたのだ。

それから、その表情に誘われるように手を伸ばす。


褐色の髪は見た目どおりにさらさらだった。そのまま何となく彼の髪を撫でつづけていると、不意に彼の口が動いた。


「・・・・・・・・・・・・」


しかし今度もまた、聞き取れない。それでも同じ言葉を吐いたように思われる。

そして、瞑ったままの瞳から静かに零れてきた雫に、少女の指は一瞬止まり、しかしまたすぐに同じ動作を繰り返したのだった。

















04:きっと今でも


アークエンジェルの食堂で、他愛の無い会話をしている時だった。

ラクスはキラの視線が不意に自分から逸れたことに気付いて、さりげなく彼の視線を追う。

すると案の定、そこには最近アークエンジェルクルーの仲間入りをしたばかりの少女が。


彼女は自分の分の食事を取りに、ラクスの視界を通過していった。

それをなんとも言えない心地で見守っていると、不意に彼女の後姿が記憶の中の少女のそれと重なったのだ。


思わず顔を強張らせ、視線を外す。すると丁度キラと目があってしまった。

何もかもを見透かすような、静かで綺麗な瞳。

まるで一瞬感じた感情を見透かされてしまったようで、少しだけ気まずくなる。

けれどそれを悟らせるようなことはせず、ただ静かに微笑む事で視線に応えたのだった。


しかしキラは、それを受けて何故か申し訳なさそうに目を伏せた。

そして、言うのだ。


「・・・・・ごめんね、ラクス」


それはいったい、何に対しての謝罪なのか。


聞きたくても聞けない。否、聞きたくなかった。


ラクスが先の戦時中、アークエンジェルから離れた後、キラと“彼女”の間に何があったかは知らない。

けれど彼が“彼女”を必死に守ろうとしていた事は、知っている。

そして今、あのメイリンと名乗る少女が気になって仕方が無い事も。


そんな彼の様子を見ていると、嫌でも気付く。

おそらく彼は一生、“彼女”を忘れることなど出来ないのだろうと。

















05:身代わり


人は、眠っているときが一番無防備になる。

それは、肉体的には勿論、精神的にも当てはまると言えよう。

そして寝起きも、同じような状態になるのだろう。心が無防備になって、隠していた事実を暴露してしまうくらいに。


そんなことをぼんやりと思いながら、メイリンは己の行動を深く後悔した。

今彼女は、つい最近逢ったばかりの異性に抱きしめられていたのだ。

いや、抱きしめられていた、ではない。抱きつかれていた。

きつく、息が出来ないほどの力で。もう決して放しはしないと言外に言われているようだった。




そもそも、何故そんな状態になったのかと言うと。

気分転換に向かった海底を望める場所で、彼を見つけてしまったのが始まりだった。

彼は膝の上にノートパソコンを置いたまま、無防備な様子で静かに眠っていたのだ。


それに気付くや否や、メイリンは迷いもせずに彼に近づいていった。


前回は医務室にいるアスランの傍らで寝入っていて、今回は人の出入りが少ないここだ。

自室で休めばいいのに、と思わないでもないが、おそらく性格的に無理なのだろう。

アスランも、彼は手があいてるのに一人だけ動かないのが落ち着かないのだろうと言っていたし。

彼の何処か懐かしむような表情を思い出しながら、メイリンはゆっくりとソファーに座るキラの前で膝をついた。

それから、無言で彼の顔を覗き込む。いつもどこか陰を背負ったような表情が、今はあどけなく崩れていた。

それがどうしようもなく愛おしく思えて、メイリンはゆっくりと眠る彼の顔に自分の顔を近づける。


そして、無意識的にその唇をそっと奪ったのだ。


「・・・・・・・・・・!?」


次の瞬間には、すでにメイリンはキラの腕に閉じ込められていた。

目が覚めていたのだろうか、と推測すると一気に羞恥が襲ってきて、自分の軽率な行動を恨めしく思う。

しかしすぐにそうではない、と気付いたのだ。

彼はどこか夢見るような口調で、ずっと同じ言葉を繰り返していたから。


「フレイ・・・・・・、フレイ・・・・・・・!」


恐らくは、人の名前。

顔は見えないけれど、きっと今彼は目を瞑ったまま、泣きそうなのに嬉しそうな表情をしているのだろうと思った。


そして、気付く。

思い返して見ればこの艦の人間が、キラが見ていたのは自分ではなかったのだ、と。


自分の姿を通して、他の誰かを見ている。

彼の、彼らの反応を見れば、恐らくは故人。


知りたくなんて無かった事に気付いてしまい、泣きそうになった。

















06:此れはきっと愛とは違う


あれは、愛などではなかった。

言い訳なんぞではない、本当の事実。

けれど愛以上にそれがもたらす鎖は長く頑丈で、今も尚キラの心を縛り付けていた。

それが、先程の自分の行動によって改めてわかってしまったのだ。

キラは深くため息を吐きながら、逃げるように去っていった少女の感触が残る手を見下ろした。


すると本当に何をやっているんだ、と自己嫌悪に沈んでしまい、再びため息を一つ。


自分は、あまり寝起きがいいとは言えない方だと思う。昔はそのことでよくアスランがぼやいていた位だ。

今回はその寝起きの悪さが遺憾無く発揮されてしまい、寝ぼけてメイリンを抱きしめてしまったらしい。

しかもどう考えたって彼女の顔は、それだけではないと言っていたが。

情けないことに記憶は無いが、大体の想像はつく。

寝ぼけていた自分が彼女の赤い髪を見て冷静でいられるはずなど無いのだから。


だからと言って、本当に“彼女”に対して抱いていたのは愛ではない。

それはきっと、執着にも似た、狂気。

















07:彼の痛み


気がついたら、目で追っていて。気がついたら、その姿を探していた。


だからこそ、メイリンは気付いた。

彼はやはり、自分を見てはいない、と。

あんなに、すがるように抱きしめてくれたのに、対象は自分ではなかったのだ。


なんて理不尽。ひどい、ひどすぎる。


けれど、気付いてしまった。

彼の自分を見る眼に、愛情が乗せられている訳ではなかったのだ。

誰よりも強く、求めているのに。


そして、やっぱり気付いた。

よく似た誰かを誰かと重ねている、その行動の背景にある心の傷。

恐らくは無意識でもそうしてしまうほど、深い傷。


きっと一生治る事なんて無い、トラウマ。


気付いた途端、笑ってしまった。

なんて自分にとって都合の言い傷だろうか。

優しくそれを抉って、もっと深い傷にしてやる。


“私”が、傷つけるの。

だからお願い。愛でなくても言いから、私を見て。



















08:禁忌の名前


「ミリアリアさん」


AAの食堂で。年が近く同性ということもあってか、割と親しくなった少女と食事をとっていた時だった。

唐突にフォークを動かす手を止めて、ぼんやりとミリアリアを見て。


「・・・・・『フレイ』って、誰ですか」


低く、ミリアリアを見ているのに認識はしていないような瞳を向けて、彼女は問うた。

その様子が、記憶の中のそれと重なって、思わず息を呑む。


なにせそれに伴うこの感情は、二年前によく向けられていたのだ。

赤い髪の少女がふとした拍子に見せた、キラについての話題のときに。

その表情の意味するものは、抑えきれない程の嫉妬の念。


「ど、こで・・・・どこでその名前を聞いたの?」


しどろもどろで、けれどこれでも取り繕った返事。

しかしメイリンは特に気にした風も無く、少しだけ微笑んで言うのだ。


「キラさんが言ってたんです。繰り返し、繰り返し。」


その事実に、どうして動揺を隠すことができようか。

確かに、忘れたとは思っていなかった。けれど無関係な少女にそれと悟られてしまった彼。

何か、どこかに亀裂が入ったようだ。辛うじて保たれていた均衡が徐々に傾いてきた事を、漠然とでも感じずにはいられない。


気付けば不自然な間が開いてしまったが、メイリンはミリアリアの異変を気にも止めず、次の質問をする。

―――果たして彼女は、こんなにも強引な性格だっただろうか。


「フレイさんって、キラさんのことをなんて呼んでいたんですか?」


そんなにも無邪気に、その名を口にしないで欲しい。しかもこんなに大勢がいる場所で。

そう言いたいのに、言えない。豹変した目の前の少女が余りにも“彼女”と重なって、咎める事が出来ないのだ。


どうしようもなくて、気付けば疎遠になって。その過ちに気付いたときには二度と会えなくなっていた友人。

あの時ああしていれば、狂った歯車はかみ合っていたかもしれないのに。キラが、追い詰められる事もなかっただろうに。

眠っていた遺恨が沸々と湧き出しては、ミリアリアの身体から熱を奪っていく。


「何で、そんな事を聞くの」


口の中が乾き、顔が強張る。やはりそれに気付いているだろうに、それでもメイリンは続けて言った。


「会う度に面影を重ねられたら、嫌じゃないですか。」


私は私なんですよ? と、無邪気な表情で。会話が聞こえていた多くの者に衝撃を与えて。


「だからできるだけ、その人と言動が被らないようにしたいんです。」


次いで申し訳なさそうに、けれど少しだけ不満そうに。

その純粋とも取れる言葉。きっと多くの者が彼女に対して罪悪感を感じたことだろう。


けれどミリアリアには、違うように感じられたのだ。


絶対に、嘘だ、と。


にっこりと微笑んで、彼女は明日には彼のことを呼び捨てにしているだろう。

何も知らないような顔で、甘えを含んだ仕草で。


――――そしてどこか、壊れた心で。

















09:選ぶもの


「キラ」


突然聞きなれない声で呼ばれたので振り返ると、そこには紅の髪の少女が微笑んで立っていた。

彼女とは最近知り合ったばかりだが、そんな表情を浮かべているのは初めて見た。にも関わらず、それはあまりにも見覚えがあるものだったのだ。


艶やかさが無垢さに変わりはしたが、その瞳に貪欲とも言える光と、心の闇が宿っている事に変わりはない。

そうそれは、そう遠くない過去、ここアークエンジェルで毎日のように見ていた、恐ろしくも唯一の拠り所だった笑顔と全く同じだったのだ。


彼女は思わず強張ってしまったキラの表情に気付いているのかいないのか、その微笑を絶やさずに数歩分空いていた距離を縮めながら続ける。


「・・・・・って、呼んでいいですか?」


冗談交じりで、無邪気な問い。きっと他の人にはそうとしか見えないだろうそれは、しかし見慣れすぎたキラには通用しない。

だがキラの後ろには、リハビリと称して共に艦内を散歩していたアスランがいた。

事情を全く知らない、親友が。


案の定彼は無邪気にしか見えない少女の様子に苦笑して、中々答えないキラをからかう様に言うのだ。


「なんだ、いつの間にそんなに仲良くなったんだ」


その声が若干嬉しそうに聞こえるのは、自分のせいでザフトから共に亡命する羽目になった少女が、アークエンジェルに馴染んでいる事を知ったからか。

彼女に負い目を感じている、心優しいアスランの事だ。きっとそうなのだろう。


しかしそう思い至ったからこそ、キラは更に返事をする事ができなくなった。


何故ならば確かに仲良くなった訳でもないし、仲が良くなったと認めてもいけないと思ったから。

また、メイリンの言葉に頷くのも、駄目だった。


――――イエスと言ってはいけない。


イエスと言ってしまえば、今まで辛うじて保ってきた均衡が崩れてしまう。
ラクスと言う拠り所によって安定していた精神が、再び揺らいでしまうのだ。


つまり自分の今後だけを考えれば、躊躇うことなく「ノー」と言わなければならなかったはず。


なのに。

生来のお人よしと言えば聞こえは良いが、単に軟弱なだけの精神が、アスランとメイリンが受けるショックを考えて遠慮してしまう。

呼び捨てにしていいか訊ねて、断られたら誰であれ悲しむだろう。そして悲しむ彼女に、アスランは心を痛め、らしくない事を言うキラを心配するのだ。


なんて身勝手な行動。そう思ってしまうのは、やはり弱さなのだろうか。


それでも、たどり着く答えは一つ。


「・・・・・もちろん、いいよ。それとアスラン。変な風に言わないでよ、ディアッカじゃないんだから。」


この時ほど、利己的とも言える己の自己犠牲精神を恨んだことはなかった。

















10:それでも貴方の傍にいたい


キラに避けられてる。

最近、特にそう思う。

切っ掛けは何だったか。そんなこと考えるまでも無いだろう。

そうあれは、初めてメイリンが彼の名前を呼び捨てにして、初めて彼が自分を恐ろしそうに見た日の事。


その時の顔があまりにも綺麗で心地よくて、メイリンは以降事あるごとに彼の名を呼んでいたのだ。


するとある日突然、彼と顔を合わせることがなくなった。

声がした方へ行っても、そこへつく頃には彼は跡形も無く消えている。

それが不満で彼の居そうな場所――医務室や展望室や自室――を探してみても、タイミングが悪いのか必ずやすれ違いになった。


そして今や、彼の姿を見れるのは既に食堂のみ。

しかしその際、キラの隣にはラクスが、メイリンの隣にはミリアリアが随時控えるようになっているのである。

しかも二人とも常にメイリンを無言で牽制していて、彼に話しかける事ができない。


だがそれも当然か、と思う。


メイリンが行動を起こしてから、キラは日に日にやつれていくように見えた。“フレイ”とキラの関係とやらを知っているらしい彼女達には、見ていられないものがあったようだ。

しかし、他の者も彼の不調に気付いているかと言えば、そうでもない。

彼はこの艦の戦力の要だ。彼が居ないと言うだけで、このアークエンジェルの命運は尽きる。

それが彼自身わかっているからこそ、戦意に影響が出ないよう、常に快調のように見せなければならないのである。

それでもメイリンは、彼をいつも観ているから気付けた。――その徐々に弱まっていく様が愉快でたまらない。


目を細めて少し離れたところで食事をとるキラを見ていたことに気付いたのか、向かいに座ったミリアリアが少し冷徹な口調で言ったのだった。


「あなた、それ素でしょう。素でフレイに似てる。・・・・性質たちが悪すぎるわ。」
「え?」


何を言われているのかわからなくて、思わず視線をミリアリアに移す。

すると彼女はメイリンの内心を見透かすように目を細めて、ゆっくりと、どこか痛みを堪えるように言ったのだ。


「似てるの。どうしようもなくキラが好きで、それと同じくらい傷つけたくてたまらないところも。
 キラの姿を探して、アークエンジェル内を歩き回るところも。」


それを過去フレイがやったなどと誰も教えるはずないから、ミリアリアはそう見当をつけたそうだ。


その通りだ。メイリンは、“フレイ”と自分が同じ行動をしているなどと知らなかった。


―――だがそれがどうした。


だって決めた。彼を傷つけて、自分を見てもらうのだと。

“フレイ”と面影を重ねたっていい。とにかく自分を受け入れて欲しい・・・それだけなのだから。


重ねられたって。自分から重ねてしまったって。

私は、メイリンわたしなんだから。

キラが欲しくて仕方ないのも、“フレイ”ではなくて私のなのだから。その事実が要にあれば、それだけで十分だった。










(あとがき)
これで終わりです。この先は、どうぞご自由に妄想してください(ぇ
ただ、一方的な鬼ごっこのままな可能性が高いかなぁと思います。
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