村長と話していた若者が、ふと顔をあげて怪訝そうな顔をした。

「どうかしたかね?」
そんな若者の様子を慣れたようにみやり、村長は尋ねた。視線の先にいるのは、金髪金目の麗人である。

「エド?」
今度はお茶を持ってきた少年が尋ねた。それに青年はあいまいにうなずき、しばらく考え込んで意を決したように答えた。村長を強い眼差しでひたと見つめて。

「お別れ…みたいだ」

「え…?」 
その言葉に驚きを返したのは少年。村長は寂しげに笑い、そうか、とだけ言った。

それが昨日の昼のことだった。



再会2





「お!ホントにいた!お〜い!!」

 車を降りてしばらく歩いて行くと、少年が不可解なことをいいながら近づいてきた。とりあえず村人だろうと思い、案内してもらおうと考え、こちらからも声をかけてみる。

「この村の人かね?わたしは鋼のれ「いやわかってるからいいって。こっちこっち」

 途中で話を切られて顔が引きつりそうになったが、なんとかこらえて少年の後に続いた。なぜか少年はこちらのことをしっているようだ。

 しばらく歩いたが、少年は迷い無い足取りでハボックの待つ車のほうへ向かっているのに気付き、怪訝そうに尋ねた。

「私は鋼の錬金術師を探しているのだが?そっちでよいのか?」

すると、
「鋼の錬金術師ってエドのことだろ?大丈夫だよ。今はエドの言った事を実行しているだけだから」

また不可解なことをいって、車によりかかってタバコをふかしてるハボックを見つけると、大声で呼びかけた。
「おーい!「ハボック」さーん!あんたも一緒に来いだと〜!!」

その言葉にはホークアイ少尉も私も驚いた。ハボックは私の命令を少年が代弁したと思っているらしく、疑いもせずに寄ってくる。

「おい。なぜあいつの名を知っている?」

おかしい。事前に連絡がいっていたとしても、普通だれが行くなどとは、ましてや名前などは教えない。しかもなぜあいつがハボック本人だとわかった!?
 そう思い少年を詰問する。
だが少年はそれに心底驚いた、とでも言うような顔で明るく答える。

「え!?違うの!?車の近くでタバコ吸ってるのは「ハボック」さんだっていってたぜ?あ・ちなみに雨の日無能のライター童顔人間が「ロイ」、クールビューティな銃のエキスパートの女の人が「ホークアイさん」って。あってるよな?」

唖然とした。この場にいる全員の名と特徴を知っている。しかも…

「…無能…………」

なぜそんなことまで。しかもなんか説明の仕方に差別を感じるのは気のせいだろうか。

「あなた、わたし達のこと何処で知ったの。」

隣のホークアイ少尉が険しい目で質問する。すると、

「エド」

とだけ返ってきた。その言葉に怪訝そうな顔をする私達に気付き、少年は言葉を重ねた。

「ああ、そうか。この村ではこれが常識だったけど。あんた達外の人間だもんね。これじゃわかんないか。」

と、またもや不可解な言動をとる。

ハボックも異常に気付いたようで、重ねて質問する。

「どういうことだ?」

少年は三人の軍人の険しい顔に怯えもせず、手を頭の後ろで組んでどこか自慢げに答える。

「この村の人間なら皆知ってる。エドの言うことはどんなに不可解なことだろうと実現する。エドの助言は的確で、正しい。だけど必要以上に頼ってはいけない。あの人はそれを望まない…ってね。」

と、どこか芝居かかった口調で言った。きっと誰かが言っていたことを真似て言っているのだろう。そして今度は少年本来の口調で言う。

「あんた達の事も別に連絡があったわけじゃないぜ?最近エドあてには電話も手紙も来ていないはずだからな。」
という少年の言葉に、軍人達は寒気を覚えた。

そして、思う。
もしかして本当に本物の、「賢者」なのだろうか、と。

「エドが村を出るってんで昨日は大変だったんだぜ?夜通しお別れ会みたいなの村人全員でしてさ。今も姉ちゃん達に捕まっちゃっておかげでおれが迎えに来たわけ。そうだ、ついでだからエド自慢につきあってよ」

と、少年は歩きながら言い、続けていかにエドワード・エルリックが人気者かとか、予言みたいなのとか心を見透かすような言動をするから村にきた当初は大変だったとか、いかに錬金術が上手いかとか、果てには村に初めて来た時のエピソードまで語ってくれた。始めは適当に聞き流していたが、だんだんと話を楽しんでいることを自覚した。

「ではあの放水堤は鋼…いや、エドが?」
「うん。凄かったぜ?もう何年も前の話だけどな、突然現れたかと思えばいきなり防水堤が出現してさ。確か…」

『もうだめだ!このままじゃ飲みこまれる!早く避難しよう!!』
 その日は、暴雨で川が氾濫して、村が飲みこまれそうになるほど水かさが増してたんだ。なんとか押さえてたんだけど、もう限界だと思って避難しようとした矢先に防水堤が壊れてね。その場でふんばってた人を流しそうになったんだ。

 だけど実際には流されることはなかった。壊れた瞬間に新しくて、前より立派な防水堤が一瞬で建ったからね。あたり一面錬成光で照らされてさ。

 光の出現先を見てみたらあらびっくり。女子供のいた何百メートルも離れた丘から続いてたから。そこには地面に手をついた青年が一人。それがエド。あいつが顔上げた時の女性陣の反応、あんた達にもみせたかったよ。ほんっと凄かったんだぞ。

 で、その後村長の…つまり俺の家でお礼の飯食いながらあいつが言ったんだよ。「5・6年ここに住ませてくれ」ってね。親父は一も二もなく頷いてたよ。で、それからエドは俺んちに住み始めたわけ。それから6年。期間があるのはきいてたし、そろそろかなぁとか思ってたけど、やっぱいなくなるとな…寂しいな…。

「そうか…」

この(どうやら村長の息子らしい)少年の話をきいていて、所々に出てくる鋼の錬金術師らしき人物はずいぶん特異な性質をもっているのだということがわかった。

 そして、もしやと思いながらも、すこしだけ本物かも知れないとおもったので、一番わかり易い特徴をきいていることにする。

「エド…の、外見の特徴の、確認をしてもいいかね?」
その言葉に怪訝そうな顔をしながらも、少年は素直に答えてくれた。

「うん?金髪、金目、綺麗、…………それと……
                     6年前と、変わらない…」

確信する。

「そうか…。」

本物…! 

一歩後ろを歩く二人も、同じような顔をしていた。今から会う人物は、あの「金の賢者」である、と。緊張と好奇心を押さえるので精一杯のような、そんな顔を、私もしているのだろう。




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