「私達はこれから会談があるから一緒に連れて行けないが、私達が乗って来た船で待っていろ。すぐに戻ってくるから。なぁ、キラ?」


という事で、快く頷いてくれたスティング達をオーブ艦に送り出し、予定より大幅に遅れてしまったが、漸く議長の元へ向かうべくエアーステーションから出た。



Mascot2





「ゴメンね、カガリ。急に飛び出して・・・」

「いいさ。むしろあそこで気づいてくれてよかった。この機を逃せば、あいつらは戦争に使われてしまっただろうからな。」


カガリもキラも、地球軍の非業、強化人間製作という事実を知っていた。 嘗て敵対していたシャニ達の件があり、いろいろと調べた結果である。

そしてステラ達がその強化人間であることに気づいたのは、その時入手した被害者リストの中に、彼らの顔写真が載っていたからだ。

見たのは二年前のデータであったからすぐには気づかなかったが、確かに記憶の中の顔と一致した。

だからこそ半ば必死になって言い募り、追いついたカガリもキラを援護したのだった。


「随員の人たちも、反対しなくてよかった。」

「・・・・・・それは、ほら・・・・・、その。あ〜・・・あいつらはさ、お前が色々人を拾ってくるの慣れてるから。」

「あ、あははははは・・・・・」


言われた言葉に乾いた笑いを発し、さりげなく視線をそらす。少しだけ反省はしているのだ。

その行動によって、キラはカガリが「“キラ様のワガママを聞いてやり隊”の隊員だからあいつら・・・・」と声に出さずに言ったことに気づかなかった。ちなみに、カガリもその隊の一員である。


それにしても、スティング達が快く頷いてくれてよかった。

時間は押していたし、彼らに援軍を呼ばれてしまう確率もあった上、第一受け入れがたい誘いだとはちゃんと理解していたのだ。

実は長期戦も覚悟していたキラは、本当によかったと何度も安堵の息を吐いたのだった。


エアカーまでの距離を、帰ったら彼らの治療法を探らなきゃね、と穏やかに話しながら歩いていると、不意に横から声が掛けられた。


「・・・・・・失礼ですが、アスハ代表でいらっしゃいますか。」


丁寧な物腰で訊ねられ、そちらに視線をやると、見慣れた赤い軍服を身に纏った少年が二人立っていた。

一人は金髪で無表情、もう一人は黒髪でどこか不機嫌そうに視線を有らぬ方向に向けている。

とりあえず敵ではないと判断し、カガリは彼らの質問に答えたのだった。


「そうだが、何だ」

「約束の時間を過ぎてもいらっしゃらないとの事で、もしや何かがあったのではと迎えに参りました。」

「そうか、すまない。」


きびきびと滑らかにそう言う姿は、確かにエリート軍人なのだろう。普段のアスランが余りにも情けないから、カガリとキラは何故か深く納得してしまった。(つまり今までは微妙に納得できてなかった)

同時に、キラは遅れてしまったのは自分のせいだと理解し、もう一度小さくカガリに謝罪したのだった。


「構わないさ。仕方の無い事だ。」


その言葉に何故かぴくりと反応した黒髪の少年は、そこで漸くキラとカガリを視界に入れた。

まず先に見たのは、自分に近い方にいたカガリ。初めて見るその姿に苦々しげに顔を歪め、それからその傍らに寄り添う人物に視線を移した。


「・・・・・ぁ・・・・・!!」


そして同時に、大きく目を見張って固まったのだ。







*** Third Stage ***
   side Shinn
   target : Rey,Shinn


ぬぉう! 何この人、何この人!! かわ、かわいすぎってかマユの色彩萌ーーーー!!

へっ! 俺ってばシスコンだもんな、この茶色い髪、紫の大きな瞳! 俺の萌ポインツを見事にピンポイント攻撃されちまったさぁ!

え? 隣には憎きアスハがいるって? それがどうした、マユの友達は皆いい子なんだ! つまり、マユに似てるこの人の友達である代表も本当はいい子! ぶっちゃけ逆恨みだって俺わかってたし! よかった、ここで気付けて!


「はじめまして、アスハ代表。そして美しい人・・・・。」


綺麗な人に向けてにっこり笑いながらそういえば、何故かアスハが顔を引きつらせて笑っていた。ちょっと失礼じゃないか、それ。

普段絶対こんなこと言わないのに、今回はばっちり且つ自然に言えたんだぞ? もう少しいい反応を返してくれよなぁ。


「・・・・・・・・・・・あちらに送迎車を用意してあります。どうぞ、足元に御気を付けください。」


っておいこらレイ! 何自然に綺麗な人のエスコートしてるんだよ!? その握った手を離せ!! そして顔を赤らめるな気色悪いってかお前誰!!?


「シン、何をやっている。アスハ代表をエスコートしろ。」

「阿呆か! そんな事軍人がする事じゃない!」


そっちの綺麗な人相手ならしてもいいけどな★ ってか可愛いなぁ、そうなの? とか言いつつ首傾げてるよ。庇護欲そそるなぐふふふふ。


「・・・・・・・・・・・・もういいから、このステージ終わらせよう。このままいくとどんどんナレーションが変態化していく気がするから・・・・。」

「は?」


アスハが何か変なこと言ってるけど、どういう意味だ? ステージ?


あぁ待てレイ! さりげなく綺麗な人の隣に座るな!! そこに座っていいのは俺だ! お兄ちゃんなんだぞ俺は!!


「普通は私が隣だ・・・・・」


何げっそりしてんだアンタ、あ、わかった! あんたもあの綺麗な人の隣に座って密かにあ〜んなことやこ〜んなことをするつも・・・・


「とっとと次行け次!!!」


*** Third Stage continue...***








カガリと軍人の少年たちの4人で車に乗って、議長がいるらしい建物へと向かう。随員の方々は後ろから、他のエアカーに乗ってついて来ているようだ。

しかし少年とは言え、流石エリート。何か工作ができないよう、カガリと離されてしまった。別に何かをするつもりなど無いのだが。

このままでは議長との対面の時も離されてしまうかもしれない。今のようにカガリとの距離がたった数メートルならば守り抜く自信はあるが、部屋一つ隔てられてしまえば手が出せないのだ。

さて、どうするか・・・と考え事をしていると、隣に座っていた金髪の少年が建物への到着を告げたのだった。







*** Final Stage ***
   side Cagalli
   target : Last Boss ( Gilbert )


ああぁぁぁああ、どうしよう。帰ったら絶対女帝に何か言われる。

プラントに強引に連れて行った挙句、要らない虫を沢山つけてきやがって、って、絶対!

虫が何をさしてるかって言うのは、説明しなくたってわかるよな? お邪魔虫とかそんな感じの虫だ!!

しかしまぁ、まだ強化人間の子ども達はいいとしよう。逆に女帝ならでかしたと言ってくれそうだからな!

けれど! さっきまでいた(既に追い出された)あの赤服の軍人×2はNGだ! 片方はあからさまに変な道に走ってたし、もう片方も一見わかり難かったが明らかにキラに心奪われていた!!


加えて目の前の“コレ”だ! 一度引っ付いたら中々離れなさそうだし、女帝の嫌味が余計増える!!

絶対に、そりゃぁもうぐちぐちぐちぐち、ねちねちねちねち、とげとげとげとげ(?)とさぁ!!


やばい、胃が痛くなってきた!! 頑張れ私! キラの為にもってかキラの為にこそ!!


あぁぁあああ、だからっ! もういいんだってキラ! その魅力は私達だけに注いでくれれば!! 他の奴にその綺麗な心と顔を見せないでくれ!! 私の心臓が持たん、いろんな意味で!!


あぁ! しかもそんな可愛く困ったように笑わないでくれ! むしろそこのロン毛ワカメ! キラの細っこい手を馴れ馴れしく握るな! 穢れる!!


「どうかいたしましたか、姫?」

「デュランダル議長・・・。その、姫というのを止めてくれないか。」


むしろお前が本当に「姫」と呼びたいのは、今大事そうに手を握り締めているキラだろうが! 鈍い私でもわかるわ!!

ってかどこのスケベ親父だよお前は! キラのスベスベした手を握るな! もむな! 頬擦りするな気持ち悪い!!!


「それは失礼いたしました。ところでご相談が・・・・・」

「いや、待ってくれ。立ったままだと何だから、座ろう。」


客は間違いなく私のはずだ! なのになんで私はこんな、まるで挨拶に来た娘の恋人に対する父のような態度を取らねばならんのだ!!?


訳がわからん! 混乱してきたぞ! しかも微妙に涙が滲んできた!!

だってもうこの虫、絶対キラに張り付いて剥がれん! 私の直感がそう告げている!!


しかしなんたって初対面から数分の相手に、そんなデレデレの情けない顔になれるんだ! 絶対もっと抜かりない人だと思ってたのに、期待を裏切られた!!


「カガリ・・・・・」

「え? あ、どうした?」


何でだか無償に情けなくなっていたところに、キラがそっと声をかけてくれた。キラが座ろうとしているのは意外な事に私の隣だった。

よかった、流石に議長の膝の上とかには座らせられなかったんだな。姉ちゃん実はちょっとそんな危険を抱いていたよ。(むしろただの随員には椅子など与えられないはずのだが、いったい何処から突っ込めばいいのだろうか)


キラは優しい目で私をじっと見て、どこか頼もしそうに言う。その微笑だけでも、姉ちゃんは天国に逝けそうだよ。


「大丈夫。僕に任せて、ね?」


何が大丈夫なのかは皆目わからないが、キラがそう言うと何故か安心できるな!

思わずほわん、と気が緩んだところで、向かいに座った議長が口を開いた。ちぇっ、いい所だったのに。


「さっそく本題に入りますが。」

「あぁ。」


しかしそれを微塵も感じさせることはない。ここら辺は女帝とオーブの狸どもに鍛えられたのだ。

議長は威風堂々と座席に身を委ねているが、先ほども言ったように、私の気分はすでに娘を持つ父親だ。そんな態度でいいと思ってるのかボケ!!


・・・・・と思ったところで、急に冷静に戻った。


危ない危ない。もう少しで冷静を失うところだった。首長同士の会談なのだ、冷静を欠くことは国に致命的な傷を作る事と同意である。

そして議長は敵ながら流石だった。どこまでも目は真剣で、冷静に見える。


彼の雰囲気に若干飲み込まれながらも、私は議長が次に発する言葉を待った。


「・・・・・・・・・・・・彼を私にください。」


議長は重々しく、やはり真剣な瞳でそう言った。しかしさっきまでの妄想が響いているのだろうか。まったく違う言葉に聞こえてしまったよ。

まず言うのは、「オーブから流出した技術と人的資源の軍事利用の件ですが・・・・」とかそんな感じだよな? なんたって私は「娘さんを僕にください」的な言葉と聞き間違ってしまったんだか。


「すまない、ボーっとしてて聞き取れなかった部分がある。もう一度言ってはもらえないか?」

「えぇ。ですから、“彼を私にください”。」


真剣な瞳だ。ただしそれは、粘着質なほどキラへと熱心に向けられていたが。


「・・・・・・すまない。オーブは日本語圏で、プラントは英語圏だという事は重々承知している。だが上手く脳内翻訳ができないんだ。念のためもう一度言ってもらえるだろうか。」

「何度でも言いましょう。“彼を私にください”。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


殴っていいだろうか? いいよな?

ってかその前に、これって首長同士の会談だよな? 決してどっかの親父と娘の恋人の修羅場とかじゃないよな?


「・・・・・・・・いいですよ。ですが、条件があります。」


て言うかなんでお前が答えてるんだキラ!? ってまさか、さっきの「任せて」はこういう意味か? 会談の主導権を渡せと? いやこれは既に会談じゃなくなっているのか・・・・ってまた混乱してきたぞ畜生!!!


ってか条件? いやその前に「いいですよ」? ・・・・・・「貴方をください」→「いいですよ」?


イコール「結婚してください」→「喜んで」?


「ちょちょちょちょちょ、ちょっと待ったぁぁぁあああ!! お姉ちゃんは許しません!!」


ありえない! 私のキラが、こんな男に心奪われたと言うのか!?

いや、むしろオーブの為にその身を犠牲にしようなどと考えているのか!? ダメだキラ、お前はもうこれ以上傷つかなくていいんだ! 姉ちゃんなんとしてでも頑張るから、そんな事!!


「カガリ、落ち着いて。」

「無理、絶対無理!!」


どこに弟が胡散臭い上スケベな親父に嫁ぎそうになるってのに落ち着き払ってる姉が居る!?(いったい何処から突っ込めばいいんだぱーとつー)

けれどキラも何処までも真剣な顔をしているから、思わず言葉を引っ込めてしまった。

するとそれを見計らったように議長が言葉を挟む。お前は黙ってろと言えればどれほどいいか!!


「条件?」

「はい。」


そうだ条件って何だよ。まさか今回の会談の目的を達成させるなんて事だったら、姉ちゃん怒るからな!!

だがキラは私のそんな内心をちゃんと悟っているようで、ふんわりと私に微笑みかけた。可愛いけど。心が和むけど! 誤魔化されないからな、私は!!


その桜色の唇から出る言葉が意に添わなければ、問答無用でオーブに引きずって返してやると心に誓ったところで、漸くキラがその条件を口に出した。

それは、いつもの穏やかさからは想像もつかない、どこか厳しい声だった。


「戦争を、完全放棄してください。」

「っ、? ・・・・・・・・・・キラ・・・・・・?」


予想通りのようで、そうではない条件。流石にその漠然な言葉に戸惑った。

しかしキラはもう一度私に微笑みかけるだけして、再び議長に向けて言ったのだ。


「永遠に・・・とは言いません。そんなこと、出来るはずありませんから。なのでとりあえず、今日この日から議長がお亡くなりになるまでは絶対に、一度も戦争や殺し合いなんかが起きない・・・・そんな治世をしてくださるのなら、考えます。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・我弟ながら、上手い。


冷静に考えればわかる。こう言っておけば、議長が死ぬまで結婚さえしなければ、どうとでもかわせるのだ。


しかしこんな言葉遊びに議長がひっかかるはずがないのでは・・・・・と思ってちらりと議長の頬を見たが、気分が悪くなってすぐさまそれから視線をはずした。


頬を赤く染めて、期待に目を輝かせて「本当かい?」などといっている馬鹿は、絶対にその落とし穴に気づいていない。


すかさず「では手始めに、オーブの人材を返していただけますでしょうか?」と言ったキラに、議長は「あぁ、もちろんだ」と、笑顔で・・・・・・・・・・・・・・いいのだろうか、首長としてこれは。


何だかプラントの先行きが不安になってきたぞ・・・・・・・・・・。


*** Final Stage continue...***








こうして、紫の瞳を持つ少年の純粋な企みにより、議長は彼の手の上で勝手に踊りだした。

戦争を起こしそうな人物を自主的に、そして秘密裏に処理したりして。


何だかんだ言って世間からの評判はいいが、果たしてどこまで続くのやら。


・・・・・・・いや、議長ならば本当に死ぬまでよい治世とやらをし続けるかもしれない。


せめてピンクの女帝から横槍や嫌がらせが入らない事を、健気なおっさんに祈ってやろうではないか。




(あとがき)
プラントは英語圏でオーブは日本語圏うんぬんは、さっきネサフしてたら知ったのですが。真偽の程はわかりません。軽くスルーしてやってくださいUu  



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