「しかし、いったい何だったんだ・・・・。」


ロイが腕を組み、憮然と呟いたその言葉を、エドは苦笑を浮かべて聞いていた。


―――自分達が今乗っているのは紛れもなく軍用車であるから、軍に恨みのある者の仕業と言えなくも無い。

また、彼らの内の誰かに、個人的な恨みを持っての待ち伏せであったとしても、不思議ではないだろう。

それとも・・・・と頭を巡らしているロイに、エドは自分の首の裏を掻きながら、小さく答えを提示したのだった。


「俺目当てだろ。・・・・何処からか、あんた達が俺を迎えに行くっていう情報が漏れたらしいな。」



再会7





もし、エドが本物の「金の賢者」であるのならば。

不意打ちの襲撃を受けようが、逃げ様の無い密室空間である、走行中の車の中で火に炙られようが。

あくまでも本当に不老不死と言うならば、必ず生きているだろうと・・・そう思っての襲撃だったのだ。

言わばそれは、エドを試すような物。しかし結局襲撃は失敗に終わり、彼が本当に不死であるのかはわからず終いだったが。

そしてその際、ロイ達の命はどうなっても構わなかったらしい。


呆れたものだ、と内心で嘆息し、エドは言わずともそこまで悟ってしまった軍人達を横目に苦笑した。


「そう言うもんだよ。俺を狙ってくる奴の大半は、自分の命だけが大切って奴ばっかりだ。」


肩を竦めてそう呟いたエドに、ロイは思わず同情の念を抱いてしまった。


「以前にも、このような事が?」

「あったぜ? 俺ここ何百年かで何回か死んでるもん・・・・人前で。そうでなくても一瞬で傷が治るからな。不老不死って事実はよくバレる。イコール、自分も不老不死を望むお馬鹿な奴らが、俺に頼んで自分も不老不死になりたがる。」


その過程で、真偽を確かめる為にこうして命を狙われることが、よくあるのだ。

そう言うと、エドは一瞬自嘲の笑みを浮かべた後、すぐにそれを隠すようにわざとらしいため息をつく。

だがそんなエドの努力も空しく、彼の隣に座っていたロイは、その一連の動作を見逃す事無くしっかりと見ていたのだ。

先ほどもそうだったが、エドは時折酷く庇護欲をそそる表情をする。しかもそれをすぐ隠そうとするから、気をつけていなければ気付くことは難しいだろう。

そして彼のそんな行動が、ロイにエドが「“金の賢者”である」という事実を忘れさせてしまいそうになる。

ロイにとってエドは、紛れもなく雲の上の存在であるはずなのに、疎隔することも敬遠する事も出来ない。つまり、どうしてか親近感を持ってしまうのだ。


エドの口ぶりから敬遠されることを好まない性格であることは窺えるが、さて、どうしたものか。


果たして素でフレンドリーに接するか、それとも軍人に戻って堅苦しく対応するべきか。


ロイは今、その決断をしようとしていた。

しかし何故彼が今、見ようによっては早急――何せ彼らが会ったのは今日が初めてだ――にそんな決断をしようとしているのかと言うと。

それは、セントラルにエドを送り届けると同時に、彼との繋がりが消えてしまう事を危惧しているからだ。

そう、ロイは何としてでもエドとの繋がりを残しておきたいと、そう思っているのである。

そこに打算的な物は皆無といっていいし、何故そう強く希望しているのかもわからない。会って一日目で、不老不死の賢者で、初対面で自分に馬鹿笑いを向けた男の何処を気に入ってしまったのかも、わからない。

だがそれでも、ロイはエドとここで縁が切れてしまうのが嫌で、ならば切れさせないようにする為にも、今の内に“自分”を覚えていてもらおうと考えたのだ。

そして拠点に戻り、今ロイが“一軍人”として彼と接した場合と、“ロイ個人”として彼と接した場合を考慮する。


―――どちらがよりエドの印象に残るかなんて、考えるまでも無いだろう。


しかもすでに始めっから、お世辞にも軍人らしいとは言えない態度を取ってしまっているのだ。今更態度を変えるのもおかしい気がする。

そう結論付け、ロイは結局“ロイ個人”として接することに決めたのだった。


そして、エドを見、本当の軍人ならしないであろう、何気ない会話を続けるのである。


「なるほど。なんだ、君に頼めば不老不死になれるのか?」


片眉を器用に上げてそう問うたロイに、エドは意外そうに聞き返した。


「何だよ、あんた不老不死になりたいのか?」

「いや、全く。」


きっぱりと答えたロイに満足そうに頷き、エドはそう臆面もなく言えたロイに僅かに嬉しくなって返す。


「俺に言っても不老不死なんかにはなれないぞ? それこそ、体に竜の血でも流れていない限り。」

「竜の血? まさか竜というものが実在するのか!?」


科学者として、もちろん生態にも興味があったロイは、思わず身を乗り出してそう聞いてしまったが、エドはそれを面白がるように見て、もったいぶるように「どうだかなぁ。」などと言っている。


「もったいぶるな、知っているのなら教えろ!」

「正確にはもういない。けど、いる。はっはっは、この意味がわかるか、あんたに!」


そして終いには、子供のように低レベルな罵り合いまで始める始末。

そんな彼らの問答を、前座席に座っていたハボックとホークアイは、思わず微笑を浮かべながら聞いていたのだった。







(あとがき)
ロイ、エドに陥落。

次回はセントラル着でしょうかね?

あぁ、ギャグが遠い・・・・。




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