<<幼馴染みに10の御題>>
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@アスキラ悪友設定 Aキラも黒けりゃアスランも黒い B各話に関連なし 07:やぁ、隣に住んでるだけの真っ赤な他人。(現代パラレル) /08:昔話でもしましょうかねぇ。(種無印) /10:「親友」というよりは「相棒」かな。(種運命) 07:やぁ、隣に住んでるだけの真っ赤な他人。(現代パラレル) 「キラ、起きろ、起きろって!」 ゆっさゆっさゆっさゆっさとしつこい位揺すれられて、キラは漸く布団の中から顔を出した。ちょっと揺すられ過ぎて頭がぐらぐらするしこの馬鹿、と霞掛かった頭で罵倒して。 折角の休日だからと睡眠を満喫していたのに、何て無粋な事をしやがるのだ。 不機嫌になりながら半眼で起きろコールをしてきた人物、もとい幼馴染を睨んでみるが、堪えた様子は全く見られない。 むしろ彼が起きた事に気をよくし、「ほら起きろ、朝食の用意ができてるぞ」と爽やかな笑顔で告げたのである。 しかし、キラはなかなか動かない。正確には、動くという思考を持つ事さえできていなかった。 そんな彼の様子を見ていたアスランは、呆れの表情でため息をつく。 「意外と低血圧なんだよな、お前は・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・いがいって、なにさ〜・・・」 反応は遅く、いつにも増して舌足らずな返事。しかしアスランも慣れたもので、当初のようにドッキドキvしたりはせずにキラがしがみ付いている掛け布団を剥がしに掛かる。 「学校の奴らがここにいたら絶対驚く。何かイメージ的に朝に強そうな感じがするらしいし。割とテンション高いからな、お前」 「・・・・・・・・・・・それは、いざーくでしょ〜・・・・? ・・・高血圧そうで、老人並みに早起きとかしてそうじゃん」 会話をしている間に、脳が覚醒してきたようだ。途中からしっかりとした口調に戻り、アスランは思わずよしよし、とキラの頭を撫でて無言で蹴り返された。 「で、朝っぱらから何?」 「朝ってお前なぁ。もう9時過ぎてるぞ?」 「・・・・・・・・・・9時っつったらまだ朝だよ!! 君みたいに毎朝絶対6時起きとかホントありえないから!!!」 アスランが起こしに来ない休日は、大抵午後3時ぐらいまで寝ているキラである。午前9時を「もう」とか言う生真面目な幼馴染の言葉は、彼にとっては信じられない認識だった。 「とにかく! 朝食出来てるから。服着替えて顔洗って降りて来い。5分以内にだぞ!!」 ・・・・・・・・・アスラン・・・、君は僕のおかん(母)か!? 内心かなり本気になって突っ込みつつ、キラはとっとと部屋を出て行ってしまった幼馴染を呆然と見送る羽目になったのだ。 +++ 真面目にも言われた通り5分以内に支度を済ませたキラがリビングに下りていくと、丁度エプロンをしたアスランが朝食をテーブルに運び終えた所だった。 その光景に違和感を感じない事に逆に違和感を感じつつ、視線で促されて椅子に座る。するとアスランは食器棚から湯飲みを出しながら言ったのだった。 「牛乳、麦茶、緑茶、紅茶、オレンジジュース、アップルジュース、青汁」 上がり調子でもなく、ただ単に飲み物の名称を上げられただけだったが、それでもどれを飲む、と聞かれたのがわかったので即答する。 「緑茶。青汁はアスランが飲め」 「・・・・・・俺には無理だ。あれは小父さんにしか飲めない」 最初から湯飲みだけを取っていたのだから答えなどわかっていただろうに、と思ったが、懸命にも言わないで置いた。下手に刺激をして緑茶を青汁入りとかにさせられたら堪らない。 そして沸騰したお湯を湯飲みと棚から出した急須に注いだ幼馴染をぼぉっと見、キラはふと思った疑問を口にしたのだった。 「てか、僕の母さんと父さんは?」 「旅行に行ってくるって。2人とも今朝早くにうちに来て、お前の世話を頼まれた」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 どうでもいいが、何故それを息子に言わず隣に住む幼馴染に告げて行くのだ。自分の両親だが未だ謎な点が多い。 しかも世話。高校生男子の息子の世話を、同じく高校生男子の幼馴染に頼むとは。 何だかとっても虚しくなりつつも、何故か普通に朝食を作ってくれ(昨日の夕飯の残りもちゃんと出された)、何故か皿や急須の位置まで知り、尚且つ何故か我が家にマイエプロンを置いてあるアスランだから、まぁ仕方ないかと納得してみたり。 むしろうちの親に家政婦か何かと勘違いされてないかと思ったが、便利なのでこれもまた言わないで置いた。 「アスラーン、緑茶早く〜」 「まぁ待て。まずは茶器を温める事が大切なんだ」 気が付けば緑茶の入れ方までプロ並になった幼馴染の手料理を口にし、「こいつホントに便利だわ」とカリダの味を見事再現して見せたアスランに正直に賞賛の声を上げたのだった。 08:昔話でもしましょうかねぇ。(種無印) 「昔話でもしようか」 突如そう言い出したアスランに、食堂に居た者達の視線が集まった。 つい最近仲間入りを果たしたばかりのその少年は、エメラルドのような瞳を悪戯げに細めてカガリとキラを見る。 「・・・・・・・・・嫌な予感がする」 その少年の幼馴染らしい、当初からAAに乗っていたコーディネイターの少年は、食事をする手を止めて幼馴染を睨みつけていた。 「カガリ、聞いてくれ。幼い頃のキラの話だ」 「へぇ、聞きたい聞きたい」 「・・・・・・・・・」 途端、耳がダンボと化す聴衆たち。アスランの仲間入りとほぼ同時に隠れた面が表立ってきたキラには、多くのものが関心と興味を寄せているのだ。 何せ当初の印象は大人しく儚げな感じ、最近の印象は黒く図太く男らしくといった感じで。 果たしてどっちが本当の彼なのか・・・、そのギャップが大きいが故に誰もが気になっている所なのである。 「あれは10歳の時だったかな。自分の嫁に来てくれと一世一代の告白をしに来た年上の少年がいたんだ。キラは男だからそんなの無理だって言って、最初の方は突っぱねてたんだけど。少年はそんなの嘘だ! って言って諦めない。仕方ないからキラはその少年を、」 「・・・僕の母さんが作ったロールキャベツが大好物だという意外と可愛らしいアスラン君、僕も昔話をしていいかな?」 「・・・・・・・・・少年を、」 「い・い・の・か・な?」 少年『に』、では無く少年『を』どうしたんだ!? という周囲の期待と怖いもの見たさの視線にさらされていたアスランは、額に血管を浮かばせているキラを見て、思わず言うのを躊躇っていた。 幼い頃はいつも一緒に居たせいで、色々なシーンを見て見られ笑い笑われ一緒に報復し陰で笑い・・・なんて事が日常茶飯事だったせいで、とにかくお互いの恥ずかしい過去を沢山知っているのだ。何を言われるのかわかったものじゃないから、迂闊に頷けないのである。 そして何より、キラは怒ると怖い。常識や良心という言葉をちぎってブラックホールに流したかのように容赦なくなる。 しかしそれに反してアスランは、割と彼に弱い。むしろ最後には適わぬと知っているからこそ、逆らえないのだ。 「・・・・・・・・・・・今日のメニューはおいしいな」 「君まだ一口も食べてないと思ったけど?」 「「・・・・・・・・・」」 微妙な静寂と怒りのオーラが、食堂を包んだ。 カガリ含む周りの者達は、内心でアスランを応援しつつもそれを口に出してはいえない。・・・恐ろしいから。 結局その後、アスランの口から続きが語られることはなかった。その代わりと言っては難だが、影でキラが少年をどうしたのかという賭けが行われたとか、行われなかったとか。 10:「親友」というよりは「相棒」かな。(種運命) 正直に言って、シンは『彼ら』に会うのは限りなく遠慮したかった。 けれどそれを許してくれないのが世の中と言う物で、避け続けたにも関わらずあっさり出くわしてしまったのだ。 この、どこか場違いな見た目と雰囲気を醸し出している二人の戦士と。 「シン? ・・・・・・久しぶりだな」 最初に声を発したのはアスランだった。反射的に身構えてしまったシンだが、彼はそれを全く気にせず颯爽と足を進める。 さりげなく無視されてしまった形になり、シンは意外な思いで自分を通り過ぎていったアスランを凝視していた。 何せ以前の彼なら、必ずや困った顔か呆れた顔でそんなシンを嗜めるとかしたはずだ。こんなにもさりげなくスルーされてしまうなど、まずありえない。 しばらくアスランの変化に呆気に取られていたシンだったが、不意に目の前が翳ったのに気付いて顔を正面に戻した。 すると、覗き込むように見上げてくる紫の瞳と目が合う。・・・フリーダムのパイロット、キラ・ヤマトだ。 「こんにちは、シン。エターナルにはもう慣れた?」 そう言いながら肩を押され、アスランが去っていった方向に連れて行かれる。その動作が余りにも自然だったので、シンはリラクゼーションルームのソファーに腰掛けるまで自分が何処に連れて行かれていたのかも気付かなかった。 (これって俺の性別が女だったらかなり危ない状況なんじゃ・・・) 気付いたらホテルに入っていた、というパターンも、キラの手にかかれば日常茶飯事なのかもしれない。 かなり下世話な想像をしている間に、気付けばシンの隣にはキラが腰掛け、逆隣には飲み物を3個持ったアスランが座っていた。つまり、何故か彼らに挟まれている状態だ。微妙に身の危険を感じるのはどうしてなのか。 しかし身を固くしたシンの状態など気にせず、アスランは無言で手に持った飲み物の一つをキラに、そしてもう一つをシンに、最後の一つは自分で飲んでいた。 キラはキラで暢気にカップに口をつけ、それから真ん中に座るシンに声をかける。 「まぁまぁ、そう怯えないで。何も取って食おうってんじゃ無いんだから」 いえいえいえ、もう既にこの異様な状況と雰囲気に飲まれています。 そう内心で叫びつつもどこからかお茶菓子を出してまたも無言でキラに差し出したアスランに、シンはやはり意外な思いをしつつ口を開いた。 「あぁぁあの、仲いいんですね」 情けなくも声が裏返ってしまったが、キラは気にせずににっこり笑って「そう?」と首をかしげていた。 「アスラン」 「あぁ」 次いで突如アスランの名を呼んだキラと、それに頷いて再び何処からか茶菓子を出してシンに渡したアスラン。そして当然のように「食べなよ、美味しいよ?」というキラと、無言で飲み物に口をつけるアスラン。 (・・・・・・・仲がいいって言うか、テレパシー? ツーカー?) 「・・・・・・いただきます」 思い出せば、シンとばったり会った瞬間、アスランとキラは一瞬だけ顔を見合わせてから、前者は先に行って飲み物を用意し、後者はシンをリラクゼーションルームへと誘っていた。 どうやら話す場を設けたかったらしいが、その一瞬でよくもまぁ逃げるシンを追い込む(?)為の役割分担が出来たと言うかなんと言うか。 顔を引きつらせつつそんな事を考えていると妙な静寂がその場を襲い――キラはのんびりと茶菓子を頬張っていて、アスランは相変わらず無言でまったりと水分補給をしているせいだ――、それに耐え切れなくなってついにシンから口を開いていた。・・・もしかしたらそれも二人の作戦かもしれないと思えてしまうところが、なんとも恐ろしい。 「メイリンから二人は親友だって聞いたんですけど、本当ですか?」 他に言う事が無かったのかと自分でも思うが、差し障りのない内容と言ったらこれしか思い浮かばなかった。 本当は「俺の事嫌いなら嫌いだって言えよ!」とか「あんた達を殺そうとした俺のこと恨んでるんだろ!?」とか、言いたかったがとてもじゃないが怖すぎて言えない。 しかしキラはその質問にふ、と目を細め、まるでシンの内心など見透かしているかのような口ぶりで言ったのである。 「親友とかとは、ちょっと違うかな。何せ僕ら、殺しあった仲だし」 「え?」 今ちょっと信じられない言葉を聞いた気がする。思わず自分の耳を疑ってしまったシンに、キラはふふ、と笑ってからアスランに視線を移して続ける。 「ねぇ、アスラン。今更親友には戻れないよね」 「あぁ、いい所で相棒とか、そんなもんだろ」 これは、どういう事だろうか。 これほど仲がいいのに。幼馴染だって、親友だって聞いたのに、殺しあった? ・・・で、結局は『相棒』という間柄に収まった、と。 しかしシンの記憶の中には、彼らが『殺しあった』シーンなんて無い。ならばいつの話だ? と考えていたところに、「でも」というキラの声が聞こえた。 「僕らは仲良く見えるんでしょ?」 「えぇ、すごく」 殺しあった、と言うのが事実だとしたら、不思議なくらいのツーカーっぷり。 「・・・・・・まぁあれだ、『過去は過去、今は今』」 「うん、そう思ってるからね」 何処までも穏やかで、まるで何かを悟ったように言葉を繋げる彼らは、どこかシンとは違う場所にいるように感じた。 けれど確かに彼らは今ここにいて、シンに何かを伝えようとしている。 「君も」 殺しあった、それはシンとアスラン、キラにも当てはまる関係。 そういわれて、はっとする。目を見開いてキラとアスランの顔を交互に見ると、彼らは全てを許すように微笑んで言ったのである。 「割り切らないと、辛いままだよ? ・・・お互いに、ね」 今まで彼らを避け続けていた自分が、酷く子どものように思えた。 ←01〜03 ←04〜06 |
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