キラから聞いた話は、あまり信じたい内容ではなかった。 「俺は、どうすればいいんだ…。」 アスランのつぶやきは、誰もいない広い私室のせいでやけに大きく聞こえた。 知られざる真実と信実6『君は最近、プラントの新議長…ギルバート・デュランダルに会ったね?』 『そしてミーア・キャンベルとも』 『あの孤児院はフェイスによって破壊された。彼らの狙いはラクスだったよ。』 『君ならわかるだろう?だれがラクスを殺そうとしたのか。だれにとってラクスを殺すことが有利になるのか。』 『あの人が遺伝子学の権威だということは知っているね?』 『彼はクローン人間を作った。又は作ってはいないがその存在を知っていて、利用しようとしている』 『彼は信用できない。君が例えどんなにあの人のことを信頼していても、僕は絶対にできない。』 『僕の話に君がどう結論付けるかはわからない。ただ、これは僕からの忠告だと思って記憶の片隅に留めておいてくれれば、それでいいよ』 『彼を全面的に信用したりは、しない方がいい。』 『……僕らは、いつだって君を歓迎しているよ。…カガリも会いたがってるし、ね。』 「…あれはちょっと、汚かったかな。」 キラは先ほどの会話を思い出して、自嘲ぎみにつぶやいた。 キラの最後の言葉は、言外に「あの人ではなく、自分を信頼しろ」「カガリを大切だと思うのならば、ザフトを止めてAAに来い」と言っているような物だったのだ。 一歩前を歩いていたルナマリアとレイが、キラのつぶやきに気付いて後ろを振り向いた。 キラはそれにはっとして、気配をたどって横を見ればシンもこちらを向いて不思議そうな顔をしていた。 あれ?、と思いながら今の状況を思い出す。 アスランとの会話を終えて医務室を出ようとしたところで、ブリッジから戻ってきたレイと出くわしたのだ。 治療は終わっていたので帰るむねを伝えると、「出口までお送りします」と言ってくれたので、いまだに混乱しているアスランを言いくるめてそこで別れ、レイに促されて歩き始めたらいつのまにかルナマリアとシンまで加わっていたのである。 ちなみに、キラはレイと二人っきりになることによって作られた沈黙の最中に回想し始めたので、我に返った時二人がいつのまにか目の前にいたことに、ちょっと驚いた。(←いつ加わったのか気付かなかった) よって、キラは自分を見つめてくる3対の視線に対して、場違いな言葉を発してしまった。 「あれ?いつのまに…!」 その言葉に3人は呆れたような顔をして、同時にふきだした。 「やだなぁ、もう。気付かなかったんですか、今まで?結構一緒に歩きましたよ」 ルナマリアが笑いながらキラに向けて言い、シンとレイは笑うのを必死に抑えているようだった。 キラはその様子に顔を引きつらせ、「あはははは…」と渇いた笑いをこぼした。 それからも他愛のない会話を繰り広げ、ついにミネルバの収容されている施設の出口にたどりついた。 それに気付いて、四人とも立ち止まる。そしてキラだけが外に向かって2,3歩進み、その後後ろを振り向いて穏やかな顔で礼を言った。 「お見送りありがとう。あ、アスランと会わせてくれたことと、治療をさせてくれたことも、感謝しているよ。本当にありがとう。」 キラが微笑んでそう言うと、3人も微笑みかえしてどういたしまして、の意味を表したのか、敬礼をした。 キラはそれに苦笑して、片手で数えられるほどしかしたことのない、形だけ教えてもらったザフト式の敬礼を返した。 そしてすぐに手を下し、キラは「じゃぁ。またいつか会おうね。」といってきびすを返した。 キラのミネルバから遠ざかる背中を見つめながら、ルナマリアはふと重要な事(でもないけど)を思い出して、声が届くか届かないかという所まで行ってしまったキラに、あわてて声を掛けた。 「キラさーーーん!!!そういえば、二つ名教えてくれる約束でしたよねーーーー!?」 キラは「覚えてたのか…」と内心思いながら立ち止まり、後ろを振り返って言葉を返した。 「そうだったね。まぁいいや。アスランと会わせてくれたお礼として、両方教えてあげるよ」 そしてルナマリアの「ありがとうございまーーーす!」という元気な声に笑ってから、聞こえるか聞こえないかというギリギリの声量で言葉を続けた。 「…連合の白い悪魔、と……虚空の天使、だよ。…………またいつか、戦場でないところで会いたいものだね…、シン・アスカ」 と、言って姿を消した。 キラの言った言葉が聞こえてしまったザフトレッド3人は、目を見開いて頭を整理していた。 連合の白い悪魔は当時地球軍唯一のMS、ストライクに付けられた名称。その容赦なくも反撃を許さない攻撃をすることから、当時最強と歌われたMS。 そして、虚空の天使、とは… 「フリーダム………!」 様々な戦局で、一瞬で一人たりとも死者を出さずにただただ戦闘具を落とすだけで数多のMSを戦闘不能にしたという神業的な力を持つ伝説のMS。 その五対の翼を持つように思わせる機体と、かの機体を相手にすれば例え負けても必ず生きて返れるという事実からつけられた名称。 そして、シン・アスカの 家族の仇。 「あの人が…!なんで…!?」 シンが慟哭にも似た疑問を口にする。 それに、最後に自分を名指しした。彼は、 「知って…いたのか…・!?」 シンが、フリーダムを恨んでいることを。 シンの事情を知っているほかの二人もその結論に至ったようで、信じられないものを見るように、 いつのまにか座りこんでいたシンを凝視していた。 その事実と、たった数時間ほどしかいなかったはずなのにいつのまにか慕っていたキラの人柄に、彼らはキラをどう判断すればいいのか決めかねていた。 彼は、「敵」か「味方」か……。 そして、AAが隠れている施設にほど近い場所で。 キラは立ち止まって夕日を見ていた。 そして、すでに見えないミネルバに乗るもの達の事を思い出して、ひとりつぶやいた。 「バカだね、僕は。」 自嘲の笑みを浮かべたままどこか兆発するように言う。 「……さぁ、どう出る?」 彼の脳裏に浮かぶのは誰なのか。 ほんと、カガリのお願いなんか聞かなければよかった。 今回僕の行動は、ただ彼らの心に傷を負わせただけだったのだから。 敵となるか味方となるか。後は彼ら次第といえど、後味の大変悪いものだった。 ―――――――キラが巻き起こした旋風は、彼らにどのような影響を与えるのだろうか。 Fin (あとがき) ここまでお付き合いしてくださった方、ありがとうございます。 私のつたない文章はどうだったでしょうか。 この話はここで一応終わります。 中途半端でしたか?(苦笑 一応また番外編とかを書くつもりなので、 楽しみにしてくれたらこれ幸い。 |
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