『思い出して、ステラ。』 ――――――何、を・・・・・・? 『僕が君と一緒にいた時期を。アウルと、スティングと、声を上げて笑いあった時期を。』 ――――――私たちが声を上げて笑いあう・・・・? そんなこと、一度もなかった。 『あったよ。その時は僕もいた。そうだ、僕らが初めて会った日を覚えているかい?』 ――――――はじめて、会った日・・・・・・? 『そう。自己紹介も終えないうちに僕は寝てしまって、いつの間にか君達も僕に寄りかかって寝てた。』 ――――――そんなことは・・・・・。 『あったよ。起きたときすごく驚いた。』 ――――――だって、とても気持ちよさそうだったから、私も眠くなっちゃったの・・・・・・・。あ、れ・・・? 『うん、そうだね。君も寝ちゃってた。僕に膝枕をされてね。その後、起きたらいつの間にか陽がどっぷり暮れていて、驚いたよ。』 ――――――そう、でも起きて私が最初に見たのは確か・・・・・紫色の光・・・・・・・? 『そうだったね。僕の瞳を見たんだ。』 ――――――うん。紫色に光る、瞳・・・・・・。とても綺麗だった・・・・。 『ありがとう。そういえばステラ、海に行く約束したの覚えてる?』 ――――――もちろん。でもあの時あなたは私の隣にいてくれなかった・・・・・・。 『ごめんね、もう行っちゃった? じゃぁ、花火は?』 ――――――それは、まだ・・・・・。 『なら、今度こそ一緒に行こう?・・・“皆で”。』 ――――――うんっ! 『あぁそうだ、ステラ、僕の名前は何だったっけ?』 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キラ・・・・・・。」 いつの間にか瞑っていた目を開けて彼の名を呼ぶと、キラは優しく微笑んでステラの髪を撫でたのだった。 「そうだよ、ステラ。いい子だね・・・・・・・・。」 それが、キラによる催眠療法の成功、つまりステラが記憶を取り戻した瞬間であった。 紫鬼 〜第拾伍話〜進むは道無き道。お世辞にも舗装されているとは言いがたいその道を、5人の若者が和気藹々としゃべりながら進んでいた。 「――――――――――――いや、絶対和気藹々なんかじゃねぇしっ!!!」 「え? お前いったい何に突っ込んでいるんだ、ポチ?」 「ほら行くぞポチ。遅れる。」 カガリ、レイが声をかけたのは、言わずもがな赤目の少年。彼の名は珍しいことに「ポチ」と言うのだ。 「違う!! 俺の名はシンだシン!!!」 その叫びとしか言い様のない声に、先頭を歩いていた麗人が振り返って言う。 「うるさいよ、ポチ。ほら、おすわり!!!」 「座ってたまるか!!」 「キラ・・・・・、ポチの躾、私がやろうか・・・・・・・?」 そう言って何故か苦無を取り出すのは、その行動とは逆にどこがぼんやりとした少女。 彼女はつい最近―――というかぶっちゃけ昨日―――まで敵側の人間だったのだが、キラによってこちら側の人間となったジブリールの忍だ。 朝日がまぶしい時間帯に、キラによる薬と催眠療法によって記憶と自由を取り戻した少女は、自らキラ達との同行を申し出たのである。 少女―――ステラのその言葉を聞いてすぐさま一行は宿を発ち、薬による副作用でしばらく体が動かなかった彼女は、キラに背負られての出発だった。 本当はもう少し休ませてあげたいところなのだが、何せ本当に急ぎの用なのだ。仕方がないと言えよう。 だがすでに本調子を取り戻したステラは、キラの背から下り、世話焼きの良いカガリに時折話し掛けられながら自らの足で歩いているのだった。 それはそうと、なんだか憐れな扱いを受けているポチ少年(だからシンだって言ってんだろぉぉぉおおお!? byポチ)。 キラのポチ発言によって見事にその名が定着してしまったポチ(だ・か・ら、シ:以下略)は、なんだか滲みそうになる涙を必死に堪えていた。 その姿になんだか本当に耳と尻尾をたらして項垂れている犬を思い出し、本人以外の者達は、噴出すのを堪えるのに必死であった。 しかしそろそろ可哀相になってきたキラは、「とりあえず今日のところはここまでにしてあげようか」と提案したのだった。 提案の形を取っていても、キラの言葉は鶴の一声と同意義なのだ。 無論反論する者も無く、「“とりあえず”? “今日のところは”?」と情けない様子で呟くシンをナチュラルに無視し、今日のわんこスペシャル(ぇ)は終わりを告げたのだった。 そして、漸く日も傾き始めた頃。 キラは急に開けた視界に、ふ、息を吐いた。 すでにこの場から今日の宿となる町が見えている。 安堵のため息を吐き、キラは視線を背後の少年達に移したのだった。 彼らは少々息を乱している。昨日に引き続き行われた苦無投げを全部かわしていた結果だろう。 しかも、石は苦無にバージョンアップし、獣道とさえも言えない道は足場や逃げ場を確保するのが難しいため、昨日よりもその難易度は格段に高くなっているのだ。 しかしそれら全てをかわしたのだから、彼らは本当に成長したと言えるだろう。 キラはその事実に満足げに笑い、立ち止まって一行に告げたのだった。 「今日はここまでにしようか。一日中歩いたし疲れたでしょう? それに。」 にっこりと笑って言われた言葉に一行はほっと胸を撫で下ろしたが、しかしその途中で不意に、少年少女3名は戦闘態勢をとったのだった。 カガリは周りが急に張り詰めたような空気に変わったことに困惑しながら、先ほどと全く変わった風もないキラを見て尋ねた。 「“それに”、何だ? だいたいなんでこんなに警戒しているんだ、こいつら?」 警戒しているのはシン・レイ・ステラ。腰をおとし、苦無を片手にいつでも戦闘に入れる体勢となっているのだ。 ステラはともかくシンとレイも早い段階で気付いたことに、本当に成長したんだな、と関心しつつ、キラはカガリの質問に答えたのだった。 「・・・・・残りの僕の部下達が漸く来てくれたようだよ。」 と。その言葉と同時に此方に向かって放たれた苦無。 それをシン、レイが叩き落とし、放った者たちを油断なく見据えていた。 しかしステラはすでに苦無をおろし、戦闘態勢も解除しているのだった。 そして嬉しそうに「アウル!! スティング!!」と声を出したのである。 「「ステラ!!」」 彼女の声に呼応するように声を発したのは、言わずもがな苦無を投げてきたその二人。 同時に身を隠していた木陰から姿を見せ、ステラに駆け寄ろうとしたが、やめた。 彼女のすぐ近くに立っていた青年が目に入ったからだ。 彼は少年二人の視線を一身に受けながら、安心させるように微笑んだ。 それは、昨日あの恐ろしいほどの殺気を放った人物とは思えないほど、穏やかで優しげな微笑み。 そのギャップになぜか既視感を覚え、アウルとスティングは思わず足を止めてしまったのだ。 「・・・・・・・待っていたよ。アウル、スティング。」 攻撃を加えることも何故か躊躇われて、中途半端に踏み出した格好のままでいると、不意に青年からそう声を掛けられた。 アウルとスティングは一瞬のアインタクトを終え、通例どおりスティングが応えることにする。 「・・・・・・・・・昨日はどうも。何故俺達のことを知っているかは聞きませんから、ステラを返してください。」 そう、少年達は朝何も言わずに消えてしまった少女を一日中探していたのだ。 そして漸く見つかったと思ったら、何故か無防備に敵であるはずの者と居る。 その事にわずかに困惑の色を見せている少年達を見、キラは穏やかな笑いを浮かべたまま、未だに戦闘態勢を取っているレイとシンに目配せをした。 するとどうやら正確にキラの意図は伝わったようで、二人は無言で苦無を所定の位置に戻し、自然な動作でカガリを庇うような位置に立ったのだった。 困惑と訳の分からない感情を胸に、無意識にキラを一身に見ていた敵であるはずの少年達は、そのことにも気付かない。 意識が全てキラに向かっているのだ。―――――本当に、それがどうしてかはわからないらしいが。 睨むように、しかしわずかに懐かしむように此方を見る少年達に苦笑して、キラは静かに口を開いたのだった。 「返さない。そして君たちも、ジブリールには帰してあげないよ。」 と。するとスティングたちは驚いたように息を呑んだ後、すぐさま武器を手にとって「ならば」と言う。 「ならば、実力行使するまでだ。」 自分達を帰さないと言うのは、どう言う意味なのか。 ステラを返さないのは、彼女に何をさせたいからなのか。 何故、ステラは抵抗も何もせず、無防備に敵であるはずの奴らといるのか。 何故、敵であるはずの奴が自分達の名を知っているのか。 他にも、聞きたいことは山ほどあった。 だが、それを口には出さない。何故ならば、必要ないからだ。ココで聞いても、どうせこいつらはココで死に、自分達から関わりがなくなるはずだから。 此方は武器を手にとり殺気立っているというのに、目の前に居る青年は武器も取らずに困ったように笑うだけである。 武器が無くても戦える自信があるからか。それとも、自分達なんて武器なしでも捌けると、侮っているのか。 どちらにせよそれが馬鹿にされているように感じ、スティング達は更に殺気を強めたのだった。 そして、その状態に入って、何分が経過した頃だろうか。 不意に青年が苦笑を深め、静かに口を開いたのだ。 「いつまで、そうしているつもり・・・・・・・?」 そう、アウルもスティングも殺気立ってはいるものの、今居る位置から動こうとはしないのだ。武器を投げようともしていなかった。 それはただ単に、キラに隙が無いからではない。 何故か、彼に武器を向けることを嫌がっている自分が居るのだ。 ステラはそんな仲間達の内心が手にとるように分かってしまい、キラの服をちょこんと握り、小さく言ったのだった。 「覚えているの。・・・忘れてるけど。だけど、わかるの。忘れているけど、わかるの。」 冷たい研究所、さめた感情。 キラが自分達の前に現れるまで、エクステンデットと名づけられた子供達の世界は、すべて冷たい物で覆われていた。 だがキラは現れ、不思議な魅力でその冷たい物を溶かしてくれたのだ。 初めて会った時からわかっていた。本能で悟っていたのだ、彼は自分達を温めてくれる人だと。 そして、本当に彼は自分達の心を温めてくれた。嬉しいという感情、楽しいという感情・・・・いろいろな温かい物を、キラはステラ達に与えてくれたのだ。 それは、彼らにとって初めての経験。 初めて出会った、自分達を温めてくれる人。無償で自分達を慈しんでくれた人。 果たしてそんな人物を、完全に忘れることが出来ようか・・・・・・・・? 彼以外、そんな感情を向けてくれる人が居なかったから尚更、彼の存在は自分達の深い部分に根付いていたのだ。 「本当に大切な人なの。・・・・私達にとって、キラは。忘れていても、傷つけたくなんかないって、思っちゃうの。」 キラはそのステラ独特のあいまいな言葉を、驚いたように聞いていた。 しかし実はすでにそんな気がしていたのだ。自惚れたくなかったから、気のせいだと思っていたけれど。 でもやはり、こうして本人の口から聞けたのだから、本当のことなのだろう。 そして、それを知ると同時に産まれたのは、本心からの・・・・・歓喜。 キラは自然と頬の筋肉が緩み、ステラの髪を数度撫でてあげた。 彼女を見る彼の瞳は、これ以上ないほど穏やかで、優しい瞳。 そしてそれは、未だ行動を起こさない少年達にも、向けられたのだった。 すでに日は沈みかけている。薄暗い景色の中、目に入るのは紫の光。 自ら発光しているようにすら見えるそれは、とても懐かしい、優しい光で。 アウルはそれを受け、ついに耐え切れなくなり武器を握る手から力を抜いたのだった。 そしてそれが地面につくと同時に、力なく膝も地面につけ、あいた両手で顔を覆う。 スティングは漸く動いた足で二歩三歩と後ずさり、背中が木の幹に当たるや否や、アウルと同じように体から力が抜け、緩慢な仕草で根元に腰をおろしたのだった。 そして、やはり彼も、片手で自らの顔を覆うのだ。 彼らの指の隙間から止めどなくこぼれるのは、小さな雫と、わずかな嗚咽。 キラは慈しみの篭った目で彼らを見、ステラの指を優しく外してアウルの前に腰を下ろす。 そして彼をぎゅっと、力強く抱きしめたのだった。 「大丈夫だよ。僕が解放してあげるから。これからはずっと一緒だ。」 そう耳元で呟くと、彼の髪も優しく撫で、立ち上がって今度はスティングの元へと向かう。 そして彼も同じように、力いっぱい抱きしめたのだった。 その後泣き崩れていた少年二人を促し、キラたち一行は今日の宿へと入っていった。 その際、こんなに人数が増えたのに、宿のランクが落ちていないとはいったいどう言う懐を持ってるんだ、とシンがげんなりと呟いたのはまた、別の話。 ―――――そして、翌朝。 「おはよ〜っ! キラ!!」 「おはようさん」 そう元気に言いつつ二人部屋から出てきたのは、昨日までは確かに敵だったはずの人物その2その3。 昨夜の内にキラの薬を飲み、また催眠療法を受けていた彼らは、薬の副作用もすっかり抜け、しかも完璧に記憶を取り戻していたのだった。 キラは立て続けの慣れない催眠術発動で精神的に疲れていて、珍しいことに未だ寝ぼけ眼だったが、そんな彼らを見て優しく微笑んだ。 「おはよう、アウル、スティング。もう少ししたら皆来るから、それまでご飯は待っててね。」 と、ついでになんだかめちゃくちゃお母さんっぽい言葉を吐くと同時に、まるでその言葉を待っていたかのように部屋のドアが叩かれたのだった。 そして、いつものように返事を待たずに開けられたドア。 そこにはカガリと、その後ろにステラが立っている。 「おはよう、カガリ、ステラ。」 「おはよう、キラ! ・・・と水色と緑色!!」 「おはよう。・・・カガリ、アウルとスティング・・・・・。」 そんな言葉とともに彼女達は入ってきて、カガリはアウルとスティングの前に立ってにかっと笑った。 「そうか。おはよう、アウルとスティング! 私はカガリだ!」 「え、あ、お、おはよう・・・・・。」 「おはよう、ございます・・・・・・・・?」 いつになくハイテンションなカガリの挨拶に、アウルとスティングは目をぱちぱちさせて驚いている。 その光景に、キラは気付かれないようにクスリと笑った。 あれはカガリなりに気を使ってのこと。自分やステラとの会話から、カガリは多分スティング達が何気ない会話というものに慣れていない事に、気付いているのだ。 ジブリール内で人として、しいては子供として扱われることの極端に少なかった彼らは、こんな風に打算も何もない、ただの挨拶をあまり知らないらしい。 だからいつもより一層明るく軽快に言葉を発し、彼らの警戒を解こうとしているのだ。 キラはすでに慣れているからいいとして、カガリと名乗るこの女性は“いい”のか、“悪い”のか。 ―――つまり、心を許しても大丈夫なのか、と問うような視線を向けられ、キラはにっこり微笑んで言ったのだった。 「大丈夫だよ。カガリはすっごくいい子だから。」 王族として産まれただけあって、彼女は人の感情に機敏であり、芯の通った考え方が出来る人物だ。人柄もとてもいいし。 スティング達にとっても、プラスとなる人物であろう。 にこにこ笑って自分達を見るキラと、すでにカガリに懐いているらしいステラを見、少年達も無闇に彼女を警戒することを放棄したのだった。 と、そんなとき、再びドアがノックされたのである。 そして現れたのは、残りの一行であるシンとレイ。 レイはすでに自然なものとなっているさわやかな微笑を浮かべつつ、「おはようございます」と誰とはなしに言う。 それに返し、キラはシンがブッスーとした顔で何も言わないのを怪訝に思い、レイに尋ねたのだった。 「何、シンどうかしたの?」 「・・・・あぁ、昨夜貴方に構ってもらえなかった上に、ステラのみならず彼らにもキラさんを取られるとでも思ってるんですよ。・・・・要は、拗ねてるだけです。」 と。キラはその言葉を聞き、困ったように、しかしどこか嬉しそうに笑いながら、「そう」とだけ答えたのだった。 ちなみに。昨夜は宿入りしてからすぐにキラはアウル達の治療に取り掛かり、終わったら終わったで疲労の為直行で床についてしまい、レイの言う通りシンに構う暇が無かったのだ。 ついでに言うと、だからスティング達もカガリ達と会話できなかったため、実際にはこれが初対面だと言えよう。 それはさておき、自分を見つめる元部下の少年達の視線を受け、キラは少し体をずらして、新しく部屋に入ってきた少年達を彼らに紹介したのだった。 「こっちの金髪の子はレイ。そしてあっちの赤目の子の名前がポ「シンだシン!!」 ブーたれながらもしっかりキラの言葉を聞いていたシンは、言葉の続きが安易に想像でき、慌てて遮るように叫びつつ名乗ったのだった。 だがしかし。 流石はキラの元部下というべきか・・・・・・・・戻ってきた言葉はシンの予想を大きく裏切るものであったのだ。 「え〜っと? よろしく〜レイと、死んだシン!! めっずらしい名前だね〜。ってか生きてるよね、あんた?」 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、う、る・・・・・」」」 その言葉に、キラとカガリ、そしてスティングの腹筋は激しく痙攣しだしたのだった。 息も絶え絶えにアウルの名を呼び、冗談なのか本気なのかよく分からない彼の肩を、レイは昔のように無表情に戻ってポン、と叩いたのだった。 が、しかし。 何かを言おうとして口を開いたのに、それはすぐに閉じられてしまった。 しかも微妙に彼の肩も震えていることは、明々白々の事実である。 そして、皆が皆して無言で笑いを堪えることによって出来た不自然な沈黙に、徐にステラの呟きが響いたのだった。 「死んだシン・・・・・? ポチ、じゃないの・・・・、名前・・・・?」 そんな、絶対に確実に100%本気で言っているステラの言葉を聞いた次の瞬間、不自然に静かだった部屋に割れんばかりの、それこそ近所迷惑としか言えないような大きな爆笑の合奏が響き渡ったのだった。 シンはそんな周囲の反応を涙ながらに見て、「マユ・・・・お兄ちゃんもうヤだ・・・・・」とかなんとか呟いたそうな。 そんなこんなでその日もまた朝早いうちに出発し、それからいつの間にか5日間経過したのだった。 「・・・・・・いや、いくらなんでも話の展開が早すぎじゃねぇ!?」 「いいんじゃない? それだけ平和だったってことでさぁ〜。」 「平和か!? これは平和なのか!?」 一週間近く寝食をともにしたおかげか、今では シンとアウルは常人では目で追えないような速度で互いに攻撃を仕掛けつつ、木々を渡ってキラの後に続く。 最近では元ブルーコスモスであるアウル達と互角に戦えるようになってきたシンとレイは、初日で体験した意識を失うほどハードな登山を、今度はその半分ほその時間で、こうして戦いつつ易々と上れるようになった。 自分の成長を喜ぶ反面、人間やれば出来るんだ・・・・・! と泣き笑いで呟いたのはいつのことだったか。 そんなことを思いながらもアウルと交戦していたシンは、不意に背後に気配を感じてはっと息を呑んだ。 そしてその次の瞬間。 「隙ありーーーー!!」 という、笑い混じりの声が響き渡ったのだった。 同時に迫る苦無。それを難なくかわし、シンは背後に忍刀を振るう。 それもまた易々とかわされた事に舌を打つと、次にシンはニヤリと笑って、今度はスティング相手に攻撃を仕掛け始めたのだった。 アウルはそれを追おうと足を踏み出しかけたが、すぐにそれを背後へと回し、後ろに立つ人物に蹴りを入れようとした。 しかし、やはり易々と避けられる。 レイはそれににやりと笑い、今度は苦無を取り出してアウルに迫っていったのだった。 「今日も元気だね〜、少年達は・・・・」 「キラ、お前いったい幾つだよ・・・・・・。」 通常の忍を職業にしている者ですら追えないような速度で走る彼らに、常人であるカガリがついていけるはずもなく。 彼女は最近常にキラに背負われて、こうして高速で移動しているのだった。 ステラは眠そうにあくびを噛み殺しつつ、キラの後を静かに追っている。 カガリはその光景になんだか和みそうになりながら、「しかし」といって切り出した。 「ここ最近、まったく刺客が現れないよな。・・・・なんでだ?」 「ステラ達が僕らに加わったことを知って、あっちも迂闊に動けない状態なんだよ。」 そう言って、山頂で足を止めたキラは、徐にカガリをおろしてにっこり笑ったのだった。 「見えるかな、あそこ。」 そう言うと同時に指を指すのは、山頂から見えるジュール王国の国境。 カガリは持ち前の視力の良さでそこに銀色の光を発見し、「おぉ!」と歓声を上げたのだ。 ステラは彼らほど視力がよくなかったので首を傾げ、カガリの服の裾をちょんちょん引っ張る。 すると彼女はどこか嬉しそうに言ったのだった。 「ジュール国王が迎えにきているぞ。」 と。じゃれ合いながら追いついた少年達4人もそれを聞き、「やっとか」と感慨深く呟く。 そしてキラは。 気配を殺して徐々に自分達に近づいてくる、不特定多数の何やら物騒な気配に、にやりと笑いをこぼしたのだった。 (あとがき) ありえないほど長くなってしまった・・・・Uu しかも展開が急の癖に話進んでないしっ! 本当は今回でステラ達生存の謎と、イザークの登場を書きたかったのに!! ついでに戦闘ももっと書きたかったのに!! ぶっちゃけメモ帳には今回の話、たった3行で書かれていた話だったのに!! チクショウ、次回もまた急展開でいってやる!! |
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