まだ朝日も登っていない明朝。

 一人の青年が森の中を彷徨っていた。

いや、彷徨っていた、という表現はおかしいかもしれない。

青年は明確な意図を持って深い森に足を運んでいたのだから。


まずは視線を足元にやって、何かを探しているように道とは言えない道を進む。

それが一通り終わると、今度は茂る木に手を当てては、その全貌を見回す。

 その行動を、青年は何度も何度も繰り返していたのだった。



しばらく立つと、彼は疲れたのか大木の根元に腰を下ろした。

そしてそのまま、目を瞑ってしまう。


彼の一連の動作を見ていた少女は、彼が眠ったのだと認識したと同時に、登っていた木から下りたのだった。


 ――――――音もなく着地した少女に、青年が気づく気配はない。



紫鬼 〜第捨参話〜





少女は、口を開かない。

彼女の足も、青年の三歩前から動くことはない。


 苦無を持った手が、震えるのは・・・・・・何故。

この光景を懐かしいと感じてしまったのは、何で・・・・・?


「あなたは、誰なの・・・・・・・・・」


聞いていないのは承知で、ステラは小さくそう呟いた。


ステラの記憶に青年の顔はない。

なのに彼を懐かしいと思った。自分は彼を知っているはず、と確信してしまったのだ。


 ――――――そして、何故か安堵した。


彼が自分を知っていてくれて嬉しい。自分が彼を完全に忘れていた訳ではなかったということに、とにかく安堵したのだった。


 知らない人物に対する、矛盾した感情。

目の前の青年を殺すために一人、ステラはここにいるのに。

なのに体は、いつまで立っても動かなかった。




「本当に、変わらない。」


しかし微動だにせず困惑していたステラは、突如何かによって体の自由を奪われてしまったのだった。

 行き成り奪われた体の自由。すぐに忍としての冷静な自分に戻り、彼女は自由を奪ったものの正体を見極めるため、目を細めた。

 すると、体中に張り巡らされた糸を認知することができたのだった。


体は動かない。下手に動くのも得策ではないと考え、ステラは視線のみを動かして、先ほど声が聞こえた方を睨むように見る。

 そこには言わずもがな、彼女がずっと見ていたはずの青年が悠然と立っていたのだった。

どうやらステラは、彼に嵌められたらしい。青年は最初から寝てなどはおらず、彼女を罠にかける機会を窺っていただけだったのだ。

 そう気づくと同時に湧き上がる憤怒と、わずかな悲しみ。

自分とは無縁のはずのその感情に、ステラは敵前だというのに困惑してしまった。


 それを見ていた青年は、ステラにゆっくり歩み寄ると、また先ほどの言葉を繰り返したのだった。


「本当に、変わってない・・・・。」

それは、一回目の言葉よりも、遥かに優しい響きを持っていて。

 更に彼の顔には、柔らかで、穏やかな・・・辛うじて苦笑だとわかる微笑が浮かんでいた。


「駄目だよ、油断大敵。敵の前で考え事しちゃ駄目だって、何度も言ったでしょう?」


更に続けられた言葉はどこか、幼子に言い聞かせるような口調で。

 ステラは不覚にも、何故か無性に泣きたくなったのだった。


「・・・・・・・・・ステラ。」


そして、彼の口から自分の名前が出たと同時に、彼女は溢れ出る涙を止めることを、放棄したのだった。





 今、キラの腕の中には気を失った少女がいる。

彼が動けない少女の首筋に、手刀を打ち込んだのだ。

キラは懐かしい重みを感じながら、緩慢な所作で木々の間から見える空を見上げたのだった。



―――――まるで、神の裁きを待つ天使のように。






朝日は、今日もまた、いつのまにか昇っていたのだった。








「カガリ、ベット貸して。」

朝起きて行き成り異性にそんなことを言われて、驚かない女がいようか。

しかも彼の腕の中には気を失っているらしい少女が納まっている。


ちょっといいなぁ・・・と思ってしまった事は内緒にし、カガリはすぐさま自分に宛がわれたベットに彼らを促したのだった。


ちょっと考えればわかるのだ。どうせキラの事だから、散歩でもしている間に気を失っている少女を発見し、保護したのだろう。

 怪我した犬や猫を拾ってくるのと同じだ、気にするな、私。

そう思って(一部を除き)そのまま口に出すと、しかしキラは一瞬カガリの予想をハリセンでホームランを打つかの如く吹っ飛ばすような返事をしたのだった。


「違うよ。僕が・・気絶させて誘拐してきちゃったの。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだって・・・?」

あっけらかんと言うキラに、流石のカガリも少し反応が遅れてしまった。

だがそんなことは気にせず、彼はカガリが先ほどまで寝ていたベットに少女を下ろして、さして凝っても居ないだろう肩を暢気な顔でもんでいる。


一方、カガリはちょっと頭が混乱していた。


―――――つまりあれか。一目惚れってやつか。

その衝撃が強すぎてこんな行動に出てしまったと・・・・・・・・・・・・・いやはや、素晴らしい行動力なことだ。さすが私の従姉弟殿・・・・・・・・・・・・・・・てゆうかちょっと待てやコラァ!!!


「キラ!! 今すぐそのひん曲がっちゃったらしい根性を叩きなおしてやる!! き、昨日まではあんなにいい子だったのに・・・・・・・! 姉ちゃん悲しいぞぉ!?」

 そう言うと同時に、全体重をかけた拳をキラの綺麗な顔めがけて繰り出したのだった。


流石はカガリ。とても妙齢の女性とは思えない行動、そして攻撃力。


そんな所で感心しながらキラは暢気に笑ってそれを軽く流し、第二撃も彼女の腕を掴んで止めさせたのだった。


「あはは。冗談だよ。」


それから、やはり暢気な笑い顔でそう付け足す。巷では彼の微笑は女神もびっくりの穏やかな微笑なんて言われているが、カガリから見ればただ暢気に達観してる笑い顔でしかない。

 喜べばいいのか悲しめばいいのかわからない複雑な心境ではあるが、その微笑でそんな言葉をさらりと吐くな。

・・・・・冗談で済む会話じゃないんだって・・・・・・・・・・!!


カガリは激しくそう思ったが、キラが言うならそうなのか。ととりあえず気力で納得して視線を少女に移したのだった。


「冗談ならこの子は? どこで拾ってきたんだ。」

「拾ったってカガリ・・・・・・・・・。犬や猫じゃないんだから。「今すぐもとの場所に戻してきなさい!!」とかは言わないでね?」


 そう、笑いながら言った。

そこまで来て、カガリはまたも出たキラの冗談を漸く「おかしい」と悟ったのだった。


 キラは普段から冗談の類をいうような奴ではない。どちらかと言うと本当っぽくて怖い冗談を吐いて誰かを脅すことはするが・・・・・・・・ぁぁ、まぁ、結構言っているが、こう言ったお馬鹿な冗談はあまり言わないはずだ。


「お前、どうしたんだよ・・・・・・・・?」

何かが、おかしい。


 カガリの心配そうな表情に気づいたキラは、少し苦笑気味に笑った。

そして、視線を少女に固定したまま言ったのだった。


「・・・・・・・・この子、僕がブルーコスモスに所属していたときの部下なんだ。」

らしくもなく、ちょっと動揺してるみたい。


そう笑いながら言うキラの瞳は、確かに戸惑いにゆれている。

 カガリはそのキラの表情に驚くと同時に、安堵した。


「ブルーコスモス」・・・・・・この言葉を自分から言ったキラ。

いつもなら彼の表情は全くと言って消えうせるのだ。それは、憎悪か嫌悪か、哀愁か・・・・・・なんらかの感情が頂点に達してしまったからこその無。

なのに、今は「戸惑い」という表情が浮かんでいる。先日のことといい、段々ブルーコスモスに対する色々な感情が薄くなってきているのだろうか。


だとすれば、それは大いに喜ばしいことである。

 何が切っ掛けになったのかとか、そんなことはどうでもよかった。

キラが壁を乗り越えようとしているのを感じ、カガリは場違いなほど気分が高揚したのを感じたのだった。





――――そもそも、キラが何をしに森へ行ったのかというと。

それは、ステラ達に与えられていた薬物を、除去する効果をもつ薬草を手に入れるためだったのだ。


生憎、彼らに使われた薬は全てキラの頭にインプットされている。

そこからその効果を消す物質を割り出し、今手に入るもので即席の解毒剤を作ることにしたのだ。


本来ならば完璧に解毒剤ができてからかどわかして飲ませようと思っていたので、その途中でステラに会ったのは少し予想外だったのだ。

 だがせっかくのチャンスを逃がしてなる物か、と思い、すぐさま所持していた鋼糸を回りの木々に巻けていって、簡単に罠を作ったのだ。

そして、ステラが所定の位置についたら鋼糸を一気に引っ張り、拘束。

 無論彼女を傷つけないように刃の向きは全て調整しておいた。



しかし・・・と思う。

 自分がやろうとしていることは、果たして正しい事なのだろうか。

もし自分が彼らの薬を解けば、本当に彼らは解放されるのだろうか。

自分が薬の効果をけしたことで、更に何かにとらわれる羽目になるのではないのだろうか。


・・・・・・・・・・簡単に言ってしまえば、これはただのキラの偽善行為。

それが元部下達に更なる苦しみを与えるのではないのかと、彼は不安なのだ。



考え事をしながらステラを見る、キラの暗い表情に気づいたのだろう。カガリはキラに気づかれないようにため息をこぼし、徐に拳を振り上げた。


「痛っ何するの、カガリ!?」


もちろんその拳の落下地点はキラの後頭部。

珍しく攻撃が当たったことにカガリ自身驚きながら、自分に視線を移した紫水晶の瞳をじっと見、眉根を寄せて言葉を発する。


「お前もっ! 頭ハツカネズミになってるだろ。考えてもわからないことは考えるな。いっそ本能のままに動いてしまえ!」


ハツカネズミ・・・・・・・・・・・・・・・・・?

あぁ、同じ所をぐるぐる回ってる、という意味か。


 キラは殴られた頭を撫でて、苦笑した。


本能のままに、か・・・・・・・・。つくづく思うのだが、我が従姉弟殿は本当に豪胆なお姫様だ。
 ――――――だが今は、その豪胆さに救われる。


キラは視線をステラに戻し、また苦笑して「そうだね」と答えたのだった。







 カガリは早速薬を作り始めたキラの邪魔をしないよう、そっと部屋を出た。

寝室と間取りされている部屋の、備えつけの紅茶セットを出しながらお湯を沸かす。

 一部屋にキッチン装備の旅館とは、なんとも羽振りがよろしいな、と思いつつ、柔らかなソファーに腰をおろした。


 大きな窓から見える朝日は、いつもと変わらなく、神々しくも優しい。

カガリはそれをボーっと見ながら、持っていたダンベルを習慣で上げ下げしていたりする。


 それからしばらく経ち、紅茶を蒸し終わった頃。

徐にドアがノックされる音が、響いたのだった。


ドアをあければ案の定、そこにはすでにお馴染みとなった少年二人が。

 カガリは彼らを迎え入れ、ついでだからと紅茶を振舞った。

その際、紅茶を戴いたシンとレイがめちゃくちゃ「意外だ・・・・!」と思いつつ、「そういやこの人、一応お姫様だったんだっけ。・・・・忘れてた。」と内心で呟いていたのは、絶対に本人には言えない秘密である。



「そういやあんた、怪我は治ったんですか?」

迎えに出たカガリは、危なげなくしっかりとした足取りで歩いていた。

それは、とても先日まで人の手を借りて漸く立っていたとは思えない動き方だったのだ。

 まさかこんな早くに治るわけないか、と思いつつも、不思議ではあったのでシンがそう聞いたのである。

 するとカガリはティーカップを皿に戻しつつ、ニヤリと笑って答えたのだった。


「まぁな。怪我の治りが早いのは、私の家系の特徴だ。・・・・・・なぁ、キラ。」


 その言葉にばっと背後を振り向くと、なんとすぐ近くにキラが腕を組んで立っていたのだ。

いつの間に・・・と思いつつも「そうだね」と相槌を打つキラを見、その顔が思案げに顰められていることに気づいたシンは、背後を振り向いた格好のまま言葉を発したのだった。


「キラさん、大丈夫ですか?」


大丈夫か・・・・・・。それは、昨日のキラを見たからこそ出た言葉。

体調を聞いたわけではないその疑問に苦笑を返し、キラはシン達の反対側、カガリの隣に腰をおろした。


「僕は大丈夫。心配してくれてありがとう」


そう言った途端にほっとため息をついた三人。それにカガリも含まれていたことに苦笑を深めて、キラは密かに深呼吸を繰り返していた。


これから自分は、自分自身の古傷を抉り、シンの生乾きの傷に塩を塗るような話をする。

 それがけじめであり、ステラ達を仲間に引き込むならば絶対にしなければならない行動なのである。

それに何より、誤解と深い憎悪を持つ少年に、そんな状態を続けていて欲しくなかった。


キラは目を閉じ、小さく息を吐くと、こちらをじっと見ていたシンとレイを交互に見てから、口を開いたのだった。


「唐突な話になるけど・・・・・・・。シン、君はジブリールに恨みを持っているね?」


確かに、その唐突な話の切り出しに戸惑いながらも、シンはぎこちなく頷いた。

 先日そのようなそぶりを見せてしまったし、今更取り繕う必要も隠す意志もない。それに何よりも、キラの確固たる口ぶりが、反論することを許さなかったのだ。

 わずかに感じるプレッシャーに眉を寄せながら、シンはキラを見た。

彼はどこか迷うようなそぶりを見せながらも、シンをじっと見つめ返して更に言葉を重ねたのだった。


「・・・・・・・・それは、何故?」


完全に個人的な話。何故今そんなことを聞くのかと疑問には思ったが、キラの瞳を見て抗い難い気分になり、シンは戸惑いつつも素直に答えたのだった。


「ジブリールの忍に、俺の妹が殺されたんです――――――・・・・・」


 それは、今でも癒えない傷を、幼いシンの心に残した出来事。

突然の事だった。シン達がいたザラ付の忍によって形成される隠れ村に、いきなりジブリールの忍が奇襲して来たのである。

頭領のすばやい対応によって被害は小さかったが、奪われた命は決して少ないと言える数ではなかった。

・・・そしてその中に、シンの妹・マユも含まれていたのだ。

目の前でもたらされた妹の死に、シンは悲しさと悔しさを、憎悪に変える事によって生きてきたのである。


 キラはシンの話を、静かな様子で聞いていた。カガリとレイは何も言わない。今は自分の出番はないのだとわかっているのだろう。


「俺はっ! ・・・・・・俺はあの国を滅ぼす。あんな国、無い方がいいんだ!!」


そして。語って行くうちに感情的になったのか、シンは叫ぶようにそう言って、口を閉ざしたのだった。


 レイとカガリはシンの物騒な言葉に、少なからず驚いているようだ。

だがキラは予想の範囲内のことだったので、大して驚くこともせずに俯いているシンをひたと見て、口を開いた。


「僕も、同じだ。」


その言葉にぱっと頭を上げ、シンはキラを見る。

その顔は驚くほど静か。・・・・・・いや、無表情、というのだろうか。

初めて見るその表情に、シンもレイも目を見開いて息を止め、カガリは口の中で「やっぱまだ克服できたわけじゃないんだよな・・・・・。」と呟いていた。

 キラはそんな三人の様子を気にした風も無く、シンのみを見てもう一度繰り返したのだった。


「僕も、同じ・・・・。」

「お、同じって・・・・・・?」


キラのそんな様子に耐えられなくなったのだろう、シンは恐る恐るながらも先を促した。


「目的が同じ。いや、少し違うかな。それと・・・・・・僕も、最愛の人をジブリールに殺された。・・・人質、だったんだ。」

「人質・・・・・・・・・?」

「うん。・・・・・・・でもそれはまた、後で話そう。今は先に、君達に・・・・君に、知っていて欲しいことがあるんだ。」

 そう言って、漸く表情らしい表情を戻して、キラは静かに語りだしたのだった。


「ジブリールの大規模な忍集団も、ジブリール政権の残虐非道な仕打ちも。全て今の王、ロード・ジブリールが即位してのことだ。」

国家付の忍集団は国王の私兵と化し、また一般人からも莫大な報酬の代わりに志願を募り、軍備を拡大。

 重税に苦しむもの達の多くは志願し、その規模は大きくなる一方で。

しかもジブリールで、王の言葉と立場は絶対的な存在でなのである。よって臣下も口出しすることは出来ず、行いを諌めた賢臣たちはことごとく討たれてしまった。

そうしてとどまることの無いその非道な政治に、国内で何度も反乱が起こったが、それも全て拡大したブルーコスモスに鎮圧されてしまったのだ。

 しかしそれでもまだ、国民までもがジブリール政権に染まっている訳ではないのである。

今も尚反乱軍は存在し、多くの国民達は今の王権に怒りと反感を持っているのだ。

「だから、国の崩壊は望んではいけない。今の政権に抗う術の無い民間人に被害が出ないよう、できるだけ穏便な手段でジブリール帝国を崩壊させるのではなく、解体する。 ――――――これが僕の・・・“紫鬼”の最終目的だ。」

その為に“紫鬼”は各国で暗躍し、秘密裏に同盟を結ばせたんだ。


キラはそう言って口を閉じ、正面に座るシンとレイをひたと見据えていた。

彼らはどうやら、初めて聞く情報に戸惑いつつも、自分の思考に埋まっているようだ。

 ・・・無理も無い、国交の閉ざされ警戒の固いあの国の情報は、今では全く手に入れることは出来なくなっていたのだから。

 キラだってこれをはじめて聞いたときには驚いた。だいたい、こんなに詳細を知っていたジュール・・・・の方が異常なのである。


・・・・・・そう、これは、彼が“紫鬼”となる前に、イザークから聞かされた情報なのだ。

 自分が最近までいた国の知られざる事実に、キラは動揺しながらもその後に続けられた言葉に、決意を新たにしたのだ。


「・・・・・・『事実を知り、王を恨みたい気持ちはわかる。だが、憎しみは負の感情しか呼ばないんだ。お前と、何もしらない子供や状況を感受するしかなかった民間人を悲しませない為にも、関りのあったもの・・・ジブリールの国全てを恨むのはやめておけ。虚しいだけだ。」


 口調にわずかに違和感を感じながらも、シンは自分に向けられているその言葉に引き込まれるように、キラに視線を戻した。

彼は昔を懐かしむような微笑を浮かべながら、シンを見て更に続けたのだった。


「だからと言って王を恨むのもいただけない。それよりももっと実質的な復讐をした方が、よっぽどよかろう。あの傲慢な男から国を奪い、幽閉でもしてやれば奴のプライドはボロボロだ。生き恥を晒させる方が、よっぽとダメージが大きいと思わんか?
 その為にも、ジブリールの政権を解体し、他国の支援を受けて国を再建することが、あの国にも、他の国にも色々といいはずだ。・・・・・・俺はそれを、やり遂げたい。』・・・・・・以上、ジュール王国現国王の言葉。僕はこれに乗った。・・・・・・この復讐の方が、気分もいいしね。」


そう言って笑うキラに、シンは呆けたように彼を見つめていた。

 その話を初めて聞いたカガリも、口を開けて呆れ返っている。

「い、イザークらしい・・・・・・・。」

「あはは、そうでしょ?」

そんな会話を聞きながら、レイは未だ固まって何かを考えている風のシンをちらりと見、徐に口を開いたのだった。


「キラさん、俺もそれに乗っていいでしょうか。及ばずながら力になります。」

そう言った途端にレイに集まる視線。

キラは微笑みながら、「もちろん、歓迎するよ」と答えた。

 それにレイも微笑み返しながら、またちらりとシンを見たのだった。

レイに見られたことによってシンは一瞬驚いたように目を見張ったが、その視線に背中を押されたように感じ、少し笑って言ったのだった。


「キラさん・・・・・・・・・・・・・・・、俺も。俺もやる。」


 少し涙が滲んだのは、何故だろうか。


シンは密かに目元を拭い、穏やかに笑うキラを見て、不思議と安らかな安堵を感じたのだった。





(あとがき)
ちなみに。何故キラが自分に宛がわれた部屋でなく、カガリに宛がわれた部屋へステラを運んだのかというと。

そりゃぁ、道徳的なお話でUu
妙齢の意識のない女性と二人っきりはヤバかろう、という話。

更に言うと、キラたちが止まった宿場は、もちろん一人分の部屋が何部屋にも間取りされているという、超豪華部屋。・・・・・・・いいな・・・・・。  



     
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