『エド・・・・・・・・・。』 「ん?」 テロリストを投げ倒したその時、頭に直接響き渡るような声が聞こえ、エドは反射的に疑問の声を上げていた。 銃を片手に一緒に潜入していたホークアイがその声に「どうかしたの?」と問うたが、エドは曖昧に誤魔化し、声に出さずに問う。 『どうかしたのか、リーフ?』 『実は――――――・・・・・』 リーフの言葉を聞いたとたん、エドは目を瞠ってから苦笑した。 「しょうがないやつ・・・・・。」 またもや突如口を開いた彼に、ホークアイが疑問の視線を向ける。しかしエドはそれに答えることはなく、変わりににっこり笑って言ったのだった。 「ホークアイ少佐、ちょっと協力してくれない?」 父兄参観2それから、数日後。 「いや〜、某元中佐の気持ちも今ならわかるな!」 カカ、と笑いながらそう言ったエドに、ホークアイはうっとりと笑った。 「こういうのを、萌と言うのね・・・・。」 「な、少佐! やっぱ子供って可愛いよな!」 「ふふふ、この姿のエド君の写真、いったい幾らで売れるかしら・・・・?」 「俺も今度からカイルの写真持ち歩こうかな・・・いや、いくら何でもそれは止めておこう・・・。」 かみ合ってない。何がって、もちろん会話が。 二人とも同じ部屋にいて、顔を合わせているはずなのに、何故か双方あらぬ方向を見て妄想している。 なんだか普段ではありえない光景だが、この場にはホークアイとエドしかいないので、冷静に突っ込んでくれる人もいない。 もっと言うと、エドの格好に突っ込みを入れてくれる人もいない。 今の彼の姿は、明らかにおかしい。 何がおかしいって? そりゃ、細い首とくびれた腰と、ふくよかな胸があること自体がおかしい。おかしすぎる。 ついでに言うと、控えめなベージュのスーツを纏い、スカートとパンプスを履いているのだ。 しかもそれが全く違和感がないから、尚更おかしすぎる。 というか、微妙に声も普段より高い。肩幅も普段より狭くなってる。 実はエド、なんと“なりきる”為に自らの体に人体練成をしたのだ!! そもそも事の発端は、彼の息子、カイルの授業参観が原因である。リーフからその件を聞き、これは行かねば! と思っての行動なのだ。 しかし、エドワード・エルリックと言ったら、その顔も名前もかなり有名になってしまっている。 まぁ、戦時中連日新聞に載っていたのだから、当たり前なのだが。 それが裏目に出、学校行事なんぞに彼が出ようとしたら、たちまちそれ所ではなくなってしまうだろう。 よって、彼は素顔(?)のまま父兄参観に参加することが適わない。 それをホークアイ少佐に(テロリスト撃退中に)言った所、彼女はにっこり笑って言ったのだった。 『なら、女装して行くのが一番簡単な道ね』 ついでに「父兄参観と言っても、母親が行くことも珍しくないのよ。」という言葉付きで。 エドはその言葉になぜか納得してしまった。もしかしたら初めて親らしいことをするとあって、興奮してその内容のおかしさに気づけなかったのかもしれない。 ちなみに、仕事は明日の分まで終わらせてあるので、問題はなかった。もし事件が飛び込んできたとしても、上司がなんとかしてくれるだろうと思う。 とにかく彼はその言葉に乗り、ホークアイの用意してくれたスーツ(スカート付き)に着替えたのはいいが、自分の姿を見て盛大に眉をしかめてしまった。 そして基本的に完璧主義のエドは、化粧をしていない己の全身を見て、「やっぱ男に見える・・・」と呟いたそうな。 ホークアイからすればちゃんとした女性に見えるが、どうやら自分の体を見慣れているエドには、そう感じられなかったらしい。 そうして彼女が驚く間もなく、エドは両手を合わせて己の体に触れさせたのだった。 すると、次の瞬間現れたのは、誰がどこからどう見ても、むしろ服を脱がせてDNA検査をしてみても女性という結果が出るだろう青年(?)。 そこまでやるかエドワード・エルリック。やっちゃうのかエドワード・エルリック! むしろ微妙に性格変わってないか、エドワード・エルリック!!! しかしそんな誰かさんの叫びも気にせず、気合入れまくりのホークアイに化粧をしてもらったエドは、もはや先の戦争で名を歌われた軍人とは、到底思えないありさまになっていた。 黙っていればホントに絶世の美女である。口を開けばただの親バカだが。 その出来栄えにご満悦のホークアイは、カメラを取り出してエドを激写する。彼・・・いや、彼女も気分が乗ってきたのか、軽くポーズまでとっている。 ―――それは本当に、普段の彼らからは予想もつかない壊れ具合だった。 そんなこんなでエドは、ホークアイに手を振られながら、着替えの為に使っていた仮眠室を出て行った。 そしてそのまま中央司令部から出て行こうとしたのだが――――・・・・。 「? 失礼ですが、あなたは?」 完璧に私服のエドを、まだ歳若い軍人が見咎めるように背後から声をかけてきやがったのだ。 このままだと、余計な時間を食わされそうだ・・・と思ったエドは小さく舌打ちして、しかし一変して柔和な笑みを浮かべながら振り返ったのだった。 「私は大総統秘書官ですわ。お勤めご苦労様です。」 その言葉と共ににっこり笑ってみれば、名も知らぬ軍人君は顔を真っ赤にして「あ、ど、どうもです・・・」とかしどろもどろになってしまった。 しかもそのままエドが去っていくのを止めもせず、呆然と見送ってしまったのだから、もう笑うしかない。 「た、楽しい・・・・・・・!!」 廊下を曲がったので姿が見えなくなったはずなのに尚、顔を赤らめたまま固まっている軍人を“世界”を通して見て、思わずエドはそう呟いてしまった。 エドワード・エルリック18歳。なにやら新しい趣味に目覚めちゃった模様。のりっのりです。 こうして何度か窮地を脱したエドは、中央司令部から出て青空を仰いだ。 本日は待ち待った父兄参観の日。学校に向かうエドの足は、今にもスキップしだしそうなほど軽やかであった。 (あとがき) 壊れた。登場人物も私も。 しかし次回は普通のギャグで行きたい。こんなアホいのじゃなくて!!(切実 |
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