<<幼馴染みに10の御題>> By「Tinker*

@アスキラ悪友設定 Aキラも黒けりゃアスランも黒い B各話に関連なし




04:いつだって、セット扱い(現代パラレル)05:秘密なんて、持てると思ってんの?(種無印/ラクス返還時)06:悪戯を仕掛けよう!(種無印)





















04:いつだって、セット扱い(現代パラレル)


ちらちらと、集団で屯っている女子が向ける視線が痛い。


「・・・・・・・・・・・・・・お前ら、何かやった?」


いつにも増して熱くしつこいそれに、一緒に弁当を食べていたディアッカがついにそう切り出した。

質問を向けられたキラとアスランは面倒臭そうに彼を一瞥した後、紙パックのジュース―――キラはいちごみるく、アスランは杜仲茶(とちゅうちゃ:昨今話題の健康茶)と言うところになんとも性格の差を感じる―――を同時にチューチュー啜ってやる気の無さを全面的にアピールしているのだった。

その行動に質問の肯定を示すような物はない。が、ディアッカは「したんだな」と確信し、もう一度女子に視線を戻した。

彼女達はやはり変わらずこちら・・・というか正確にはキラとアスランだけ(ディアッカはアウト・オブ・眼中。ちょっと悲しい)をちらちら見ては、きゃーきゃー黄色い声を上げていて。

それが自分に向けられているのならばまだいいが、そうでないから尚更うざったい。視線に若干の非難を載せつつ彼女らを観察していると、ディアッカは不意に彼女達の手元にある物体に気づいた。

そこには中身がまだ半分ほど残っている弁当が数個、そして一冊の雑誌。

よくよく見てみれば、彼女達はその雑誌と、アスランとキラとを交互に見ていたのだった。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・雑誌?」


まさかな、とは思いつつもキラとアスランに視線を戻せば、彼らはやはり仲良く同時に顔をしかめてみせる。


「何? 何した訳、お前ら?」
「・・・・・・・・・・何をしたと思う?」


俄然興味が湧いて身を乗り出しつつ重ねて問えば、嫌そうな顔のままストローから口を放さないキラの代わりに、アスランがうんざりと問い返した。こういう事には大抵キラが返すのだが、答えようとしないと言うのはつまり今の彼はまた随分と機嫌が悪いらしい。


「雑誌に載ったんだろ? 詳しく話せよ」


その予想は当たっていたらしい。アスランが深いため息を吐いて早々に肯定し、「元はCMのエキストラとして雇われたんだ」と白状する。


「CMのエキストラ? ってか、何でエキストラで雑誌」
「こっちが聞きたいよ、全く」


ディアッカが更に質問を重ねると、そこで漸くキラもストローから口を離し、不機嫌丸出しの口調で答えたのだ。


「ったく、もう。ギャラがよかったし、顔は写さないって言ったから話に乗ったのにさ」


続けてぶつぶつ文句を言う彼に、これが本当に予想外の出来事だったらしい事に気づく。小利口で用心深い彼らのはずなのに、うっかり騙されてしまったのか。

意外そうな顔で相槌を打ったディアッカに、キラは空になった紙パックをぐしゃりと潰しながら弁解した。


「何か信用できそうな笑みを浮かべてたんだよ、僕らを街角でスカウトしてきた人」
「マリュー・ラミアスとか言ったか。美人で優しそうで、筋が通ってそうな人だったもんな」
「もしかしたらその上の人の命令変更に逆らい切れなかったとか、そんな線も濃いけどね」
「そうだな、あの人が最初からああしようとして声を掛けてきたとは思えない」


そう言いながらアスランが鞄から取り出すのは、相変わらずこちらを見てキャーキャー叫ぶ女子達の手元にある雑誌と同じもの。

次いで差し出されたそれを受け取ったディアッカは、早速パラパラとページをめくり、数秒としない内に問題のページを発見したのだった。


まず目に入ったのは見開き1ページのおよそ3分の1を占める、某有名スポーツメーカーのウェアやシューズを身にまとい、真剣な顔で向かいあうキラとアスランの姿。二人のその無駄のないスラリとした筋肉のついた体や整った顔、溢れる気迫が縮小された写真からでもよくわかる。

それだけではない。小さくはなるが、バスケットボールを守ろうとドリブルをするアスランと、それを奪おうとするキラという二人の動きが分かるよう、その場面を時間差で写した写真も何枚も並んでいる。ちなみにテニスやらバレーやら水泳やら他の競技をやっている者達も沢山同じページに写っていたが、キラとアスランが目立ちすぎてよく見なければ気づかないほどだった。

かなり大々的に写されているそれに、ディアッカは分かっていながらも思わず訊ねていた。


「・・・・・・・・コレ。何やってたの、お前ら」


「「かなりマジでのワンオンワンバスケ対決」」
「やっぱりワンオンワンかよ! チクショウ、俺も見たかった!」


違うクラスの彼らだから、体育の授業でもよく別チームになって対戦する事はあるのだが。殆どの場合がチームプレイを重視する競技内のこと――体育の授業なんて大抵そんなだ――なので、彼らは一対一で衝突する事はあまりない。

何せ彼らが本気になって互いを潰そうとすればするほど、他のチームメイト達は存在を忘れられてしまうというか、ゲームに参加できないままキラとアスランの独擅場となってしまうので、それを防止する為にもいつも彼らは自粛しているのである。

つまり互いにそういう団体競技の場合は、自分よりも他人の見せ場を多く作ろうと司令塔役に徹してしまう。そうでないとゲームが成り立たないのだ。


そんなこんなで彼らの一対一の真剣勝負はそうそう見れる物ではなく、しかしやりさえすればどの競技だろうとレベルの高いそれを見れなかった事が、ディアッカにとっては何よりも残念だった。

そんな彼の心情を察したのか、かなり投げやりにアスランが言う。


「片鱗だが動いている所も見れるぞ。雑誌を見れば分かると思うが・・・不思議な事に、俺達がCMでも主役になったからな。写っている時間は割りと長い」
「色々なスポーツを公平に宣伝して、視聴者のスポーツに対する意識を高めようと言う最初の意図はどこにいったんだろうね。誰の顔も写さないという約束も何だったんだろう。皆顔映ってるし、僕らなんてドアップもされてるし」


遠くを見ながらそう続けたキラだったが、ディアッカは同情よりも先に感謝を覚えた。無論、CMを編集したスポンサーだかテレビ局だかに対して。ディアッカだって見たい物は見たいのだ。しかしその感情が通り過ぎればやはり、浮かぶのはキラ達へ向けてのの同情ばかり。


「ならこれからが大変そうだな。この学校そういうの割と厳しいだろ、先生から呼び出しとかは?」
「とっくだよ。ご飯食べ終わったら来いって言われてるから、僕らもう行くね」


そう言うや否やキラは潰した紙パックを背後へ投げ、それが狙い違わずゴミ箱に吸い込まれていくのを見もせずに立ち上がる。そんな本人の代わりにヒュウ、と口笛を吹いて見事なコントロールを賞賛したディアッカだが、不意に気づいた事があり苦笑した。


「説教まで二人一緒かよ」
「効率が良くて良いじゃないか」


キラと同じく立ち上がっていたアスランは、そうにっこり笑って幼馴染と共に教室を出て行ったのだった。


















05:秘密なんて、持てると思ってんの?(種無印/ラクス返還時)


「キラ、お前も来い!!」


どこまでも暗く、果てのない宇宙に浮かび。ラクスはアスランに手をとられながら、キラと対峙していた。


アスランが差し出した手を、キラは取ろうとしない。AAに彼の友人がいる事を知ったラクスにとっては、わかりきった事だった。

それがキラの選ぶ道ならば、アスラン、貴方は。そう思ってラクスがアスランを見上げると、間近にある端正な顔は苦しげに、そして切なげに歪んでいて。今すぐにも泣き出してしまうのではないかとさえ思えた。

この人もこのような表情をするのだと、所詮表面上の付き合いしかして来なかったラクスは場違いにも感心してしまった程だ。

既にAAの中で、キラからアスランとは仲のよい友人同士だったと聞いていたが、それでも大した感情の起伏は見せず淡々・・・とまではいかないが、アスランなら感情を押し殺してでも任務を優先するだろうと思っていたのに。

それが今はどうだろう、感情をむき出しにし、許されるはずがないのに敵軍のパイロットを連れて帰ろうとしているのだ。

それも強引にではなく、あくまでもキラに選択させるような物言いで。


しかしキラの意思は相変わらず頑ななまま、やはりアスランの手を取ろうとはしなかった。


「キラ・・・・・・・」
「アスラン・・・・・・・・」


しばらくして漸く手を下ろしたアスランは、キラの名をただ切なげに呼ぶ。それに呼応する様に、キラもまた。

これでは、見ている方が辛くて仕方が無い。切なくて、ただ歯がゆくて。


この状況に胸を痛めていたラクスは、しかし不意に急に「あら?」と思った。何故かたった今、彼らの纏う雰囲気がガラリと変わった様に感じられたのだ。


「・・・・・・・・キラ、もう、本当に止めないか? そろそろ胃が危ない」
「馬鹿アスラン、そんな繊細な神経持ってないくせに何言ってんの。大体君は胃より髪の心配しなよ」


何だろう、この雰囲気。先ほどまでの切なげな声は、表情はどこへいったのか。今あるのはその・・・毒々しいというか、宇宙空間より一層黒い少年達のオーラだけ。

その急変には流石のラクスも呆気に取られ、思わず彼らの顔を交互に見てしまう。

するとキラと目がばっちりと合ってしまい、にっこり微笑まれた。AAで一人泣いていた彼とは思えないほど、図太いというか芯がしっかりしているというか、とにかく底知れないほど華やかな笑顔で。


「アスラーン、いいの? 婚約者なんでしょう、ラクスさんは。裏の顔が出てるよ?」
「知るかもう。だいたい胃が危ないのは俺じゃない、父上だ馬鹿。髪の事は余計なお世話だ! 父上だってまだフサフ・・・」
「いや君どう見たってレノアさん似だから。対象基準間違ってるから」


ラクスはアスランの、明らかに投げやりな態度にまたも呆気に取られた。彼女からすればキラとよりもアスランとの付き合いの方が長い分、あの真面目の代名詞のようだった彼の急変の方がよりショッキングだったのだ。

しかしアスランはそんな彼女を一瞥しただけで、やはり気にした風はない。

それどころかフン、と鼻を鳴らし、キラに向けて言ったのである。


「そんな事より!! お前いったい、どれ位物を食べていないんだ!」
「食べてるよ? 普通に。ねぇ、ラクスさん。ってか髪の問題から逃げやがったなデコラーン」


突如話題を振られたラクスは、思わず首を縦に振ってしまう。食堂でフレイといざこざを起こしてからこっち、ずっとご飯は一緒に食べてきたから、それは確かなのだ。

しかしそれでも尚、アスランは疑わしげな眼差しをキラに向けていた。もう何が何だかさっぱりわからないが、ラクスは誤解(?)を解こうと静かに口を開いたのだった。


「アスラン、本当ですわ。キラ様はわたくしとずっと一緒にご飯を食べていましたの。この目で見ておりますわ」


ラクスの記憶の中のアスランは、かなり押しに弱かった。だが案の定というか、今のアスランには全く効果がないようだ。

彼はラクスを再び一瞥した後、キラのコックピットに埋まったままの全身を舐めるように(!?)見、それから左右に首を振ったのだ。


「あなたが嘘をついているとは思えませんが、キラは絶対に必要量を摂取してません。大方あなたと会っていない時にでも戻していたんでしょう」


そんな、まさか。

だがラクスとてキラと四六時中一緒にいた訳ではないから、アスランの言をありえないと言う事はできなかった。


「いやいやいや、ラクスさん、駄目だよ流されちゃ。僕本当にちゃんと食べてたから、そんな自分を責めるような顔しないで」
「・・・・・・・・・キラ」


尚も否定するキラを見、眉根を寄せていたアスランは不意に心配そうな声で友の名を呼んだ。先程のように雰囲気までが変わった訳ではないが、キラを気遣う色がありありと見て取れる。

心配しているのだ、心のそこから。ラクスにはわからない確信を持って、キラの状況を理解した上で。

のけ者にされたような気がしないでもないが、それよりもラクスはこの二人の繋がりに深く感銘を受けてしまった。これほどまでに友を思う人の姿を、これまで見たこともない、と。


そんな彼女の様子に何を勘違いしたのか、突然アスランがキラの正体を教えてくれた。曰く彼はザフトの諜報員であり、アークエンジェルにいるのも任務であるのだとか。その後も何やら言い合っていたが、ラクスは穏やかに微笑んで「仲が良いです事」とか思いながら遠慮なく野次馬と化したのだ。勿論その前に、「お辛いのでしたら、わたくしが裏で糸を引いて半強制的にザフトへ戻して差し上げますわ」と提案する事も忘れずに。


















06:悪戯を仕掛けよう!(種無印)


イージスがストライクの捕獲に成功した。戦闘中に機体が故障でもしたのか、一切の抵抗もなく。

感慨深げに灰色に戻ったその機体を見上げて、クルー達は銃を手に取った。

それは、捕虜となるストライクのパイロットに抵抗させない為の当たり前の行為。なのにニコルの隣でパイロットスーツに身を包んだままそのMSを見上げていたアスランは、何故か呆れたようにため息を吐いたのだ。


「・・・アスラン?」


なかなか出てこないパイロットとクルー達に対し、固唾を飲んで見守るなり、同じように警戒するならまだわかる。なのに、呆れ?

お陰でニコルはストライクよりもアスランの方が気になって仕方がない。一方のアスランは彼の視線に気付いているのかいないのか、突如独り言のようにぼそりと呟いたのだ。


「楽しんでるな」
「は?」


楽しんでいる? 誰が、何を。

アスランらしからぬ不明瞭な言動に、思わず先ほどの戦闘で頭でも打ったのかもしれないと本気心配してしまった。

しかし当のアスランは最早ニコルが隣にいることすら眼中にないのか、彼に目を向けることなく歩き出す。彼の視線の先には、ストライクのコックピットがあった。


「アスラ・・・、」


ニコルは何やら嫌な予感がしたので慌てて呼びとめようとしたが、名を言い終わる前にアスランは足を進めたまま大きく息を吸った。

そして一拍置いてから、あろうことか格納庫全体に響き渡るような声で叫んだのである。


「キラ! こっちの反応を面白がってないでとっとと出て来い!!」


その大音声に驚いたのはニコルだけではない。遠くで同じようにストライクを観察していたディアッカやイザークは元より、名前も知らない作業員達もクルーも全員、思わずストライクからアスランに視線を移して固まってしまった。

しかし驚いたのはその大音声だけではなく、内容にも。


「面白がってるって・・・・。しかもキラ? って誰ですか? ぁ、ちょっとアスラン!?」


ニコルのしどろもどろの質問をもアスランは無視し、ずんずんと妙な迫力を伴ってストライクへと近付いていく。どうやら意識は完全にそちらの方に向いているらしく、今は何を話し掛けても反応してくれないだろう事を周囲に思わせた。

故に思わず無言でクルー達が見守る中、アスランはやはり何の説明もしないまま、身軽にストライクのコックピット部まで上がっていく。


「危ないですよ・・・」


最早忠告するニコルの声は小さく遠い。彼もアスランの突然の行動に、そろそろ意識が遠退き始めていたのだ。

そうしてニコルが諦めのため息を吐いた所で、一向に空かないハッチに、強制開放のパスワードをハッキングしようとしていた作業員を無言の重圧でどかしたアスランは、彼らが先ほどまで弄っていた外部スイッチに手をかけた。

するとまるでパスワードを知っていたかのように一発でハッチが開き、周囲を驚かせたが、それもやはりアスランは綺麗に無視してコックピット内に声を掛ける。


「キラ」
「やぁアスラン」


意外な事に、それに答える声はまだ若い。口調もまるで少年のようで、しかも親しげだ。

それに一瞬我に返ったクルー達だったが、次の爆弾投下に再び先ほどの状態に戻ってしまった。


「てか君さぁ。いったいここでどんな猫被ってたの。大声出しただけでこの反応は何」
「聞いて驚け。割と寡黙で優秀で上品かつ紳士のような猫だ。ってか周りの反応なんて知るか
「あははは。口煩くズボラで俺様な君がよくもまぁそんなキャラを演じられたね」
「父上が涙ながらにお願いしてきてな。ふっ、親孝行だろう?」


駄目です皆さん耳を塞ぎましょう。この会話はあの貴公子のようなアスラン・ザラを尊敬していた人間が聞いてはなりません。

ニコルが今の会話を理解したくなくてもしてしまい、燃え尽きたように白くなりつつも呟いた言葉に、同じような状態に陥っていたクルー達は無言で従った。

アスランはストライクのパイロットと知り合いなのかとか、ストライクのパイロットを捕獲しなくていいのかとか、むしろストライクよ帰ってくれ、そして貴公子のようなアスランカムバック、とか遠い目で思うことしかできず、耳を塞いでも聞こえてくる能天気なのか毒々しいのか分からない会話にクルー達は更に白くなっていく。


「あ、小父さん元気〜? 胃炎治った?」
「俺と言う息子とその幼馴染がいる限り完治することはないだろうってさ。そろそろ慣れればいいのに」
「無理無理。かれこれ十年近く慣れないままでいるんだから」


あっはっはっは、と声をそろえて笑う少年達。果たしてここは本当に、敵MSを収納したばかりの格納庫なのだろうか。

頭の片隅で胃痛持ちらしい国防委員長に同情しつつ、誰も報告に来ず焦れたクルーゼが少年達に声をかけるまで、赤服含むクルー達は微動だにせず黄昏てましたとさ。


ちなみにストライクに乗っていた少年は、実はザフトの諜報員だったらしい。しかしその驚くべき事実も、最早クルー達にとってはかなりどうでもよかった。

そんな事よりも・・・・その諜報員の少年といる時の、貴公子然としていたはずのアスランの変貌の方が、彼らには余程信じられないものであったのだから。






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