気が付くとそこは、見知った光景。

また、ここか・・・

目の前にはワカメ、基いデュランダル議長の姿

何度も同じ夢を見ているため、これが夢であるという自覚もちゃんとある。

そして、夢だから。という理由で目の前にいる男に向かって


『死ね変態。ワカメはワカメらしく海の底に沈んで食用にならない魚の餌になっていてください
 なぜ食用にならない魚かって?そんなの、貴方を食べた魚を食べる人が可哀相だからに決まってるじゃないですか』


などという文句の一つ言いたいところだが、もし現実でも口にしていたらと思うと口には出来ず

ただ、繰り返される場面を見ているしかなかった。


この場面は、理不尽な生活が始まるきっかけとなる場面だが、この場面を見て救われる事もある


それは―――

『トリィ』

「ああ・・・そのロボット鳥だけは君のせめてもの癒しのために置いておくよ。聞けば、前の大戦の時も君の大切なものらしく、ずっと傍においていたようだしね」

「・・・ありがとうございます・・・・・・」

現実でも起こったこの場面で、自分に救いがあることを確かめる事ができるからね


この事に関してだけは本当にありがとう変態たち



トリカエス翼





―――もし、キラの傍にトリィがいたならば―――



キラには準備が出来ていた。
アスラン達に自分の状況を知らせてラクスと母さんを助けるを救い出す手筈もすんだし
ミネルバだけでなくザフト内での信頼も得た。
そして、自分がいろいろと改造したリバイブルというMSも手に入れた。

・・・しかし、問題も残っていた

(シン達に・・・嫌われるだろうね)

長い間の偽りによる生活や一日中付きまとう監視カメラ。
ピアスもあることで気を抜く事が出来ない日常に、さらに戦場というトラウマを呼び起こす最高の状況
アスランやカガリと会話することで少しは楽になったものの、今、親しくなったシン達に嫌われたら・・・自分はどうなるのかわからない
他にも様々な問題を抱える中、ついイザ―クとの通信で思わず叫んでしまった

決して声を出してはいけなかったのに・・・

「・・・・・・・あ・・・ぁ・・・・・・っ」

身体の底から湧き上がる後悔の念と、大切な人がどうなるのかわからない恐怖

どうあがいても取り帰すことの出来ないモノに、自身がどうすればいいのかわからない

頭の回転が速いばかりに最悪な展開が瞬時に脳裏に浮かび上がる


ごめん・・・


あまりの出来事に、心の中で一言呟き、キラの意識はそこで途切れた―――







―――夢を見た。

何時もと違う、幸せな夢。

マルキオ導師の運営する孤児院で、ラクスや母さんが料理を作ってくれて
その間、友人と一緒に子供たちと遅くまで楽しく遊んでいる自分
縛られる事なく、それこそ自由に楽しく笑っている
楽しい一日の終わりはラクスの綺麗な歌声を聞いて、皆で眠りに付く
そんな、幸せな日々―――

―――







夢から覚めた時、眼に入ったのは心配そうな顔をしたシンとレイとルナマリアの姿だった

記憶をたどって、何故こんな状況になっているのか冷静に思い出した。

そっか・・・僕、意識失って―――皆に余計な心配かけちゃったな・・・

「皆、心配かけたみた「馬鹿ーーーーー!!!」

突然、言葉と共に振り下ろされる拳にキラは最高のコーディネーターとしての能力を駆使して全力でよけた

寝起きにしては素晴らしい反射神経のおかげでキラは無事だったが

ギシッ!!

避けることの出来ないベットは、鈍い音をたてた。

えーー!? ちょっ・・・ルナマリア!? 僕、何かしましたでしょうか?

ベットを見つめたまま動かない身体とは反して頭では必死に攻撃される理由を考える
そして考えると同時に、自分の反射神経の良さにありがとう!と心の中で言っていた。

何かを言おうとしていたのか半開きになったまま固まっていたシンが「ルナ!アテナに何してんだよ!」と
文句を言ったが、当事者であるルナマリアはシンの言葉を聞こえていなかったのか聞く気がまったくなかったのか
完璧に無視をしてアテナに話しかけた。
「ちょっと避けないでよアテナ」
「いやいやいや、避けないと重症ではすまない事になってたから、ね?」
「そんなに焦らなくても、冗談よ。私がアテナに怪我負わすわけないでしょ?」

今のは確実に、アテナ(キラ)の反射神経が無ければ避けられませんでしたから!!

叫ぶ勇気のないシン達+αは心の中でだけ突っ込んだ。


問題のルナマリアは、ベットを殴って気持ちが落ち着いてきたのか椅子に座って「本当に心配したんだからね」と少し悲しそうな表情に戻った。

そこを見逃すキラでは無い!!

キラ自身、心配をかけた自覚はあったため素直に「ゴメンね」と少し計算を含んだ表情を向けた


(流石にあの空気のままにしておくと、いつまた拳が飛んでくるかわからないからね・・・)

キラの計算どおり、皆がキラの表情に見惚れていた間、これまたキラの計算どおり先ほどまでの荒々しい空気は落ち着いたものになっていた。

キラの技が出てから5秒後

冷静な男、レイが一番に現実を取り戻し、隣にいるシンの名前を呼ぶ

「シン」

その声にハッ。として、シンが真っ直ぐとキラを見て口を開いた

「・・・俺、アテナに言いたい事があるんだ」

ズキッ。

シンの言葉で、忘れかけていた問題ごとの一つがよみがえる

流石に、逃げられないよね・・・

どんな話かわからないけれど、シンの眼が真剣な話だと語っている
それに、逃げたところで何も状況は変わりはしない

引きつりそうな表情を抑え、何?と何時もどおり返した。

「あのさ・・・フリーダムの事なんだけど」


シンが『フリーダム』と言った瞬間、キラの中で何かが音をたてて切れた


「ねえ、シン。それ、誰から聞いたの?」

最近、忙しかったからシンが自分でこの事に気づくなんてありえないだろうし
じゃあ、誰かから聞いたって事だよね。
まったく・・・どうしてくれようか
僕が色々と大変な中で頑張ってたのに、その努力を無駄にしたヤツはどこのどいつだ

「アテ・・・な、後ろにな、何か「シン、そんなこといいから。で、誰から聞いたの?」

キラの笑顔に押され、シンは怯えながらもその名を口にした

「あ、アスラン・・・さん」


・・・あいつか!!!


キラの後ろから黒い何かが増したとき、部屋にいたある人物が先ほどのシン以上に怯え名から口を開いた

「き、キラ・・・その、事故だったんだ。まさか、聞かれているとは思わなくて」

・・・・・・

「何なんだ?その驚いたような顔は」

キラだけでなく、シン、ルナマリア、レイまでもが驚いてこちらを見て、言った

「「「「ここにいたんだ(ですか)、アスラン(さん)」」」」
「最初から居ただろうが!!!」


「本当に気づかなかったよ。・・・きっと、君がいない世界に慣れるように本能的に頑張ってるんだね」
「何なんだ! その、シリアスっぽい雰囲気は」
「君とは・・・それなりに長い付き合いだったねアスラン」
「待て、キラ! その今生の別れのような言葉は何だ」
「幼い頃から幼馴染だった君がいなくなっても・・・僕、立派に頑張るからね」
「キラならだいじょう・・・じゃない! 悪かったキラ!! だから許してくれ!」
危うく、キラのシリアスモードに乗り、この世とサヨナラし掛けていたアスランは必死に謝った
そんなアスランをシン達が微妙な眼で見ていたのは気のせいでは無いだろう。

「君が謝ったところで、僕がシン達に嫌われたという事実は変わらないんだよ!!
ほんと君って昔から碌なことをしないよね!!!」

「待てって、アテナ!」

キラの言葉を遮ったのは、キラ自身が本当の名前を教えてくれるまでキラと呼ばないと決めたシンだった。

「俺はアテナのことが好きだから、別にフリーダムに乗ってたからって嫌いになんかなんないし
逆にずっと、知らずにアテナのこと傷つけてたから・・・ゴメン。アテナ・・・」

ああ・・・シンの頭の上に垂れた犬の耳が見える・・・じゃなくて!

キラはもう一度シンが言ってくれたことの意味を考え直した

「でも、君の家族の仇だよ?」
「違うんだ! ただ飛んでるのを見ただけで、フリーダムだったわけじゃないんだ
「僕だった可能性もある」
「それでも! 俺はアテナが戦争が嫌いだって知ってるし、アテナが傷つくほうが・・・辛い」

顔を赤くして、眼を逸らすシン

「シン・・・ありがとう」

思いもしていなかった言葉に、驚いたと同時に嬉しかった。
シンがどれほどフリーダムのことを憎んでいたかを知っていたから余計に

シンに心からのお礼を言った時、シンの隣からの視線を感じ見ると、レイが口を動かした。
言葉には出てないが、キラには何を言っているのか判った。

『俺も、同じだ』

「皆、ありがとう・・・」

キラの笑顔を見て、シンやレイ、ルナマリアも笑った。


そんな感動な場面の中、ある人物だけが『俺、忘れられてないか?』と考えていた。



□□□



シン達との仲も、さらに深く、より強くなった後 キラはあることに気づいてしまった。

これって・・・・・・完璧な状況なんじゃない?

@監視カメラが無い今、言葉に出さなければ色々としても気づかれにくい
    Aラクスや母さんの場所は見つけたし(ハッキングで)使えるアスランもここにいるし、短時間ならばハロが二人を守ってくれる(素晴らしい改造のおかげで)
B問題ごとも全て解決。最高のコーディネーター云々は議長の想像や妄想やにして色々と手を加えれば何とかなるだろうし

他の問題も、僕が今まで積み上げてきたモノを使えばどうとでもなる。

Bがかなり適当だが、キラにとっては十分なのだろう

キラは自分が出した結論に、この場にいたことをかろうじて覚えていたアスランに向かって言った

「アスラン!!ほんとに君は碌でもないことを良い方向に持っていく天才だね

これは、褒めているのだろうか?

「ど、どうしたんだ急に?」
「君のことをこんなに感謝したのは3回目だよ!」
「・・・・・・3回・・・少なくないか?」
「他のは全部プラスマイナスで零かマイナスになってるよ」
「マイナスにまでなってるのか・・・」

どこかに心当たりがあるアスランはそれ以上何も言わず引き下がる
そのとき、いつの間にかキラに渡された紙が手の中にあることに気づいた

(これは・・・)

手渡されたのはどこかの地図のようだった。
これが何を指すのかすぐに理解したアスランは、自然に手紙をポケットに入れる。

あまりの自然さに、キラは流石と心の中で呟いた。


これで駒は揃った。


アスランが行動すれば、それを知ったイザーク達も彼を手助けしてくれるだろう


『トリィ』


キラはいつも自分の傍にいるトリィを見て右手を上げ、飛んでいたトリィを手に止まらせた



□□□



今日僕は、彼に奪われたモノを人を、全て取り返す


「アテナ・ヒビキ。君は何をしているのだね」
「あれ、見て判りませんか?本当に年ってとりたくありませんね。僕はリバイブルに乗ってますよ」
「それは判っているのだよ、アテナ。君がしている事が問題なんだが?」
「している事ですか?僕は今、議長室におられる議長と通信で会話しているだけですよ」
「ここをハッキングして操れるのは君ぐらいしか思い当たらないのだがね」
「そんな事になってるんですか、余程セキュリティに問題があるんでしょうね。外部から侵入されてしまうなんて」

自分がやったにもかかわらず平然と笑顔で通信してくるキラに議長はため息をついて、真剣な表情をした

「キラ・ヤマト。これは立派な反逆罪だ、賢い君ならこの行動からどうなるかなど判っているのだろう?」

キラは今、リバイブルで議長室の近くを飛んでいた。
すでに武器を手にしているため直ぐにでも議長を殺せる距離だ。
そして、そのリバイブルの周りには、いくつものMSがいた。

そのMSに乗っているものは殆どがアテナを知っている者たちで、何故彼がこんなことをしているのかと困惑していた。

しかし、何も知らない者たちが考えたところで何も変わりはしないし、わかりもしない。

そんな時、どこからか声が聞こえた―――


「私を殺すつもりかい?」
「まさか、そんなことしませんよ。どれだけ憎い相手でも誰も殺さないと決めましたから」

殺しはしないという言葉に安心したのか判らないが、フッ。と笑って、なら何故こんなことを?と聞いた

「ラクスと母さんを返してください」

通信からの冷たい声と視線に議長は冷や汗を流しながらも顔には出さず平然と答えた

「何の事だいアテナ。ラクス・クラインならコンサートで頑張っているじゃないか」
「とぼけないでください。コンサートに出ている彼女とは別の、本物のラクス・クラインです」
「人々のために頑張っている彼女を偽者扱いとは、失礼ではないかね?アテナ」

その後、議長は声には出さず口の動きだけでアテナに話しかけた

『知っているよ、この会話が途中からプラント中に流れていることをね』

通信越しのキラがピクッ。と反応したのを見て笑みを深め、さらに議長は言葉を続ける

『だから無駄だよ。キラ・ヒビキ君。』

議長の言ったとおり、途中からキラは自分と議長の会話をプラント中に流れるようにした。
議長が知らずに襤褸(ぼろ)を出してくれれば良かったのだが、まったくもって面白くない。
リバイブルから下を見れば、殆どのモノが動きを止めている。
どうやら通信は正常のようだった。


急にプラントに響いた声に始めは皆ざわついていたが、話しているのが議長とアテナだと知ると皆が会話に耳を傾けた。
会話が途切れたのとラクスが偽者という言葉にざわめきが起きたが、再び聞こえてきた声に直ぐに静かになった。

「僕は・・・戦争なんて嫌いです・・・。先の大戦でもたくさんの大切なモノをなくしました・・・
だから、だからもう僕を戦争に無理やり引き込まないでください!!!」

聞こえてくる涙声の叫びは、プラント中の誰もの胸を貫いた。
それと同時に見たことも無い少年、アテナへの同情心と議長へ疑念を持った。
そんな人々の心の変わりようを感じたのか、デュランダル議長は通信に入らない程度の大きさで「やられたな」と呟いた。
そう、キラは涙など一滴たりとも流してなどいなかった
言葉はもちろん本心だが、涙声で訴えたのはわざとだ。
結果、人々はキラに傾きつつある。
元々、アテナ・ヒビキはアカデミーでの優秀な成績や活躍で名前は有名だった、そのため信憑性が非常に高いのだ。

「君がそこまで、心を痛めていたなんて知らなかったよ。こんな騒ぎまで起こすのだからよほど辛かったのだね
しかし、君の実力があれば、たくさんの人を守る事が可能だからね、私としても君が必要だったんだ。
君が無理やりと感じるような頼み方になったのは悪かったよ、心から君に詫びよう」

きみきみ、煩いんだよこの変態ワカメが!!!

人々を守れる力がある人物を、ほっておく事が出来なかったと訴えているのだこのワカメは

「けれど、君の力が必要な事も確かなんだよアテナ。大切な人を守るためにこれからも力を貸してはくれないだろうか?」

『大切な人を守るため』をやけに強調しているのはラクスと母さんのことを含んでいるのだろう

何も言わないキラに議長は黒い笑みを浮かべた。

その時、キラに別の通信が入った

『キラ』

その声に、キラは今までとは違う笑みを一瞬浮かべ、次に黒い笑みを浮かべた

「議長、僕の幼馴染は少し貴方と似ている部分がありまして、このロボット鳥も幼馴染に貰ったんですよ」

カチッ。という音がしたあとに流れたのは過去の言葉


『デュランダル議長・・・!?』
『ああ。私はギルバート・デュランダルだ。はじめましてだね、キラ・ヤマト君。』

『君は十分強いよ、だからこそ私は君を利用したいのだよ。』
『それとも、ここまで言わねばならないかな?・・・・・・ラクス・クラインと君の叔母上の命が惜しいならば、私の手を取りたまえ、と。』
『え・・・・?』
『ああ、言い忘れていたがね、ラクス嬢とヤマト夫人も君と一緒にプラントへおもてなししてあるのだよ。
今は新しく出来た小型のコロニーに2人一緒にいらっしゃる。 もちろん、外界との連絡を一切遮断した形で、ね。』
『わかったかい? 君の逃げ道は無いのだよ。これから君にはプラントの手足となって働いてもらうつもりだから、反抗しない方が君のためだ』
『そうだな、もし君が外界と連絡を取ろうとしたら、その時点でラクス嬢の指を一本切り落とそう。
もし君が逃げようとすれば、夫人の指を。 謀反を誰かに相談した時点で、両人の指をまた。
他には、どんなパターンがあるかな? 決定権は私にあるから、女性達の指が欠けるのを防ぎたいのならば、私の言う通りに動きたまえ。』


もう一度カチッ。という音が鳴り流れていたテープは止まった。

言葉の流れで不自然な部分があるが、後の議長の言葉が印象に残りすぎて誰も不自然だと気づかなかった。

プラント中が静かになっていた。
誰も何も話さず、動く事すらしていない。いや、出来なかった。
皆、自分の頭の中を整理するのに必死だったのだ。

キラ・ヤマトと呼ばれている少年とアテナの声はまったく同じだったのだから・・・

どれだけ止まっていたのかは判らないが、再びアテナの声が聞こえ出した。

「このロボット鳥には幼馴染が何を思ってつけたのか録音機能がありまして、今までの会話が全部入っています」

勝者は決まった。


デュランダル議長は、大きく息を吐いた後、深く椅子に座り込んだ。
その姿は、先ほどまでの威勢のよさはなく、役目を終えた老人のようにも思える

「まさか、その鳥にそんな機能がついているとはね・・・どうやら優しさが仇ととったようだ」

この議長の言葉は、先ほどのを全て肯定したものだった。
キラは、プラントで騒ぎが起きていることに気づいたが、どうでもいいや。と思い、無視して復讐の本番に入った

「ええ、トリィを傍に置いていいと言われた時は本当に『ありがとう変態たち』と感謝しました」

仮にも議長に変態呼ばわり
「・・・変態とは言い過ぎではないかね?」

議長の座から引き下ろされることは覚悟したが、変態のレッテルが貼られることを避けたかったデュランダルは
必死に止めてくれ!!と眼でキラに訴えたが

大の大人。しかも、散々やられてきた議長に眼で訴えられたところで嬉しいとも思わないし、罪悪感すら浮かばない

それは見事な笑みを浮かべてキラはあっさりと言った

「24時間監視カメラを付けて、尚且つ僕に色々と機能のついたピアスをつけるためピアスホールを開けましたよね
しかも楽しくないからという理由で、わざわざ針で開けて痛がる僕を楽しんで見ていましたよね」

変態だ!!っていうか危ない人だ!!!

今までこんな変態ワカメを議長としてしたがっていたプラントの人々は固まった
静かに聴いていたミネルバの人々も、監視カメラのことは知っていたがピアスのことは知らなかったため、他同様固まっていた。

「それじゃあ、皆さん、この変態ワカメの処罰をよろしくお願いしますね」

もう、皆の頭には涙声で話していたアテナはおらず、逆らってはいけない!!と本能が告げる人物―――キラがいた
そのため、皆は必然的に首を縦に必死に振っていた。



□□□



「ラクス!!母さん!!」
「「キラ!!」」
お互い抱き合って無事を確かめ合う3人を、2人を助け出したアスランは静かに見守った。
今、キラに話しかけてはいけないとDNAが叫んでいたからだ。

「ラクス達が本当に無事で良かった・・・」
「私たちもずっとキラのことが心配でしたのよ?」
「そうよ、キラ。少し、痩せたんじゃない?」
「大丈夫だよ。心配事も無くなったし、すぐによくなるよ」

互いを心配しあう会話。
ほのぼのとした空気が流れており、ここまでは良かった。そう、ここまでは、だ。

「そういえばキラ、あの方への処罰が軽かったのではありませんか?」
「私も軽いと思うわ。もう少し色々とした方がいいんじゃないかしら」

色々ってナンデスカ・・・と突っ込みたいところだが、アスランとしてもそこは気になっていた
なにせ、議長の処罰をプラントに任せてきたのだ。キラが決めても良かっただろうに
「だって、罪が重くなったら重かったでそれはそれでいいし、
もし軽かったら、後で僕が直々に手を出しに行くつもりだから良いかなって」
「まあ。そうでしたの!行くときは是非、私もご一緒させてくださいな」
「それは良い考えね。私も一緒に行きたいわ」
「もちろん」

ほらな!!

あれだけのことをされて、キラが優しく終わるわけが無い

何かを感じたのか、キラはラクス達から俺に視線を向けた。

「アスランも、行くだろ?」

嗚呼・・・笑顔が黒いよキラ。昔の白いキラはどこにいってしまったんだい?

そんなことを思いながらも、返す言葉は決まっている

「当たり前だろキラ」




―――end―――   青柳 シンク






―――オマケ―――

「それよりも俺に感謝したのが3回だけっていうのが気になるんだが・・・」
「1回目がアスランが何の目的で付けたかは判らないけど、碌な理由でつけたわけではない録音機能が良い結果に導いたため感謝。
2回目が今回ミネルバで会ったときの対応の良さに感謝。
3回目が君が事故でシン達に聞かれてしまった内容が、僕の困っていた問題を解決させたため感謝。
という、3分の2が碌でもない事から良い方向にもっていたという」
「わかった。わかったからそれ以上はもう言わないでくれ」
「この3つには本当に感謝してるんだからね」
「感謝されて嬉しいんだが、この3つというのに何かを感じるというか、しかも全部最近・・・まあ、いいか」
「そうそう。聞かないほうが君のためだよ、アスラン」
「!?」
  




青柳シンク様からいただきました。
これでいいじゃないか! 最終回!!(ぇ
と思いつつ、何とかかぶらないような最後を迎えさせるつもりです。
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