開場入りしてすでに数十分が経った頃。 「キラ・・・・・あの、大丈夫か・・・・・・・・?」 カガリが心配そうにそう言ったことに、キラは苦笑で返したのだった。 「大丈夫だよ。でも、カガリは知っていたんだね。彼の家族がオノゴロで亡くなって、それが切っ掛けで彼が軍に入ったって。」 少し考えればすぐにわかることなのだ。 オノゴロの慰霊碑を訪れたこと、今軍人であること。そしてカガリの気遣うような態度が決定打となった。 オノゴロの対戦は、いずれもキラ、そしてカガリも関係している。 自分だって辛かっただろうに・・・・。と思いながら、キラは自分達に近づいてくる人物を気配で察し、カガリに小さな声で言った。 「彼が憎しみで軍に入ったってことはなんとなくわかる。しかも最近たぶんシンの知人を僕が討ったしね。色々とやらなきゃいけないこともありそうだけど・・・・・・でも今回は、彼に構っている余裕はないよ。」 シンの知人を討った・・・・・。カガリにはそれが誰なのか分からなかったが、不可抗力でもやはりキラを連れて来るんじゃなかった・・・・と、どうしても思ってしまう。 何せ最近まで敵対していたのだ。そんな事実があっても不思議ではないはず。 それを分かっていながら彼らを会わすとは・・・・何を考えているのだ、議長は。 キラはカガリの瞳が憤りで染まったのを悟り、苦笑すると同時に彼女の頭をそっと撫でた。 「大丈夫だよ、カガリ。彼のことはいずれ何とかする。どうやら彼は僕自身に対してはそんなに敵意を持っていないようだしね、大丈夫。・・・・・それよりもカガリ。」 そこまで言って、キラは素早い動作でカガリの耳に口を寄せ、囁くように告げたのだった。 「―――――反撃開始、だよ」 カガリはその声に顔が引きつるのを抑えることが出来なかった。 なにやらただならぬ覇気を感じるのだ。いや、覇気というか・・・威圧感? いや違う、これは・・・・・・・かなり認めたくはないが、紛れも無く魔王オーラだ!!! 止めれ怖いから!! 大体私のその魔王オーラを向けるな!! 私は味方だろう!? そこまで内心で叫び、カガリは不意に悟ってしまった。 キラ・・・・・もしかして、私の反応を面白がっているのか・・・・・・? 視線で思わず問えば、キラは無言でにっこりと、それこそ女神の微笑の如く美しく笑ったのだった。 それを見て、カガリは思わず地上にいる彼のピンク色の恋人・・・・・はダメだ。あいつも面白がっている確立が高い!! 並びに、 しかし、キラの体の向こうからレイが此方に向かっていることに気付き、すぐさま意識を取り戻したのは、流石(魔王の姉)と言えるだろう。 INVITE3レイが自分達に向かってくるのを、カガリとキラは微笑で迎えた。 彼が何を目的にココにきたのかは、ホールに集まりだした男女を見れば、安易に予想できる。 そして、彼はやはり予想と寸部違わない言葉を口にしたのだ。 「代表、私のお相手をお願いできますでしょうか。」 と。それは、紛れも無くカガリへのダンスのお誘い。すでにパートナーのいる、しかも一国の代表に相手を頼むとは、なんとも豪胆なことだ、と彼らを横目で窺っていた者達の関心を奪いながら、レイは優雅な仕草で左手を差し出したのだった。 「いや、私は・・・・・・」 しかしダンスが得意でない上に、ぶっちゃけレイともあまり相性がいいとは思わなかったカガリは謹んで断りの声を上げようとしたのだが、それは傍らにいた本来のパートナーによって遮られてしまった。 曰く、『君がレイといる間、絶対議長が僕に接触してくるから。その間にヤっておくから、安心して行って来ていいよ。というかむしろ行け。』とのこと。 もちろん、コレをレイがいるこの場でキラが口に出すわけがない。 笑顔の奥に潜むその言葉を何故か上手く拾い取ってしまい、カガリは内心で「お前最近ホント容赦ないよな・・・・・」涙ながらに呟き、結局その言葉に従ったのだった。 ちなみに。「ヤっとく」をどう変換するかは、貴方の自由、ということで・・・・。 そして案の定、カガリがレイに連れていかれたすぐ後、キラに近づいてくる者がいたのである。 「ほう、彼らはダンスに行ったのか。」 背後からかけられたその言葉に振り返ると、議長はにこやかに笑いながらキラを見ていた。 キラもまたにこやかに「えぇ」とだけ返し、議長が自分の横に並ぶのを見届ける。 「代表はなかなかダンスが上手いな。君は踊らないのかい?」 相変わらず何を考えているのかよく分からない微笑のままそう言われ、キラは数秒躊躇った後、儚げな感じで応えたのだった。 「・・・・・・・僕には一緒に踊る相手がいませんから・・・・・・。」 ちなみに、イメージは二年前の自分。その当時ムウさんに言われたのだが、男というモノ・・・特に一筋縄ではいかない類の男は、こんな風に目まぐるしく表情の変わるコに弱いんだそうだ。 たぶん今までの少ない会話と、たまに見せていたこの儚げな微笑によって、目の前の男は自分を「本当は弱いのに気丈に振舞っているだけの青年」として捉えていることだろう。 可能な限り議長を油断させる人格を作りながら、キラは表情を元に戻して、視線をカガリに向けたのだった。 ********* 他の男と踊る自分のパートナーを見るその姿の切なげなこと、この上ないありさま。 デュランダルはそれに一瞬息を詰めてキラを凝視し、冗談のような口調で、しかし内心はかなり本気で提案したのだった。 「ならば私と踊るかね・・・・・・・?」 「ぇ・・・・・・・・・?」 それに驚いたように自分を見るキラに、デュランダルは我知らず満足しながら、更に続けて言う。 「大して可笑しくはないだろう。・・・君さえよければ、だが・・・・・。」 ついでに人の良さと大人の魅力をむんむん(笑)に漂わせ、優雅な仕草で左手を出してそう言えば、大抵の者は陥落する。 ましてや彼は今寂しがっている。必ずこの手を取るだろう。 キラの思惑にかつてないほど嵌ってしまっていたデュランダルは、そう信じて疑わなかったのだ。 しかし、その予想はやんわりと外されることとなる。 「すみません、遠慮しておきます。」 と、申し訳なさそうな微笑によって。 デュランダルは一瞬予想を外れた行動に驚きながら、しかし手は下ろさず差し出したままに、微笑を浮かべたまま更に言う。 「おや、どうしてかね・・・・・・?」 ********* どうしてかね・・・・・? ってそりゃ勿論。 「僕 言外に「あなたには“そういう趣味”があるんですね」と微笑を浮かべたまま言い、ぴきりと固まった男に「あぁ、見事に騙されてくれたんだな、この人」と瞬時に悟って、キラは内心で高らかに哄笑しながら尚も続けた。 「それにやっぱ・・・・・・・・・」 そこまで言ってからふと思う。 ってか「大して可笑しくない」ってどう言う意味だ。僕の見た目を考えれば男と踊っていても違和感がない、とかいう意味だったら そんなことを考えながら続きを一言。 「僕としては若いコの方がいいですし・・・・・・。」 あくまでもにこやかに。しかし何処までも純真で恥ずかしげにそう言う。 その言葉に完全に動きを停止させた議長に、キラは内心で「・・・・・・・・・・・・あれ? もしかして、年齢のこと気にしてる・・・・?」と意外な面持ちで呟き、ゆっくりと下りていく議長の左手を見送った。 そして、なんだか青くなっている議長がつむいだ言葉に、かなり本気で驚いたのだった。 「私は、これでもまだ20代なのだが・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えぇ!?」 ホント!? 嘘です。公式で彼は32歳という設定になってますが、気にしてはなりません。(ぇ キラは本当に心から驚き、策略もなにも無く、気が付いたら口から言葉をつむいでいた。 「く、苦労してるんですね・・・・・・・。」 それは、言外に「とてもそうは見えない」と言っているのも同じ事。なまじそれが本気で言っているのだと分かってしまったから、議長はこれ以上と無く取り繕うのも忘れて落ち込んでしまったのだった。 キラはその姿に微妙に同情心を抱きながら、「とりあえずバルコニー行きませんか・・・・? 風に当たって気分を変えましょう」と優しい様子で言う。 それに思わず従ってしまった議長は、まだ知らない。 それはキラが真に彼を案じていった言葉などではなく、ただ単にこれからのことを考えると、自分達を好奇心の目で見る他の観客の視線が邪魔なため――しいては以降の自分の更なる追い込みを見られないようにするためだったことを。 ―――――そう、キラ以外の誰も知らない。この後、デュランダルに更なる苦悶が待ち受けていることを―――・・・・。 (あとがき) ちなみに。キラが討ったシンの知人は、言わずもがなステラですね。しばらく様子見してたし、たぶん気付いているよな、キラは・・・とか思ってみたり。 議長の本当の年齢は、あそこで入れるべきじゃないかな・・・と思いつつも、あとがきに書いてそれを読まずに誤解したままの人がでたらヤだし・・・と思った結果文中にいれました。 ホントはない方が楽しめるのに・・・・。 ってかなんかこの回で終わらせるはずだったのですが、意外に長くなったので、次回“あの人”登場で。 拍手で設定をもらい、一度断ったのですが、1話分余裕ができたので決行予定!! ということで、やっぱINVITEで書きます!! ありがとう設定くれた方!!(ぉい |
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