「キラ…お願いがあるんだ…。」
いつになく真剣な顔で、カガリが言った。
「お願い」だなんて、珍しい事もあるもんだと思ってついついカガリを凝視してしまった。

「な、なんだよ…」

 カガリが頬を染めてにらみ返してきたので、キラはなんだか微笑ましく思って笑って言葉を促した。

「なんでもないよ。珍しいじゃない、カガリが「お願い」だなんて。それで、お願いって?」

…それから何が起こるかわかっていたら、僕はこの時、絶対にカガリに次の言葉を言わせなかっただろう。

「うん…。なんとかして、アスランと連絡をとりたいんだ…」

 双子の(自称)姉が恥らうように言ったので、目的が真剣な話し合いをする為ではないとはすぐにわかったが、彼女がアークエンジェルに来てから…しいてはアスランと会えなくなってから結構たつので、そりゃぁ会いたくもなるだろうと思い、半ば同情して

「そっか…。出きる限りのことをやってみるよ。」

 とか言ってしまったのだった。繰返し言うが、それから僕が何をすることになるのかがわかっていたら、僕は絶対了承なんかしなかった。

というか…はっきり否定してやればよかったと、後悔した。



知られざる真実と信実





 その後すぐにキラは行動を開始した。
 まずはアスランの居場所だ。彼とはあれ以来連絡がプッチリ途絶えてしまったので、今何処で何をしているのかもわからない。
 カガリの話では、アスランがプラントへ旅だってすぐにオーブが連合と手を結んだということなので、オーブへ戻っている確率は低そうだ。もし戻ってきたとしても、フリーダムがカガリをさらった話はすぐに耳に入るはずなので、わざわざ危険を伴ってまでカガリのいないオーブに留まることはないだろう。

 だからオーブは初めから検索網に入れない。連合も然りだ。
 よって必然的にキラが目をつけるのは、プラント内、ということになる。しかしプラントと言っても半端でなく規模が大きい。より効率的にやるには、もっと検索範囲を狭めなくてはならない。

「カガリはアスランからどこで何をしにいくのかは聞いていない。…あのへたれ…、目的くらい言ってってよ…」

 キラは椅子によりかかってため息をこぼしてから、目を閉じて思考する。

アスランがプラントに行く理由…一瞬軍関係か?と思ったが、彼がまた戦争に組したがるとは思えなかったのでそれは除外することにする。
 他に…と考えて、カガリが少し前にプラントの最高評議会議長・ギルバート・デュランダルにアスランの正体を見破られた…とぼやいていたのを思い出す。
 …ついでにユニウスセブンの落下の防止活動の際、アスランの父親・パトリック・ザラの政治を肯定されて落ち込んでいたという話も。

 ……まさか、ね

 キラは引きつった笑みを浮かべて己の考えを再度否定する。しかし二度も行きついてしまった仮説以外考えられなかった。
 知人にでも会いに行ったのかとも思ったが、あのアスランがこの大事な時期にカガリをおいてただの知人に会いに行くためだけにプラントへ渡ったとはとてもじゃないが考えられなかった。

「…おじサンの政治を肯定され、いまだにザラ派と名乗る集団が出てきた…何の因果か議長との伝手ができた…あのまじめなアスランが考えるようなこと…」

 キラは仮説がだんだん確信に近づいてきたことを感じ、パソコンに向かいなおった。

 まず初めに調べるのは、ここ数ヶ月でギルバート・デュランダルに謁見を申し込んだ人物のリスト。それにアスランの名前が無ければ軍関係の仮説はまずなり立たないと考えていいだろう。アスランは一応一級政犯罪者の息子であり、脱走兵であり、亡命者でもある。普通に考えれば、伝手も無しに軍への復帰は難しいだろうから。

 なんにせよただの仮説であってこじつけのようなものだから、あまり深刻に考えないように、と自分を励ましながら、キラはリストの居場所をつきとめ、開いた。

 そして、それから数十秒もしないうちに、結果がでた。

「あった…。」
 キラは自分の目が信じられなかった。アスラン・ザラの名前はアスランがオーブをたったその日のリストにのっていた。
 あまりに早く見つかってしまい、拍子抜けもいいところだが、これで軍関係の仮説の真実みがましてしまった。しかしまだ軍属したと決まったわけではない。

 キラは真実を突きとめるため、失礼とは思ったが、その日の議長の部屋の防犯カメラの映像を探った。早送りで見てみると、アスランが入ってきてその後数分しゃべり続け、それから議長と二人で部屋を出て行ってしまった。それでもキラは巧みに映像をきりかえ、過去の二人を追っていった。

 そして行きついた先には

「ガンダム…?」

非常に見覚えのある、赤いボディのMSが。キラは嫌な予感がして映像を議長の部屋に戻して、その赤いガンダムについて調べてみた。

「良かった…Nジャマーキャンセラーは搭載していない…」
それに安心して、だがふとこのようなガンダムを秘密裏に作ったうえ、それをアスランにみせた議長の考えがつかめなくて、不信感にもにた感情をもったのでギルバート・デュランダルについても簡単に調べてみた。

「へぇ。この人クライン派だったんだ…ならこの人もラクスと同じ考えの持ち主なのかな?」

 ラクスと同じ考えとは、『思いだけでも、力だけでも戦争は終わらない』といったもので、そこから非常手段としてガンダムの製造に踏み切ったのかもしれない、という風にも思ったが、なんだか釈然と来ないので検索は止めずに更にすすめる。

 すると一人の少年の名に行き当たった。議長が身元引き受け人となっている少年だ。無駄な情報だろうとは思ったが、キラはなぜか惹かれる様にその少年についてのファイルを開いた。

 ファイルには少年の顔写真と声紋、そのたプロフィールがのっていた。その少年の顔を見た途端、キラに悪寒にも似た衝撃がはしった。

 だってこの顔は。

キラはそのまま恐る恐る声紋用に登録されているボイスを再生した。
 この声は。

「な…んで…」

二年前の記憶が蘇る。一度だけ自分とあの人の生まれた施設でみた顔。
幾度と無く戦闘の間で交わした声。
自分が殺した。
唯一の同胞。

「ラウ・ル…クルーゼ…」

あの人と同じ声・同じ顔を持つ少年の出生は、「UNKNOWN」。
少年の名は…「レイ・ザ・バレル」
あの人達と似た名前の語呂。確信する。

彼は「あの人」の進化型クローン。

 呆然とするキラの目に更なる情報がはいってきた。先ほどから流しっぱなしの早送りされた議長の部屋の映像から。そこには議長と、

懐かしい赤服を着たアスランと

僕の大切な人。

「ラ…ク…ス……?」

そんなばかな。彼女はずっと地球に、キラのそばにいた。では、このラクスは…何?

キラは信じられなくて少し巻戻して音声をオンにして再生する。

 しばらくすると、ラクスと同じ顔の少女は「ミーア」と呼ばれていて、ラクスとは全然立ち居振舞いが異なってることに気付き、訳も無く安堵した。

そして。アスランはフェイスに所属して「ミネルバ」へ行くという。

アスランが軍に復帰したのは、逃れ様も無い事実だった。



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