ある週末の英雄観察日記○月×日 虫の知らせ、とでもいうのだろうか。我らが上司、ロイ・マスタング中将は、ある一定の条件がそろうと奇抜な行動をとることがある。 そう、例えば今のような・・・。 「うぇおぁ!!」 そう叫んで驚いたように肩を激しく上下させ、持っていたインク着きのペンを落とした。ああ、そのせいでせっかく作った書類に不要なインクのしみが・・・! まぁ、また後で自分で一から書き直させればいいかしら。 そんな事を思っていると、いつも通り中将は頭を数秒抱えてその後毅然として顔を上げた。 どうでもいいですけど中将、今更取り繕っても貴方の奇妙な行動はしっかり目についているのでかっこよくもなんともありませんよ? そんなことを考えながらも中将は私に命令を下す。 「ホークアイ中佐、また鋼のが事件に巻き込まれたらしい。場所は・・・」 そう、このような行動を中将が取るのは、必ずもう一人の私の上司、エルリック大佐が何らかの事件に巻き込まれた時に限るのだ。 なぜか場所も内容も正確に把握し、おかげで早い反応と軍の人気の向上に貢献することにもつながっていたが、明らかに不自然だ。 しかし最初こそ半信半疑でしたがっていたが、もう慣れた。 そのくらい戦後頻繁にこのような現象が起こるのだ。 どっかの軍人はしたり顔でこう言っていた。 「きっと戦時中ずっと信頼と協力で自分の力を最大限発揮しつづけ、死の危険をくぐりあってきた仲だから、相手の行動パターンがわかるようになったとか、シンクロしていたり、目で会話できたり、もしかしたらテレパシーなんかも・・・・」 なぜそんな奇抜な発想に行き着くのか聞きたくなったが、あほらしくて止めた覚えがある。 しかし、そうでないとしたらこの具体的過ぎる虫の知らせはどう説明すればよいのだろう。そんな事をつらつらと考えていると、傍らで中将の怪しい行動を共に見ていたハボック少佐が「何でまた、ジュエリーショップなんかにエドが?」と聞いているのが聞こえた。 いけない、自分の思考に沈んでいて中将の話を聞いていなかったわ。 でもどうやら今度はジュエリーショップで事件が起こったみたいね。 ハボック少佐の疑問に中将も眉をしかめ、「知らない」と憮然として答えていた。 エド君が中将にどこか良い店が無いか聞いていたのは見ていたが、どうやら彼は目的までは言わずに行ったらしい。 なぜか不安そうにする上司に、私はからかい半分で言ってみた。 「もしかしてどなたかへのプレゼントではありませんか?・・・例えばエド君の将来の伴侶、とか・・・」 その言葉に中将とハボック少佐が口をあんぐりと開けて私を凝視した。どうやらやはり同じ考えに至っていたらしい二人は、口をそろえて「口に出さないようにしていたのに・・・」と言った。 言わない方が良いと思っていたのなら始めから疑問の声をあげるな、という感じがしたが、確かに口に出せばそれでけ信憑性が上がるような気がするわね・・・。 そう思いながらも顔を青くして唸っている中将を面白そうに観察する。 もちろんそれを顔にはださない。少佐は引きつった顔で私を見ていたが、やはり何もいわない。 そんなこんなで中将の怪しい行動からすでに数分経っていた。 それを言えば中将はまたきりっとした顔に戻り、「行くぞ」といって部屋から出て行った。 いつも思うのだが、なぜ中将の癖に率先して外に出たがるのだろう。そんなに高い地位にいる者は、野外での活動はすべて部下任せなのが普通なのに。 まぁ、そこがこの上司の良い所なのかしら。 ジュエリーショップに着いた時、決着はすでについていた。まぁ、エド君が巻き込まれる事件に駆けつけた時はいつもそうなのだが。 中将は車を降りてすぐに目立つ色彩をもつ青年に向かって歩いて行った。 なぜかその後ろ姿が鬼気迫るように見えたのは気のせいだったのだろうか。 そして目の前にたどり着いて一言。 「つくづく思うのだが、もう少し音量を下げたまえ・・・!」 と。意味がわからない。なんと場違いな言動だろう。しかもなさけない・・・!あの無能、自分達がどれだけこの場の視線を釘付けにしているのか自覚があるのだろうか。いや、絶対にない。 そんな情けない言動、貴方のイメージダウンに繋がるのでは・・・と思ったが、どうやら私以外は誰も気にしていないようだ。 話は変わるが、私の上司二人はとてつもなく目立つ。 新聞で写真をよく使われたことで有名であるから、という事だけではない。二人には似通った独特の雰囲気が漂っているのだ。 威圧感にも似た、一種カリスマといえる、そんなオーラが。 しかも姿形は紛れも無く上位に位置するもの。 よくも悪くも人の目を自然とひきつける力があるのだ。だからもっと自覚を持ってほしい、というのが目下の望みだ。 しばらくすると、上司達が場の収集に動き出した。 私も彼らの指示に従って動き出す。 と、随分とひさしぶりな姿を見つけたのでついつい凝視してしまった。 相手もそれに気付いたのかぺこりとお辞儀をしてきた。 相変わらず礼儀正しい、と思いながらこちらも頭を下げると、もう彼は自分の兄に視線を戻していた。 どうやら、彼も兄と一緒に巻き込まれたらしい。 昔の彼ならば、もっと話しかけてくれたりしただろう。だが、人体錬成の過程で記憶を失ってから、彼とは一度しか話していない。民間人だから軍内に入る事も無く、接点がまるで無い私達は、ただの知人であり、進んで話し掛けるような関係ではなくなってしまったのだ。 それが少しだけ悲しく感じたが、自分は軍人であり今は仕事中だあるから、気持ちを切り替えて自らの役目を果たしに行った。 全てが終わり、さぁ帰ろう、と車を呼んでから上司を探すと、彼のそばにはエド君とアルフォンス君、それにいつの間にか加わったらしい、エド君の養子となったカイル君までがいて、和気藹々と話していた。 それを微笑ましく見ていると、不意に上司が何かをいい、エド君が敬礼をし、一緒にこちらに向かってきた。 またもや複数の視線を集めながら車に乗る上司二人に、私は怪訝に思い聞いてみた。 「エルリック大佐は今日は非番だと聞いているのですが。」 すると、中将がしれっとした顔で答えた。 「「紅の鹿」のおかげで仕事が増えたからな。休日返上させた。」 と。けど絶対違う理由からね。今更テロリストなんかで大きな打撃を受けるわけないのだから。 そう思ってチラリと先程まで彼らがいた場所を振り返ってみると、そこにはなにやら不穏なオーラをかもし出す青年と子供が。 それから何のためにエルリック大佐を連れでしたか予想がつき、ため息をつきながら心の中だけで「子供ね・・・」とあきれたように言った。 ○月△日 今日、驚くべき事が起きた。 昨日の「紅の鹿」についての報告書を製作していたエルリック大佐にお茶を持っていくと、彼が何かを思い出したように顔を上げ、わずかに頬を染めて言ったのだ。 「ホークアイ中佐、渡したいモノがあるんだけど・・・。」 と。何事だ、と思いその場にいた全員がこちらに注目している事に気付いたのか、彼は赤い顔のまま私を人気のない廊下へ連れ出した。 もちろん密かに覗き見をしている者が何人かいる。その中にもう一人の上司の姿も見える。 ちょっとした優越感に浸りそうになりながら、私はエド君に「どうかした?」と優しく言うと、彼は視線をさまよわせて軍服のポケットから何かを取り出した。 それは、小さなジュエリーボックス。出刃亀の中から押し殺した悲鳴が聞こえたが、気にしなかった。 そっと受け取ると、「いつも何かと世話になっているから、そのお礼」といってはにかんだように笑っていた。 どうでもいいが、めちゃくちゃ萌えた。いつもの凛とした態度は何処へやら。とにかくかわいい。母性本能を刺激される。思わずどっかの無能のように叫びながら抱きつきそうになったけれど、根性で抑えて微笑みながら「開けていい?」と聞いたら了承されたので、遠慮なく開けたら中には綺麗なピアスが入っていた。 高そう・・・と思いながら「綺麗ね・・・本当にもらっていいの?」と聞くとまんえんの笑顔で返されたので、「ありがとう」と微笑みながら言えば、また顔を赤くして視線を彷徨わせ始めた。 やばい、本当にかわいい。抱きしめたい・・・!そんな衝動を必死で抑えていると、限界にきたのか、中将が現われてエド君をどこかに連れて行ってしまった。 それを見送っていると、今度はハボック少佐が出てきて言った。 「・・・ホークアイ中佐がエドの将来の伴侶っすか・・・」 その単語に首をかしげると、少佐が「ホークアイ中佐が言った言葉、すでに軍部に広がってますよ。」と、続けて「今のも」と言った。 そしてふと思い出す。 『もしかしてどなたかへのプレゼントではありませんか?・・・例えばエド君の将来の伴侶、とか・・・』 確かに、自分がそう言った。なるほど、それで皆誤解してしまったみたいね。 私達がお互いに恋情を抱く事なんてありえない。ちゃんと意中の相手がいる事をお互いに知っているから。 でもまぁ、良いかしら。 これからしばらくこのネタで遊べそうだし。(何を、とはいわない) でも一応目の前の男にだけは誤解されたくなかったので「純粋に日ごろの感謝だそうよ」と何気なく言ってやった。 すると無意識にだろう、ホッと息を吐いた男に、満足してエド君たちの消えた方向を見て心の中で密かに声をかけた。 あなたも頑張って誤解を解いてあげなさい。 大変だろうけど、いざとなったら私もでるわ。 (あとがき) 何気なく。私は煙×鷹が好きです。逆もOK。 あくまでサイドで展開される彼らの愛情がすき。 やっぱメインは焔鋼で。 もっと言えば鷹×鋼も好き。なんかほんわか系で好き。 |
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