あらあら、どうしましょう。ラクスちゃん相当ストレス溜まってるみたい。

ここはやっぱり、義理の母(決め付け)として人肌脱いだ方がいいのかしら。


―――彼女の名はカリダ・ヤマト。息子に似た穏やかな微笑を浮かべながら、ハロに話し掛けているラクスを困ったように見ていた。


すると突然、リビングに置いてある通話回線が開いたのである。

この屋敷に通話回線を開いてくる者は一人しかいない。

通信相手を悟ったラクスの眉間に、一瞬、ほんの一瞬だけ寄った皺を見、カリダはまた「あらあら」と内心で呟いて視線をディスプレイに移したのだった。



彼らのお母様。





「お久しぶりですね、ラクス様、ヤマト夫人。」


画面に映るのは、言わずもがなギルバート・デュランダル(年齢不詳)。

いつもあの波打つ黒髪をどうにかした方がいいわ、と思いつつも、場は弁えているので口には出さない。

凛とした様子で画面を見るラクスちゃんはいつも通り綺麗だけれど、ふふふ。

あなた、握っているハロが何だか嫌な音を立てたこと、気付いているかしら。

こういう場面を見ると、時々、いえ、常に思うのよね・・・。私の息子のお嫁さんになれる子は、ラクスちゃん以外にはいないって。

あの子には常に自分を引っ張ってくれる、けれど同じ闇(黒さともいう)を持ったような女の子がいいと思うの。


あらあら、話が脱線してしまったわ。ラクスちゃんは相変わらず凛とした態度と口調で、議長に挨拶を返した。礼儀として私も返してあげましょう。


「お久しぶりです、デュランダル議長」

「お久しぶりですわ、黒ワカ・・・失礼。デュランダル議長」


いけない、ついつい口が滑ってしまったわ。だってあの波打つ髪、どうしてもワカメを思い出すの。でも髪の色が真っ黒だから、黒をつけてあげて・・・あらあら。デュランダル議長、何故私のことをそんな驚いたような顔で見ているのかしら。

あぁラクスちゃん、そんな嬉しそうな黒い笑顔を向けないで。本性が出そうになるから


それはさて置き、心なしか顔の青くなった議長は口を開いた。

え? 「かえるの親はかえる」・・・って言った? 気のせいかしら。なんだか間違えてる気もするし。


「・・・・・・・・・・・・・先日、キラと会いましたよ。」


まぁ、「キラ」ですって。呼び捨て? 馴れ馴れしいわね、コノヤロウ


「そうですか」


あぁ、ラクスちゃん。なんだか横顔が泣きそうに見えるわ。貴女だって会いたいものね、キラに。

しかしまぁ、こういう何気なく見せる可愛さがまさに息子にふさわしいと思うの。むしろ二人ともよく似てるわよね(言外に息子も褒めてます)。


持っていた紅茶を一口すすり、喉を潤おす。私は彼らの会話に口を出さないの。ラクスちゃんに任せたほうが上手く行くし、見てるほうが面白いから。


「アスラン・ザラとオーブの姫君にも会いましたよ。」


まぁ、アスラン君とカガリさんに。二人とも私の子供のようなものだから、気になるわ。元気だったかしら。


「元気そうでした。」


あらそう。


「それはそうと・・・、貴女方はキラの背中について、何か知っているだろうか?」

「!」


あらあら、漸くばれたの。あの子の性格だから自分からは絶対に言わない事はわかってたけれど、このタイミングで教えられたのは解せないわね。

最悪、アスラン君にもばれたのかも。


「・・・・・・すでに知っているのでしょう?二年前に負った傷ですわ。」


あぁラクスちゃん、手から力を抜いて。合金で出来てるはずのハロが歪んでるわ。貴女の指が悪くなりそうだから、落ち着きなさい。

そう思ってそっとラクスちゃんに近づき、肩に手を置く。

・・・あまり口を出したくなかったけれど、今ばかりは言わせてね。


「何故今更そんなことを聞くのです。キラから聞かなかったのですか? あの傷は継続した治療が必要ですから、キラなら言うはずです。あの子は馬鹿じゃありませんから。」


あらラクスちゃん、そんな驚いたような顔をしないで。私だってあの子が言わないのはわかっていたの。これはただの皮肉よ。あなたキラに信用されて無いわね、っていう。


にっこり微笑みかけたら、ラクスちゃんは漸く悟ったように微笑み返し、視線をディスプレイに戻した。


「それが、言わなかったのですよ。半年前の身体検査の時はあの傷はありませんでした。ああなった詳しい経緯と、仕組みを教えてください。」


はっ(鼻で笑う)、皮肉に気付いているのかいないのか、大したダメージを受けていないように見えるのが腹立たしいわ。大体、遺伝子学の権威なんでしょう? 仮にも医療の関係者なんだから、そのくらいわかりなさいよ。


・・・いけない、本性がまた出そうになったわ。あらヤダ、もしかして私も相当ストレス溜まってたのかしら。


それはそうと、ラクスちゃんは少しためらった後、漸く口を開いた。


「コックピット内の破損した機器で体中斬り付けられた結果です。その後爆発で火傷をし、蒸し風呂状態になったことで剥き出しになった背中の細胞がほとんど死滅してしまいました。すぐあと大規模な爆発で海に投げられ、塩水につかったことで皮下細胞も死滅。自己修復が不可能になったので、特殊な人工皮膚を貼り付け、その上から細胞の再生を人為的に施していたのです。」


あぁ、何度聞いても痛い話。それにしてもキラ、あなた随分しぶといわね。我息子ながら天晴れよ。


「背中の皮膚は死滅していたので、人工皮膚を貼り付けるだけでは完全に付着しません。ですから一ヶ月に一度のレーザー治療で、付着と再生を促していました。・・・・・・・・もしこの半年それをしていなかったというならば、もしかして皮膚の分離、壊死の広がり等があったのではないですか・・・?」


 ・・・・・・そうだわ。あの子、大丈夫なの?


さっと青くなった顔を自覚しながら、同じように顔を青くしたラクスちゃんの手をにぎり、ディスプレイを見る。

議長は苦々しげに顔を歪めたあと、「たぶんしてました」という。


たぶんって何、このワカメ!!


「今すぐに治療を!」


ラクスちゃんが珍しくも焦ったような口調で言う。


「わかっています。早急に取り組みましょう。詳細を・・・」


そこからは専門的なお話。私にはわからないので、いつの間にかラクスちゃんの手から離れて飛び回っているハロを捕まえ、ぼーとそれを見る。

このピンクハロは、私たちが連れ去られた時にいつの間にか着いてきていた子なの。

特務部隊の人たちは気付いていたみたいだけど、特に害が無いように見えたからそのままつれてきたらしいわね。


 ・・・・・・・・・ふふふ。ココに勝機は見出せり。


何を隠そう、このピンクハロはラクスちゃんとキラとアスラン君の合作であり最高傑作なのよ。

つまり。最高峰の頭脳と能力と技術を持ったものたちによる、史上最強のメカな訳。

ほほほ。もっと言えば、このピンクハロには様々な機能が搭載されているのよ!!

自動音声操作機能、全ロック解除は勿論、ハッキング・クラッキングシステム、通信機や録音機、防水加工まで!!

なんだか少ないとか、普通じゃない?とか言われそうだけど。内容はとてつもなく濃いのよ。


自動音声操作機能により、「ピンクちゃん、遊びましょうか。」の一言でシステムオン。

どこぞのマザーに苦も無く侵入するキラが作った最高のハッキングシステム。それによって例外なく色々なデータを乗っ取り、クラッキングシステムで偽造しちゃう。

つまり、この屋敷のカメラ・盗聴器に侵入して、偽造データを流すわけ。

それで下準備は完璧。

それから通信機とハッキングシステムを応用して、パルドフェルトさんの家に通信するの。

するとあら吃驚。ぶっちゃけ完璧な拉致・監禁じゃなくなってたのよ!?わかる、皆様!

当然バルトフェルトさんはこちらの居場所は知ってるし、こちらの指示にも従ってくれている。

アスラン君たちはすぐに顔に出るから伏せてもらって、私たちの居場所を知っているのはバルドフェルトさんとマリューさんだけなの。

“準備“が出来たらすぐにアスラン君たちにも知らせる手立てになっているわ。

ちなみに、キラは機能を知られるのを恐れてラクスちゃんに連絡取れなくて、アスラン君はたぶんハロが使えない環境であると思い込んでる。

大丈夫よ二人とも。ハロすっごく活用しちゃってるから。こちらはこちらで頑張っちゃってるから!


ふっふっふ・・・。どうしよう。心が乙女のように舞い上がってるわ。自分も“計画”の片棒を担いでいるからかしら。


しまった、怪しい笑いをいつの間にか外に漏らしていたらしいわ。議長が恐ろしいものでも見るかのようにこちらを見てる。危ない、危ない・・・。







議長との通信も終わり。

疲れたように座っているラクスに紅茶を入れてあげながら、微笑みかけて言う。

「ラクスちゃん、頑張りましょうね。」

あぁ、なんだか本性が出てる気がするわ。笑顔が黒いかも。

でもラクスちゃんも微笑んで返してくれたし、いいかしら。









――――――追記。

キラ、私カリダさんと二人で生活して、なんだかこの方の素晴らしい一面を見つけましたわ。

さすがキラのお母様。

何気ない所作や言動、笑顔が似てるんですの。

もちろん表だけではありませんよ?それは会ったときから気付いてます。

今回言っているのはのことですわ。

キラに本当にそっくり。

なんだか尊敬したくなってきます。

あの穏やかな笑顔の裏にある笑顔・・・・・・素敵v

キラ、私、嫁姑問題なんて絶対出ないと思います。

あぁ、だんだん楽しくなってきましたわ・・・!

 




(あとがき)
何が書きたかったかって、そりゃカリダさん。
かえるの子はかえるなのです。

キラの傷が半年前までは見られなかったのは、治療で皮膚がしっかり着いてたから。
けど今は、ほっぽったから皮膚が分離して透けちゃった、と言うわけです。

それはそうと、伏線をちょっくら張って見ました。なんでしょうね〜。計画とか準備とかって(笑

それから、文中ででた「黒ワカメ」。ふふふ。でも私が書きたいのはもう一段階グレードアップしたものなんです。
はっはっは!!やばい、楽しみ〜っ(壊



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