シンが自分の思考に埋まっている間に、いつの間にかあちらでは挨拶が終わっていたらしい。 何やらこちらを見ていると思ったら、行き成り隣にいたレイに肩を叩かれた。 何だ、と思いつつレイを見ると、彼は相変わらずの物静かな口調で言ったのだった。 「ボーっとしてるな、シン。議長が呼んでいる・・・・・行くぞ。」 そう言うや否や、彼はシンを振り向きもせずに先に足を動かしだしたのだった。 どうやら考え事をしている間に議長が自分に声を掛けたらしい。 って言うか“考え事”してたんだって。ボーっとしてた訳じゃねぇよっ! と内心で突っ込んでおいてから、「だからあの人たち俺のこと見てたのか・・・・・・・」と納得もしていたらいつの間にレイが議長のすぐ傍まで行っていたことに気付いた。 それで漸く我に返り、シンも急いで議長の傍―――しいてはフリーダムのパイロットと、ついでにアスハ代表の元に向かったのだった。 ちなみに。 もしレイがシンの内心の突っ込みを聞いていたとしたら、やっぱり無表情でこう言ったことだろう。 「考え事をしていようがいまいが、口を開いて一点を見つめつつ自分に掛けられた言葉に反応も返さないならば、見た目は正に「ボーっとしている」としか言えないだろう。」 ううむ、もっともである。 INVITE2キラは議長の隣に立った金髪の少年を、微笑ましそうに目を細めながら見ている。 が。 内心では本当に というか、何だかそれ(腸の沸騰)は痛そうだから、いっそのことこの目の前にいる腹黒の なんて正直言ってお近づきになりたくなくなるようなことを考えつつ、しかしそれを表面に出さずにちらりと議長に視線を送る。 すると議長は最初っからキラを見ていたらしく、しっかりと目が合ってしまったのだった。 そして、社交辞令のような微笑を向けられたのである。 キラもそれににっこりと微笑み返しつつ、すぐに視線を少年に戻したが、内心では「さっきの計画( 何故二度もそう思ったのかと言うと、それにはちゃんと理由があるのだ。 一度目は、クルーゼと瓜二つの少年と自分を引き合わせたことが何やら作為を感じたから。 そして二度目は。 ―――――見逃さなかったのだ、彼の瞳に浮かぶ、目が合った直後に引っ込まれた感情を。 それはキラの反応を面白がっているモノ以外の、何物でもなかったのだ。 それによって議長はキラとクルーゼの因縁や関係を知っているのだと気付き、やはり目の前の少年は議長の何らかの作為によって自分と顔を合わせたのだと悟り、加えて今までの此方の被害を考えてしまった結果、あのような危険な思考にたどり着いてしまった訳である。 隣にいたカガリはそんなキラの内心を何故か悟ってしまい、顔が引きつりかけたが、キラがカガリの指を強く掴んだことによって何とか自制した。 キラもカガリも視線はレイに固定されているというのに、意志の疎通が出来ちゃったりしたのはやっぱり双子の神秘(笑)というヤツなのだろうか。 それはそうと、どうやって実行に移そうか・・・・とキラが真剣に悩みかけたそのとき、漸くもう一人の少年も議長の傍、金髪の少年の隣に到着したのだった。 キラは、少年を知っていた。 この血のような赤い瞳を、忘れられるはずが無い。 二言三言言葉を交わしただけだったが、彼の苦々しげな言葉も強く印象に残っていたのだ。 だから思わずキラは言葉を発してしまっていた。 「君は・・・・・・。」 それによって顔をキラに固定した少年は、訝しげに眉根を寄せてキラを見た。 ****** 何だというのだろうか。フリーダムのパイロットと言う麗人は、シンを見て動きを止めてしまっていた。 そしてもちろん、それを見逃す議長ではない。 彼は面白い物を見つけたとでも言いたげに顔を目を細めた後、「知り合いかい?」とフリーダムのパイロット―――確かキラと言ったか―――に声を掛けたのだった。 キラは一瞬躊躇ったあと、シンを見たまま何処か哀愁を湛えた瞳で、議長の質問に答えたのである。 「オノゴロで一度・・・・・・。大した会話をした訳ではないので、彼が覚えていないのも無理は無いと思いますが。」 それから、呟くように、今度はシン本人に向けて言ったのだ。 「そう・・・・君、ザフトの軍人だったんだ・・・・・・・・・・・・。」 その呟きを聞いたカガリは一瞬驚いたように目を瞠り、すぐさまシンに向けて縋るような視線を向けた。 カガリはシンがザフトであることを知っているくせに、何をそんなに驚いているのか、とも思ったが、シンはそれ以上に頭を占めていた疑問があったりするのだ。 えぇ〜と、俺、この人に会った事あったけ・・・・・・・・・・・・・・・? と、いう疑問が。 とりあえずカガリの視線の意味は置いておくことにし、シンは以前会ったと言うキラの事を思い出そうとしていた。 何せ二年前まではずっとオノゴロにいたのだから、子供の頃に会ったというのならばお手上げだ。しかしこんな綺麗な人物を忘れるとはなんてお馬鹿なんだ俺! と自分を叱咤して必死になって記憶を探っていると、漸く彼の記憶に引っかかる足掛かりとなるモノを感じたのだった。 その正体は・・・・・・・、声。 そうだ、確かにこの声をつい最近オノゴロで聞いた。逆光で顔は見えなかったけれど、この年齢にそぐわない静かな雰囲気と口調は、あの人物とぴったりと一致する。 「あんた、あの時の・・・・・・・・! 慰霊碑の・・・・・・・。」 そう言うと、キラは一瞬複雑そうに微笑み、「そうだよ、覚えていてくれたんだね。」と言って、自然な仕草でカガリを見た。 そして、心なしか青くなった顔でキラを見るカガリに、微笑を送ったのだった。 それは、何処か痛ましげで、何処か慈しみの篭った、穏やかな微笑。 その意味がわからず困惑するシンをよそに、議長が「それで」と口を開いたのだった。 「そろそろ、彼らの紹介をしてかまいませんか?」 それは、今度はカガリに向けられた言葉で。カガリはその言葉にはっと息を呑み、次いで凛とした口調で返した。 「あぁ、そうだな。・・・・・・・・・言い遅れたが、久しぶりだな、元気そうで何よりだ。議長、シン、レイ。」 彼女のその口調は、以前会った時には感じなかった覇気や、しっかりとした意志、そして何よりも上に立つ者としての威厳に満ちており、シンは意外な念を抱きながら、レイと一緒に敬礼を返したのだった。 それから、議長の視線に促されるように、レイから順に名乗りをあげる。 「お久しぶりです、代表。そしてはじめまして、ザフト軍所属艦ミネルバ所属、レイ・ザ・バレルです。」 「・・・・・・・同じくシン・アスカです。」 ****** なるほど、軍人だとは先に聞いていたが、つい最近まで戦っていたミネルバ所属のパイロットと会わせるか。 いったい何を考えているのやら・・・・と内心思いつつキラは微笑み、穏やかで凛とした態度を崩さないままに自己紹介で返したのだった。 「はじめまして、“オーブ軍所属艦アークエンジェル所属”、キラ・ヤマトです。・・・君達は、レジェンドとディスティニーのパイロットだね? 知っての通り僕はフリーダムのパイロットだけど、仲良くしてくれると嬉しいな。」 心なしか“オーブ軍所属艦アークエンジェル所属”を所属し、言いたいことを全部一気に言ってしまう。 あくまでもレジスタンスとは言わせない立場なのだ、と議長に先手を打ち、それを少年達には悟らせないようにする対処である。 しかも最後はにっこりとした微笑を沿えて、しかも少々幼い感じ(意図的)に言ったので、彼ら二人は少しも疑問に思うどころか、わずかに頬を染めてしまってまでいるのだ。 その結果に内心でほくそ笑みながら、キラは議長から掛けられた言葉を、半ば投げやりに答えたのだった。 「ほう、何故君は彼らがレジェンドとディスティニーのパイロットだとわかったのかね?」 「勘です。(即答)」 それに口調は冷ややかに、しかし自分に視線を奪われている少年達や外野に気取られないように顔は始終にこやかな状態を保ち。 隣にいるカガリの顔がわずかに引きつったのを気配で悟りながら(by双子の神秘)、キラは尚もにこやかに議長を見ていたのだった。 それから内心で、刺々しい口調でしっかりと答えてやる。 『わかるっつーの。ミネルバから発進されたレジェンドはプロヴィデンスと同タイプのMSで、そのミネルバにはレイが登場していたと。彼と同時に紹介されたシンは、必然的に一際目立っていたもう一つのMS、ディスティニーのパイロットだって・・・・馬鹿にしてんのかコンチクショウ。あぁ、ちなみに機体名はアスランから聞き出したので知っていた訳。』 と。しかし議長は議長で何を考えているのか、キラの内心を悟ったのかよく解らない微笑のまま彼を見返し、あくまでもその微笑を崩さずに言ったのだった。 「それでは、代表、キラ・ヤマト君。パーティを楽しんでくれたまえ。」 そう言って去っていく議長の後ろ姿を見送りながら、キラはやはり内心のみで闘志を燃やしていたのである。 ――――さぁ、反撃を開始しようか・・・・・・・・・・! そのときキラの秀麗な顔に浮かんだ悪魔のように嫣然とした微笑を、不幸にも見てしまった者はカガリのみしかいないのだった。 (あとがき) え!? 今回ギャグじゃなかったの!? って、自分でも驚いてます・・・・・。 すみません、今度こそギャグで・・・・・・・・・! そして打倒腹黒!! 頑張るぞ、おー!!! |
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