「イザーク! ディアッカ、ニコル!!」


はしゃいだように声を張り上げたキラを、シンは少し驚いたように見ていた。

彼の視線の先には、なんとも目に鮮やかな三人組が立っている。

彼らも一斉に喜色を浮かべて「キラ!!」と言うのに、彼も嬉しそうに笑い返すのを、シンは複雑な表情で見ていた。

 なぜなら、いつだってキラがシンに向ける表情は大人びいていて、こんな風に歳相応と言っていい表情をあまり見せることは無かったから。


あぁ、この人たちは“友達”なんだな、と自分との違いを再確認させられたようで、何だか面白くない。


 自然とブーたれた表情になってしまったのを、スティングがニヤニヤしながら軽く咎めたが、シンが表情を改める事はない。

シンは、スティング達と違って見返りを求めずにただキラを慕うなんてこと、到底できない。

もっと頼って欲しいし、自分を一番に見て欲しい。それにキラの“全て”をさらけ出して欲しいとも思う。

金髪の青年に髪をかき混ぜられて、邪険に、でも嬉しそうにそれを払いのけるキラのあんな顔は、シンはこの時初めて見たのだ。


 面白くなさそうに自分達を置いて談笑する彼らに、シンは段々苛々してきた。

悲しいかな、今回も思っていることを全部無意識に口に出しちゃってるシンをレイは呆れたように見て、徐に彼を引き寄せて言ったのだ。



紫鬼 〜第拾陸話〜





「キラさんは、海みたいな人だぞ。」

「は?」


またいきなり何を言い出すのだ、と怪訝そうにレイを見ると、何故かステラも寄ってきて「そうだね」とか言っている。


「いや、どう言う意味だよ。」

「多面性があって、奥が深く、謎も多い。そして広く、何よりも強い。」

「・・・・・・は?」

「・・・・・キラキラ光って、綺麗だし・・・・。」

「いやステラ、それ関係ないし。」

「・・・本質は液体だからな、つかみ所もない。」

「要はアノ人は謎のままで良いんです。全てを知りたいなんて、アスランやラクス姫並に一緒にいなくては無理ですよ。」


ん? と不意に加わった聞きなれない声に振り向くと、そこにはあまり年が違うようには見えない少年がニコニコ微笑んでたっていた。

 彼はゆっくりとシンに近づくと、ふふふ、と笑いながら言ったのだ。


「僕はニコル。ジュール付きの忍です。で、キラさんですけどね。アノ人の場合、自分よりも精神年齢が低いと感じる者は、全部庇護対象なんですよ。だから君には頼ることなんてできませんね」


さり気なく、天使のように柔らかな微笑で言われた言葉を、数秒理解することが出来なかった。

 そして理解すると同時に、シンは猛然とニコルに飛び掛ろうとした・・・が、レイに羽交い絞めにされて尚且つ「そう言うところが幼いんだ、お前は・・・」などとため息混じりに言われてしまえば、シンが言い返すことなど出来るはずもなく。

 結局きのこを生やして端のほうでいじけるしか無いのである。

 シンは耳と尻尾を垂らして床にのの字を書き、ステラはそんなシンにポン、と肉球がついた猫の手を乗せて慰めてやったり。


「ううむ、和みだねぇ」


ディアッカはそんな彼らを見て、眼を≡←な感じにしてほのぼのと見ていた。

 イザークとキラも微妙に和みながら、「ニコルは何だかやけに攻撃的だね」と言うと、ディアッカがニヤニヤしながら答えてくれた。


「“弟ポジション”を取られるとでも思ってるんだろ。」

「何それ」


キラがケタケタ笑いながら尋ねると、ディアッカは肩をすくめて「さぁな」と言う。

 それにまた笑って、キラはニコルに声を掛けた。


「ニコル! 大丈夫、シンは弟と言うよりポチ(犬)だから〜!」


その言葉に、またもポチは衝撃を受けてきのこを群生させ、そんなポチにステラはまたもポム、と手を乗せてやったのだった。

その内アウルもステラに協力し、二匹(猫)掛かりでポチ(犬)を慰めるその光景の、なんと和やかなことか。


思わず「これだから止められないんだよな・・・・」などとうっとり呟いてしまったキラに、イザークは汗の滲んだ顔で「止めてやれ・・・・」と進言してみたが、聞き入れられたかどうかは微妙なところ。


 それはそうと、とにかくいつまでもこんな所で話している訳にも行かないな、と思い、キラは道の端でアニマル劇場を繰り広げていた三人も含めて呼び出し、自己紹介を簡単にさせてから歩き出したのだった。


――――だが、行き先はジュール王城ではない。

どんどん人通りが少なくなっていく道を選ぶキラに、イザークは怪訝そうな顔をしたが、キラが微笑を浮かべていたので結局何も言わなかった。

しかしそんなことにも気付かない憐れな少年がいる。

 言わずもがな、相変わらずきのこを生やして耳を垂らしているポチである。

キラは彼がそろそろ憐れになってきて、さり気なくポチの背後に回って耳元で言ってやったのだ。


「大丈夫。これでも僕は君を結構頼りにしてるから。頑張って早く成長して、僕が甘えられるような人物になってね。」


優しく穏やかに語りかけると、ポチは面白いほどの速さで耳をぴんと立て、尻尾をせわしなく振り、「はいっ!」と元気良く返事をしたのだった。

・・・・・・一応言っておくが、ポチポチ(犬)ではあるが、尻尾なんてモノはない。全部当人達以外の幻覚ではあるが、もしかしたら皆が皆見えていたならば、それは本当に実在するかもし(してたまるかぁ!! byポチ)

 そうして、闘志に燃える赤い目を向けられ、それににっこり微笑み返してからキラはカガリの隣に戻り、ニヤリと笑って言ったのだ。


「ふふふ、餌付け完了・・・・・・!」

「キラ・・・・・・・・・」

お前、今すっごい悪女ヅラしてるよ、姉ちゃんなんか悲しい。


そう、カガリが内心で呟いたかどうかは謎なトコロである。


「で、ニコル。ちょっと聞きたかったんだけどさ。」

「何でしょう?」


割と状況が落ち着いてきたところで、キラはにっこりと笑いながらニコルに聞いてみた。


「僕があの山に入ってから、君の部下は僕らのこと張ってた?」

「張ってましたよ〜。」


にこにこにこにこ。


――――何故彼らはこんなにも笑顔が怖いのだろうか・・・・・。


周りにいた者達全員は一斉に顔を青くしながら、彼らがする会話を聞く。


「じゃぁ、気付いたかな?」

「えぇもちろん。一悶着あったみたいですよ?」


そう言われて、怪訝そうな顔をする者多数。

だがその中でも、いち早くレイが異変に気付いたのだ。


「! なんだこの人数は・・・・・・・!!」


行き成り目を見開いて呆然とした声を上げたレイに、アウルは怪訝そうに声をかけた。


「なんだよレイ、何か・・・・・・ぁあ!?」


今度はアウルも気付いた。ついでに他の少年達も気付いている。

気付いていないのは、一応常人の位置にいるディアッカとカガリだけだろうか。

イザークも鼻を鳴らし、「こざかしい」などと言っている。


それから一気にぴりぴりとした緊張感漂う空気になったのを悟り、カガリは居心地が悪そうに尋ねてみた。


「キラ? 何が起こってるんだ?」


するとキラは苦笑だけ返して、人っ子一人いない広い空間にたどり着くと、漸く一行を振り返って言ったのだ。


「手は出さないでね。ちょっと時間稼ぎだけして。」


それに了解、と頷いた少年少女たち。カガリとディアッカは未だ状況を把握できていない。

キラは人差し指を唇に置くと、微笑んだまま不意にカウントしだした。


「5、4、3、2、1・・・・・・来たね。」


そして、彼のカウントが終わるや否や、辺りに広がっていた穏やかな風景は、一変して黒い物体に埋め尽くされたのである。


「な・・・・・・・・・っ!」


カガリも思わず声を失ってしまった。

辺りを埋め尽くすその黒い物体の正体は、皆一様に青い鉢巻を身につける・・・・黒装束の集団であったのだ。

数も二十や三十ではない。優に千人はいると予想して構わないだろう。


「あれ、意外に少ない・・・・・・。」

「少ないのか、アレが!!?」

「だって俺らもっと多いの相手したことあるしさ〜。死にかけたけど。」


などと、殺気でそれらを牽制しつつも話す少年達に苦笑してから、キラはふと考え込んだ。


「でもやっぱり多いかな・・・・・・・。」


この場にいるキラ以外の者達が持つ武器は、主に単体攻撃専用の物。

はっきり言って複数を一気に屠る武器自体が流通していないこの時代で、この状況は少し苦しい物だろう。

いくら皆が一騎当千と言えど、相手もまた鍛えられた忍。

こんなに敵が多いと、絶対に怪我人が出るはず。

だがそれは決して好ましい事ではないのだ。

この場に居るのが大して思い入れの無い者ならばこんな事も考えないが、しかし現在実際に大勢の敵に囲まれているのは、随分と思い入れのある者達ばかり。

“失う”ということが半ばトラウマとなっているキラだからこそ、彼らに傷が付くのを見たくはないのだ。


そんな風に考え込んでいる彼の様子に気付いたイザークが、訝しげに眉根を寄せてキラに問うた。


「キラ? なんだ、どこか変なところでもあったのか?」


と。しかしキラはその問いかけに「う〜ん・・・」と曖昧に答えるだけで、徐に腰のポーチから手袋を取り出したのだった。

 そしてその、ベルトのついたなかなか洒落た黒い皮の手袋を装着しながら、あらぬ方向に顔を向けたままに言う。


「僕さ、最近運動不足なんだよね。」


 一応、それも事実だ。

シン達と行動を共にするようになってから、キラは個人で力量を発揮するような仕事はしていない。

 しかもずっと彼らのペースに合わせて、自分のペースで体を動かしていないのだ。


更には、ザラを発ってから2、3日は自分もシンたちに向けて苦無投げ等をしていたが、アウル達が新たに旅の仲間に加わってからは、ずっとシンたちの育成を彼ら自身の訓練と兼補させていたお陰で、苦無投げすらほとんどしなかった。

 刺客が現れることもなかったし・・・・・・まぁ、連日カガリを負ぶって山を駆け上りはしたが、そんなものは忍の運動とは言えないのである。


「だからさ。」


キラは手首のベルトもしっかり締め、何度か手のひらを開閉させた後、漸くイザークに視線を戻して言ったのだった。


「僕一人にやらせてくれない?」


その美しい顔に浮かぶのは、どこか子供じみた、いたずらっ子のような笑み。

イザークはその表情に呆れ、「お前な・・・・・」と一応咎めようとしたが、それは不発で終わった。

何故ならばキラが再び口を開いたから。


「それにさ。」


そこで一旦止めて、今度は苦笑を浮かべて続ける。


「君も直接見たことはないでしょう? 僕の名の“由来”を。」


確かに、キラに仕事を依頼する時は大抵彼一人でその仕事をこなすため、イザークも、もちろんディアッカも、キラの戦闘を見たことは無い。例外的にニコルだけがその力の断片を垣間見たことはあるが。


しかしみすみす命の危険を冒す必要も無いだろうと、イザークはやはり却下しようとする。


だがそれも、キラが半眼で言い募った言葉に、不発で終わってしまったのだった。

「ちまちま戦ってたら逃げられるし、こっちだって怪我するし。これからは大きな戦がある・・・・・・・し? 戦力は温存しておきたいでしょう? だからニコル、隠れてる君の部下も出さないでね。」

「・・・・・・わかりました。」


渋々ながらニコルが了承したのを、イザークが咎めるように彼の名を 呼ぶ。


「ニコル!!」

「イザーク、心配なのも分かりますけど、キラは大丈夫です。それに、どの道彼には五ヶ国同盟の忍達をまとめてもらう必要があります。その為にはまず力を示さねばなりません。
・・・・・残念ながら、ジュールの忍達はキラの戦い方を知らないんです。とりあえず今のうちに力を示しておけば、後がぐんと楽になりますし。
運のいいことにここは国境付近。張っている忍も沢山います。いい機会なんですよ?」

「うん。ニコルの言うとおり。」


ニコルとキラの波状攻撃に、流石のイザークも言葉に詰まった。

それは、イザークとて考えなかったことではないのだ。

だが、理性はキラを危険に陥らせることを拒絶する。

そんなイザークの優しさに苦笑して、キラは静かに問うたのだった。


「イザーク、僕が信じられない?」

「いや、そんなことは無い。」


すぐさま返って来た否定の言葉に嬉しくなりながらも、どうやら時間稼ぎも限界がきたようだ。

 敵の数人が動いたのを目の端で捉えて、キラはまた苦笑した。


「なら、見てて。突っ込まないから、死ぬ確立も低い。」


そう言うや否や、キラは徐に片手を上げ、それから勢いよく振り下ろした。

途端に漂う濃い血の匂い。その匂いに眉を顰めながらも、キラは優雅に一歩下がって、何処か芝居がかった仕草で一礼し、微笑んで言ったのだ。


「『鬼』と呼ばれしその由来、とくとご覧あれ。」


そう言うと、イザークは憮然としながらも頷き、ニコルは「キラかっこいい・・・・!」と目を輝かせて賞賛し、ディアッカはそんなニコルを引きつった顔で見ている。

三者三様の反応に笑いながら、キラは応戦し様と足を踏みかけていた少年達の前に回りこみ、 咎めるように言ったのだった。


「シン達も、ダメ。今まで散々体動かしてきたんだし、そろそろ僕にも譲って。」

「「えぇ〜!?」」


大人しく苦無を引いたのはシンとアウル以外の三人。イザークを襲おうとしていた忍をそちらを見ずに切り捨てて、キラは半眼で二人を見、ぐずる彼らを見下ろして言う。


言うことを聞け

「「はいぃ!!」」


そうして少年達も説き伏せ、邪魔者がいなくなったキラは、かいてもいない汗を拭う仕草をし、爽やかな笑顔を浮かべて言った。


「クスッ。容赦はしない。」


だが、爽やかな笑顔は一瞬だけ。すぐさまそれは嫣然としたものへと変わり、それに少年達が呆然と魅入っている間に、キラの姿は目の前から消えうせたのである。





――――一気に距離を詰め、なにやら指示を飛ばしていた男の背後に忍び寄る。

それに男が気付く前に、キラは彼の目の前にいた7、8人の黒装束の首を一気に鋼糸で刈り取った。

そして、目を見開いて背後を振り返った男の首には、にっこり笑って蹴りをお見舞いしてあげたのだ。

変な方向に曲がった首をキラが確認することは無い。

その代わり背後から冷静に苦無を投げてきた男がいたので、振り向きながらその投げられた苦無を指で掴み、そのままの勢いで投げ返してやったのだ。

 男の額に苦無が刺さったが、キラはそれも確認することはない。


1分と満たないうちに見せられたそのキラの妙技に、思わず固まって我目を疑ってしまっている者達がいた。

それがあまりに多くて、キラは「うっわ、馬鹿面」と苦笑しながら、両手を交差してから一気に振り下ろす。

ついでに糸に気をつけて体を一回転させてみれば、あら不思議。

二箇所で5、6人の忍が一塊に縛られ、あまりの出来事に呆然として硬直しているのだ。


 仲間がそんな風にされていても、他の者達はそれを助けることなくキラへと攻撃を繰り出す。


自分へと向かってきた苦無の雨を跳躍することで避け、空中にいるキラにまたも向かって来た苦無は、地上にいる数人へと繋がる鋼糸をたぐり寄せることによって方向転換して避けて見せる。

その反動で片手に繋がっていた数人が輪切りにされてしまったが、気にしない。


ついでに残ったもう片方の忍の塊は、着地した時に更に追ってきた飛び道具の身代わりになっていただいた。

それらの血を浴びないように飛び退きながら、手首を捻ってついでにとどめを刺しておく事を忘れない。


両手が自由になったので回転して糸を不特定多数に触れさせてあげれば、一気に周りから生きている物体がいなくなった。





 数分。たった数分だ。今では千人以上いたはずの黒装束は、過半数が赤い衣を纏って息絶えている。


嫌でも目に入るのは、かの人の鮮やかな身の動きと戦闘センス。


優雅に、まるで舞っているかのように人を屠る彼のなんと美しいことか。


 仔細な動きは早すぎて見ることは適わないが、無駄の無いあの動きや、妙技にしか見えない遠距離攻撃、ほぼ一瞬で数人を屠る彼は、疑うまでも無くこの場にいる誰よりも強いのだろう。


 しかし、禍々しいことをしているはずなのに妙に神々しく見えるのは何故なのか。

その美しい姿はまるで戦神のよう。まさに彼は闘神なのだ、とかなんとかもうかなり心酔している、様子を窺っていたジュール付き忍達。

“紫鬼”に目を奪われているせいでイザークやカガリといった要人達の警護もままならないほどに、ただ“紫鬼”を一身に見つめていたのである。


しかしそんな彼らを誰が咎めることができようか。

 咎めるべく要人達も同じくキラに目を奪われているし、そんな彼らに襲いくる忍達はキラがちゃんと遠くから苦無を投げて瞬殺しているのだから。


いつの間にか接近戦も多くなっていたが、イザークは何も言わない。むしろもっとやってしまえ、とかその小気味よい瞬殺加減を応援してしまいそうな勢いだ。


『・・・・っっっキラ(さん)、カッコいいっっっっ・・・・・・・・・・・・!!』


胸の前で手を組み、所謂乙女ポーズをした、キラに更に心酔してしまった年下(同い年の従姉弟含む)の少年少女達の合唱が、その場に怪しい響きを持って響き渡ったのだった。



「・・・・・うん、俺この場にいる一番の常識人という自覚のあるディアッカと申しますが。 この状況の何処を何からどう突っ込んで良いのか悪いのか・・・・・。」

「はいはい、グチグチ言わない!! いいんです、キラさんはキラさんでそんなキラさんが皆大好きなだけなんですから! 微妙に道を踏み外している気がしないでもないですが、キラさん実は根が白いからそれで良いんです!!」

「・・・・・・・・・・・言っていることわかんねぇよ・・・・」 「・・・・・・ちなみにお前は実は根が真っ黒・・・」

「何か言いましたか、ディアッカ、イザーク。」

「「・・・・・・いえ。」」


ジュール出身の3人が視線はキラに固定しつつも漫才をしている間、ありえない速さで全てを終わらせたキラに少年少女達が駆け寄り、ありったけの賞賛の声を彼に掛け続けた。


 キラは返り血の浴びていない体を代わる代わる抱きしめられながら、困ったように笑っていたのだった。







――――――――ところ変わって、戦闘の興奮も粗方冷め、王城の謁見室に通されたキラ・シン・レイの三人。

カガリは王城に着くや否や迎えに来たキサカに早々と国に帰され、ステラ達はニコルとお留守番である。

ココにはイザークとディアッカ、それとジュール王国の重役達とキラたち三人しかいない。

初めての政治的立場に立たされて緊張しているシンに、キラは微笑んで「密書を渡して」と促した。


 恭しく取り出した密書はディアッカの手によって開かれ、イザークが目を通してから重役達にも伝えられる。


「そうか、準備は整ったか・・・・・・。」


イザークは考え込むように目を伏せた後、重役の一人にザラへの食料援助の件を任せ、他の者達にも次々と指示を出していった。


そして、最後に。


「紫鬼、仕事だ。」

「応。」

「五ヶ国同盟国に召集を伝えろ。」

「了解しました。」


キラは優雅に胸に手を当て一礼した後、重役達が去っていくのを見届けて、徐にシン達に向けて言った。


「大陸を一周するからね、一週間はかかるよ。先にシン達はザラに帰って、アスランにジュールからの返事を渡して。」

「「えぇ!?」」


当然一緒に行く物だと思っていたシンとレイは、思わずすっとんきょんな声を上げてしまった。


「そんな! 付いていきますよ!!」

「ダメ。とばすから君たちじゃまだついて来れない。だからステラ達と一緒に戻って。」


シンの抗議はキラの真剣な眼差しに一刀両断されてしまった。

う〜と唸るシンと憮然としているレイに、キラは苦笑して続ける。


「あのね、君たちを信頼してこんなこと言ってるんだよ? 多分また追っ手がかかるし。それとも、期待に応える自信が無い?」


さっきのことを引き合いに出し、最後は挑発的に言えば、単純なシンはすぐに乗ってきた。

まだ納得しない様子のレイには「余った時間で鋼糸の使い方教えてあげる」と言えば彼も黙る。

ステラ達は一生懸命お願いすれば聞いてくれるし、大丈夫だろう。


そこまで考えて、キラはイザークを振り返ると、少し苦笑して聞いてみた。


「ところで王陛下? 今日は泊まっていってもいいですか?」

「もちろん。どうせ会談は3週間後だ。ゆっくりしていけ。」

「あんま無理するなよ、キラ。」


友人達から労いの言葉を戴き、キラは曖昧に頷いて、シン達を促して退出したのだった。





(あとがき)
最初の方でポチ連呼。多分太字にしたからその多さに気付いたはず。

今回のメインは、何を隠そうキラ様の戦闘。ちょっと・・・いやかなり長くしすぎたので、途中いくつか削りました。

ジュール三人組の話も楽しかった。何気スティングの存在感薄くなってしまったけど。

ところで、連合+ザフト。この5人がとっても仲良さげだったのが個人的にお気に入りv(笑

怒涛の旅も漸くおわりましたね〜。そして物語は本当に終盤に入りました。

たぶん後2、3話で終わる。

 



     
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