わかってるさ、今、自分が何をやっているかなんて。


でも、止める事は出来ない。


望んでもいない。


 ただただ、利己の為に動く。


俺の為に。


守りたい人たちの、為に。


言い訳と言われたって、いいさ。


俺はただ。


俺の知っている人たちを失いたくないだけ。




活躍12





 ロイと別れてすぐ、基地の南の門の上空へ移動したエドは、見張りの軍人二人の前に降り立ち、言った。

「2号、3号、ゲットv」

と、笑いながら。

 そして、いきなり目の前に現われた少年に肝をぬかす敵軍二人の喉を、問答無用で切りつけた。

その手には、何時の間にか握られていたサバイバルナイフが。

 盛大に喉元から血を噴出しながら倒れていく二人をちらりと見、エドは随分手薄な南の門から基地への潜入を果たしたのだった。


 しかし、しばらく進んでも人影に当たらない。


アエルゴ軍の駐屯基地は、西に崖、東に大河、南は自国、北にアメストリスの広大な平原を位置するように建設された。

故に、向く目のほとんどが、敵地と接する北に行くわけで、南には申し訳程度の数の見張りしか配置されないのだ。

 何故ならば、アエルゴ本国から来た者しか、南門に行き着く事が出来ないようなつくりになっているから。

それらの事実から、簡単に言ってしまえば油断しまくってるのだ。南方面に関しては。

 わかってはいたのだが、あんまりにも見えない人影に拍子抜けしてしまっても仕方がないだろう。

やるからには勝ちたいんだよな、と黒髪の上司の顔を思い出しながら呟いてから、エドはひとつため息をこぼし、薄暗い基地に明かりを灯した。


 手当たり次第に火をつける、という方法で。


エドは自身の錬成によって生み出された炎に、その美しい顔を照らされながら、自分の考えに沈んでいた。


 火は本来ロイの分野なのだが、何せ、奇襲とは随分と卑怯なモノである、と言うのが何処の世界でも共通認識であるのだ。

アエルゴ然り、アメストリスにしても然り。

 よって、後々アメストリス軍が他国からも自国からも批難を受けないためにも、“アメストリス兵士ががアエルゴ基地を壊滅させた”という、証拠を・・・残す・・訳には・・・・いかない・・・・のだ。

 つまり、“全て”の隠滅を、エドたちは最終目的とする。ということで、最後には結局消し炭すら残さず全部塵に返してしまうわけなのに、何故放火なんてモノをするのかと言うと。


『・・・・・・そっちの方が、君だって分解しやすいだろう?』


などと言う、なんでもかんでも燃やしちゃう男の言に乗っただけで、実は何にも意味は無かったりするのだが、それはこの際内緒にしておく。


「いや、確かに全部炭素にしちゃえば分解だって楽になるけど・・・。」


 と、今更に、誰もいない通路で呟いてみちゃうのも、どうせなら黙認しちゃっていただきたい。


「しっかし、こんな手薄でいいのかね〜?仮にも軍基地だろうが・・・」

と、エドがなんだか独り言にも虚しくなって乾いた笑いを浮かべた、その時。



「心配御無用。ここは俺の管轄だからな。」



そう呟く男の声を、エドは、自らを包む灼熱の炎の中から聞いたのだった。




「つか、なんでこんなガキがココにいるわけ?」

その「ガキ」とやらが生み出した炎を操り、その身を焼き、死に到らせ、今嘲笑に近い笑いを浮かべながらそう呟いた男の名を、コルジェ・ルグラという。


 彼は、ナイジェルと共にアエルゴの二強と言われる、まだ二十歳をいくらか過ぎたくらいの青年であった。

 なにやら北門の方に敵襲があったとかで、ほとんどの味方兵がそちらへ向かってしまった時、自らも赴こうとした途端呼び出され、上司直々に命令されたのだ。


たっぷり肥えた豚のような体から発せられたその内容は、

『お前は南を警備してろ。この狭い基地内は、お前の錬金術は役に立たん。』
という、嘲笑交じりのモノだった。


 どうせ、自分の功績に妬んでの言葉だったんだろうが、こうして奇襲兵一匹駆除しちゃったし、残念だったね。と、皮肉交じりに思ったその時。


「てか俺いったいこの三日間で何回死んだ!!?何か耐性着いてきたぞ!!うゎ、全っ然っ嬉しくねぇぇぇぇえええ!!!!」


と言う、ひじょうに元気かつ投げやりな声がその場に響いたのだった。


「・・・・・・は?」

未だ全身を黒く炭化させ、確かにたんぱく質の焼けるにおいがしたというのに、目の前に立つ「これ」は、何だ?

 ルグラが少々困惑していると、目の前の「何か」が、また叫んだ。


「待て待て、三日で3回!?ちょっと死にすぎだろ!?まさかどっかの黒づくめ達(アニメ版)みたいに死ねる回数に限りがあったり・・・・・・・・・する訳ねぇ、か・・・。」

 そこまでいい終わり、やっとルグラの存在に気付いたのか、「何か」が口を閉ざして瞳をルグラに向けた。

 それから、ニヤリと笑って一度、自らの両手を音を高く鳴らして合わせる。

その一瞬後、ルグラは信じられないモノを目撃する。

 目の前に立つのは、金髪金目、青いアメストリスの軍服を纏った、少年。

たった今まで炭化し、真っ黒になっていたとは思えない有様だ。

 その事実に言葉を失っていると、少年はまたニヤリと笑い、「4号発見、だな。」と呟いたのだった。

それらを見、漸く我を取り戻したルグラは、だが湧き出でる恐怖と嫌悪は抑えきれず、自らの意識とは別に、ついついその口から言葉をこぼしてしまった。


「ば、化け物・・・!!」


と。
それを耳に止め、エドは今度は自嘲に近い笑みを浮かべた。

「化け物呼ばわりは、ひでぇだろ・・・?コルジェ・ルグラさんよ。」

名を呼ばれ、漸く冷静さも取り戻したルグラは、自らの名を知る少年に、警戒の色を強めたのだった。

少年は、見た目の幼さに反し、随分と隙がなかった。しかも、自分の顔と名を知っていると言う事は、もしや間諜の類なのだろうか、と、先程の異常性は見なかった事にして相手の素性を想像してみたりする。

一種軽い現実逃避のようにも見えるが、それを今、誰が責める事が出来ようか。


それはさて置き、相手の素性なんて今はどうでも良い事に(漸く)気付いたルグラは、思考を切り替え、無言で腰にさしてあった二振りの剣を引き抜く。


・・・このガキは、今までに会ったどんな敵とも違う。本気でやらなきゃ、こっちがやられてしまう・・・。


それを本能で察し、こちらを興味深く見てくる、小奇麗な少年の隙を睨むようにしてうかがい始める。

 しかし、やはり隙は無い。その事に若干焦りを感じ始めた頃、少年が唐突に動いた。

先程と同じように、胸の前で両手をパシンと鳴らし合わせたのだ。

それにルグラが更に警戒を強めると、少年は今度は無表情でその両手を基地の壁に叩きつけた。

すると途端に走る錬成光。壁から生まれる槍。

気付けば、少年の腕には厳つい装飾のしてある武器が握られていたのだった。

 いきなりの陣無しの錬成に戸惑わなかったと言えば嘘になるが、ルグラはそれを全く感じさせない表情で、これ以上このガキに有利にされてたまるか、とばかりに、エドに猛然と斬りかかっていったのだった。







「145、146、147、148、149・・・・・・」

150、と呟くと同時に、廊下のつきあたりで銃を構えていた男の額にナイフを投げつける。

狙い違わず眉間に埋まるそれを確認したりなどはせずに、今度は背後で床に錬成陣を書いていた男に向けて炎を見舞ってやる。

「151」

 またまた、その男が煙を吐いて絶命する姿など見ずに、少し先で列を組んでロイに一斉射撃を試みようとしていた者達には、瞬時に腰にあった手榴弾のピンを口で抜き、投げつけてやった。

もちろんその集団の人数を確認しておく事は忘れない。

「157」

 たった数十メートル先で起こった爆発にも、ロイは全く姿を隠そうとはせずに、優雅ともいえる所作で体を転じ、次の敵の殲滅に向かって歩いて行った。


 爆発と同時に床から生えた、爆風と炎から自らを守ってくれた壁を、背後に感じながら。








(あとがき)
久々の更新ですね〜。
今回はどちらかと言うとロイの方が暴れてましたね。
エドは次回に期待しましょう!

 文中ででたオリキャラ「コルジェ・ルグラ」。
いい加減オリキャラ止めろ、と言われそうですが・・・。目を瞑ってやってください。(泣
 ちなみに彼の名は、オフの友人に作っていただきました。もう、考えるのがめんどくさくて・・・(汗
 もっとちなみに言っちゃうと、その友人に敬意を示し、彼にはちょっと重要なポジションについてもらうつもりです。
そぅ、ただの雑魚キャラではないのですよ!!!
今後の彼らの行動に、こうご期待!!



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