疑惑、困惑、好奇心、そして―――――畏怖。 それらを含む視線が今、自分に向けられている。 それは、この特異な性質を持つエドに取って向けられ慣れている物であったが、“彼ら”に向けられるのは流石に・・・・・・堪えるものがあった。 わかってはいたはずなのに、何処かで期待していた自分がいたのだ。 ―――――――彼らはきっと、無条件で自分を迎え入れてくれる。 そんな、馬鹿な考えを愚かにも持っていた。 エドはそんな自分に密かに自嘲し、これ以上その視線を受けたくなかったので、足元に置いてあったトランクを持ち上げてから口を開く。 「行くんだろ? 大総統閣下に急げって言われていたと思うんだけど?」 それにまたもや驚いた顔をするロイに苦笑して、エドは歩き出そうとした。 だがそれは、自分のコートを掴む小さな手によって阻まれてしまったのである。 再会4僅かにつんのめりながらも振り返ると、そこにはいつの間にか自分の背後に移動していた少年がいた。 俯きながらもしっかりとエドのコートの端を掴む彼は、このシューブルという村で最も懇意にしていた人物で。 だからか、エドはそんな彼の行動を不謹慎にも嬉しく思い、微笑を浮かべてしゃがみ込んだ。 「なんだよ、笑って送るって決めたんだろ?」 微笑したまま頭を撫でてやると、彼はゆっくり顔を上げ、「だって」と言う。 その顔は今にも泣きそうに歪んでいて、エドは漠然と「あぁ、 「だってエド、もうこの村に帰って来ないんだろ?」 「いいや、帰って来るさ。そうだな、お前の孫が成人した頃に。」 エドは今度はいたずら小僧のように笑って、永遠の別離と変わらぬ言葉を吐く。 少年はそれについに涙をこぼし、しかしエドと同じように笑って返した。 「俺、それまで生きてるかな・・・・?」 ―――そんな、残酷なことを聞くなよ。 言いかけたその言葉を飲み込んで、エドは少年を抱き寄せて耳元で言ったのだ。 「・・・・・・・・生きてろ。また会いたいならな。」 少年は今度は何も言わず、ただぎゅっとエドを抱きしめ返した。 ・・・そしてそれを、軍人達はただ黙ってみていることしか出来なかった。 ロイ達三人が見守る中、エドは少年のつむじにキスを送った後、徐にポケットから何かを取り出し、少年の首にかけたのだ。 少年はそれを涙の滲んだ顔で不思議そうに見て、それから驚いたようにエドを見た。 「これ、エドのじゃ・・・・・?」 「いや、違う。」 少年が持ち上げたのは、小さな赤い石がトップに着いたネックレス。 それとは形状が違ったが、彼は何度か同じ石がエドの首にかかっていたのを見た事があったのだ。 だからそう問うたのだが、エドは違うと答える。 「・・・それは、“カイルの為”に作った石だ。」 「・・・・・・・エドとおそろいの?」 「そう、俺とおそろいの、“カイル”の石。」 「“俺”の・・・・・・・・」 途端に嬉しそうに石を握る少年は、またもエドの遠い記憶の彼と重なり、苦笑せずにはいられない。 こんな風に、彼は 「・・・・・・そう、お前のだよ、カイル・・・・。」 ――――村長の一人息子、彼の名前は“カイル”。 数百年ほど前、エドの息子でもあった彼。 ロイや軍部とも関わりを持ち、エドの身近な存在であった 彼の逝去の時、密かに抜き取ったそれが、今また“カイル”の手に帰ってきたのだ。 この連鎖を悲しむべきか、喜ぶべきかは微妙なところ。 エドは胸元にあるプレートを握り、僅かにわらった。 「それを、肌身離さず持ってろよ。必ずお前を守ってくれるから。」 数百年前と同じ言葉を繰り返し、エドはもう一度カイルの頭をくしゃりと撫でた後、ロイたちに向けて言ったのだった。 「待たせたな、行こう。」 「・・・・・・・・・・・・・あぁ。」 小さく、何となく歯切れ悪くそう言ったロイにもまた苦笑して、エドはつかつかと歩き始めたのだった。 最後、玄関のドアが閉め切る直前に、エドはカイルを振り返って言った。 「生きろよ。長生きしてくれな・・・・・・・。」 それは、思ったよりも切実な響きを伴なっていて。 ロイ達はそれに僅かに目を瞠った後、ただ無言で彼を止めてある車へと誘ったのである。 (あとがき) 今回はシリアスでしたね〜。 次回はギャグにしたいな〜。 ちなみに。 カイル君、再登場。そして離別。以降彼が出てくることは(たぶん)ありません。(汗 その代わり他のオリキャラ(彼ですよ、彼!)が出てきます。 更にエドの胸元に“赤い石”! “プレート”! これが何を指しているのか、皆さんもうお分かりですね・・・・?(ニヤリ |
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