い〜ち、に〜ぃ、さ〜ん、よ〜ん・・・

 昔、あのイシュバールの動乱の折。

気の狂った仲間の国家錬金術師が、イシュバール人を殺すたびにそうやって数を数えていた。

 その様はとても楽しそうで、ロイはそれにこの上なく嫌気がさした。

だが、何時の間にか。

 無意識に、ロイも心の中だけで“殺したニンゲン”の数を数えていたのだった。



活躍11





「そんなこともあったな・・・」

 アエルゴ駐屯基地付近。いきなりそう呟いたロイに、エドは怪訝な顔で返した。

すると無意識にでた言葉だったのだろう、ロイは口元に手をやり、それから苦笑した。

なんだよ、と思ったが、エドは聞かなかった。すでに世界から提示されている情報も拒絶している。
 “世界の目”となった当初はプライバシーも何もなくなだれ込んでくる他人の情報に戸惑っていたりもしたが、一年も経った今、すでに情報を拒絶する方法も心得ているのだ。

 そう、プライバシーだ。エドはそれを無闇に侵すなんてこと、したくなかった。
誰にだって知られたくない事の一つや二つ、必ずあるのだから。そして、きっと今上司が呟いた言葉も、無闇に侵入していい領域のものではない。

 話したくなれば話してくれる。

そんなエドの考えに気付いたのか否か、ロイはエドを見てもう一度苦笑し、それから昔を思い出すような遠い目をして言った。

「イシュバールの動乱の時、私は無意識に殺した人間の数を数えていた事があるんだ。気付いた瞬間に止めたけどな。それをたった今思い出した。」

と。するとエドは微妙な笑い顔でロイを見、それからただ儚げに、「そっちの方がいいのかもな」と言った。

 思わずそれに「は?」と問い返すと、今度は苦虫を噛み潰したような顔でこう答える。

「もう俺、いったい何人殺したのか全くわからないんだ。何百人を一気に何回も殺していたから。・・・もう、兵士を“個体”として扱っていなかった。俺も今気付いたんだけどな。
少なくとも数えていたっつーことは、個体として扱ってたんだぜ?そっちの方が悪趣味だけど人間としていいと思うぞ。」

 どっち道両方末期だとは思うけどな。そう言って自嘲気味に笑う少年に、ロイはなんと言っていいのかわからず、ただその頭を撫でてやった。

それに驚き、反射的にロイから数歩離れたエドは、恥ずかしさのあまりココが敵地付近であることすら忘れ、真っ赤になって怒鳴り返した。


 幸い真夜中の暗闇で顔の色まではわからなかっただろうが、声はやばい。

「こ、子供扱いすんなぁぁぁあああああああ!!!!!!」

あ あ あ ぁ ぁ ぁ ぁ・・・・・


 あぁ、こだまだ。そういや最近山登ってねぇなぁ・・・。

一瞬そんな風にエドが現実逃避しそうになりながらも、案の定ロイにすぐさま口を塞がれ、基地には兵士の「なんだ今のは!?」「見張り兵、外を見て来い!」「明かりを強くしろ!!」なんていう声が響き渡った。

「この、馬鹿者!!」

こんな事態を引き起こした責任の一端が自分にもあることを自覚していたので、引きつった笑い顔でそう言うと、エドはすぐさまロイの手を退けて「ゴメン!!!」と謝った。
 ついでに言うと二人ともちゃんと小声である。

しかし時すでに遅し。さあ、これから別れて即奇襲しよう、な状態であった、イコール今までの見張りの配置からは見えないけど、見回りにこられたら即発見されちゃう位置にいた二人は、やっぱりすぐに敵兵に見つかった。

 ・・・エドが空間移動すりゃいいんだし、という考えのもとココまで一緒っだったふたりだが、この時こそ能力の過信を悔いた事はなかっただろう。

 とにかく、エドとロイはほぼ同時に自分達を発見しやがった兵士二人をもの言わぬ死体に変え、解散し、すぐに奇襲(?)を強制開始することに決めたのだった。

 しかしその別れ際。さて、行くか。と、エドが空間移動を開始しようとしたその瞬間、ニヒルな笑いを浮かべたロイが言葉を発した。

「鋼の、今のは一人ずつ、ということで。」

と。一瞬何のことだかわからなかったが、すぐに理解した。
これは遠まわしなお誘いだ。



(ならば今回に限り、共に“殺したニンゲン”の数をカウントしてみようじゃないか)



 という、なんとも悪趣味かつわかりにくいお誘い。

エドはそれに鼻で笑って、こちらもニヒルな笑いを浮かべて返した。

「はっ!いいぜ、のってやらぁ!!」
 そう言って、今度こそその空間から姿を消した。






(あとがき)
まちがってる、絶対人間としてまちがってる。
そう思う方、私もそう思います(ぇ

 でもま、やっぱ究極に悪趣味だとは思いますけど、自分が殺した人間の数って、
「わかんない」より「数えちゃったよ」のほうが私的にはいいと思うんですよね。
 片鱗でも、殺した人のことを覚えてるわけですから。

う〜ん・・・。難しいですねぇ・・・。


てかぶっちゃけ、あの二人ってかエドの力があれば、基地にいる人間全員一瞬かつあっけなく
全滅できちゃうだろうから、次回戦闘シーンを多く書きたいがための布石・・・みたいな?
だったりして・・・Uu



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