「ホントにこんなんで成功するんですか?」
キラの胡乱げな眼差しをうけて、バルトフェルトは自身満万にいった。
「大丈夫だと言っているだろう?狙いはお子様だ。僕が丁寧に指導してあげたんだから、絶対成功すること間違いなしだぞ」

 キラとラクスが複雑そうな顔をし、端で聞いていたAAクルー達のため息が重なった瞬間だった。


ところ変わって某路地裏にて。
「うえ〜ん…何処ここ〜!お姉ちゃ〜〜〜〜ん!!」

辺りにメイリンの涙声が響いていた。



知れれざる真実と信実3





 事の発端は艦の操作不能だった。
最新艦であるはずのミネルバが急に動かなくなったのだ。

 戦闘中で無かったのを不幸中の幸いとして、ミネルバは至急カーペンタリアに応援を頼んで艦の護送と運搬をしてもらったが、システムの回復に時間が掛かるというので、クルー達には街に下りる許可が与えられた。

 そして早速シン・レイ・ルナマリア・メイリンの四人は街におりて行ったのだった。
(ヨウラン達整備士一行は、やる事が山積みだとかで許可が下りなかった)

 しばらく繁華街を闊歩していた四人だが、メイリンが出店のかわいらしい小物に目を奪われて足が止まってしまい、前を行く三人において行かれてしまったのだ。
 メイリンは周りに知り合いがいないことにパニックに陥ってしまい、そこから闇雲に歩いてついに人気の全くないこの路地裏まで来てしまったのだった。

「ううう。お姉ちゃ〜ん…レイ〜……シ〜ン〜…誰かぁ〜〜〜」

メイリンが半泣き状態で更に足を進め、十字路らしき所に出ようとしたそのとき、

「わっ」
「きゃぁっ」

ろくに前を見ていなかったせいで曲ろうとしたところで人にぶつかってしまったらしい。反動でメイリンは道に尻餅をついてしまった。

「ご・・ごめんなさ…い…」
すぐに謝ろうと相手の顔を見た瞬間、メイリンの脳みそは活動を停止してしまった。

サラサラの茶色い髪の毛
大きなアメジストのような綺麗な瞳
小さな鼻
形の良い唇
それらが絶妙なバランスで配置されている綺麗な顔
程よい身長
痩せているように見えるけどぶつかった時の感触からして程よくついている筋肉。
ついでに困ったように笑うその笑顔!
ぱっと見でもわかる穏やかな雰囲気!!

(めっちゃ好み…!)←メイリン暴走中

「こちらこそゴメンね。ちゃんと前を見てなくて…大丈夫…?」

そう言って道に座りこんでいるメイリンに手を差し伸べる。

(きゃあああぁぁぁああああ!!!なんて運命的な出会いなの!?しかも紳士的!!)

 こちらをじっと見たままピクリとも動かないメイリンを怪訝におもってか、その青年はしゃがみこんでメイリンの顔を覗きこんだ。
 そして至近距離で言う。

「大丈夫…?」

(吐息が…!ああ、なんて優しいの…もう、だめ……)

それっきりメイリンは意識を失ってしまった。

それに驚いたのはメイリンとぶつかった青年―キラだった。
「えぇ!?なんで??」
こんな時の対処法なんて教わってない!!!そう叫ぶのを必死にがまんして、キラはメイリンを持ち上げると先ほど見つけた公園に運んでいった。いわゆる…お姫様抱っこというやつで。


―同時刻・AA内ブリッジ―

「キラ君…大丈夫かしら…」
マリュ―の心配そうな声がブリッジに響いた。

「心配ないない。キラは根っからの天然タラシだ。ポイントさえ抑えてれば失敗することなんてないって。」
それに対しバルトフェルトはお気楽に答える。

 前半の言葉にはクルー全員が賛同できるが(ぇ)、今回のバルトフェルトの考えた作戦はあまりにも無謀すぎだ。

「それにしたって…いくら成功したら一番安全と言ったって、こんな強行策…成功するのかしら」
「あのキラだぞ?ちょっと無理があるんじゃ…。」
前者がマリュ―、後者がカガリの言である。

 カガリは、何気なく自分が言った言葉がこんな結果になるなんて…とあたまを抱えたくなる気分だ。

「確かに…ミネルバのシステムを荒らして強制的に足止めして若い子をおびき出してたらしこんでミネルバからアスラン・ザラを呼んできてもらうなんて…。確かに安全ですけど…なんか無茶ですよ…」

とノイマンが言う。そう。今彼が言った作戦(?)こそが、今回のキラの任務であるのだ。
 これを行うのがディアッカ辺りならばまだ納得できる。しかし今回実行するのは「あの」キラだ。確かに容姿は特上だが、性格上無理があるのでは…と皆が危惧しているのだ。

 しかしそんな心配を吹き飛ばすようにラクスが言う。
「大丈夫ですわ。キラはやるときにはやりますから。」
と、微笑んで。

「……………………………ラクス様」
「わかっていますわ。バルトフェルト隊長。これが一番安全策だということは。ただちょっとおもしろくありませんけれど。」

 あくまでラクスは微笑んで言っている。例え目が笑っていなかろうが、周りの空気が一気に氷点下まで下がろうが。

 クルー達はそっと目を伏せて切実に願った。

(キラ君…早く帰ってきて…!)


その頃そのキラといえば。

「う〜ん…。」
「あ、起きた?」
「え…?私…」

気を失ったメイリンに膝枕をして公園のベンチに座っていた。ようやくメイリンが目を覚ましたのでこれで一安心、と思ってメイリンの視界を遮っていた濡れたハンカチを取ってやる。

「あ…!」

 するとメイリンはようやく今の状況―キラに膝枕されてる―がわかって、あわてて立ちあがる。
キラはその一連の動作を穏やかな顔で見守っていた。
それに気付いたメイリンは顔を赤くしてお礼を言う。

「あの…!ありがとうございました!」
元気のよいメイリンの言葉にキラは微笑ましく思って笑って答える。

「どういたしまして。元はと言えば僕が悪いんだし。具合は大丈夫?」

(きゃぁぁぁああ!!かっこかわいい!!!しかも膝枕されてた!!膝枕!!)
メイリンは内心の動揺を押し隠して(隠し切れてない)真っ赤な顔で返事をする。
「はい!大丈夫です!!…あの、お礼と言ってはなんですが、あそこのカフェで一緒にお茶しませんか?もちろんおごりますので!」

 この機を逃してなるものかと、メイリンは必死になって近くのオープンカフェを指差してお誘いする。

もちろんキラにとっては願っても無い事なので、素直に頷いた。

「じゃぁ、いきましょう!!」
頷いたのをみたメイリンはパッと顔を輝かして、嬉しそうにキラの手をつかみ先に立って歩きだした。

 オープンカフェにつき、お互いの名前を名乗り合い、なぜあんなところにいたのかとキラに聞かれて素直に「友達とはぐれちゃって迷子になりました」と言ったら「後で一緒に探そうか」と返されたのでメイリンは非常に舞い上がっていた。
 そのまま穏やかな時間が永遠に続けばいいと思いながらも他愛のない会話をしていると、ふいにその穏やかな時間は終わりをつげた。メイリンの前方、キラの後方からかけられた声によって。

「メイリン!!!探したぞ!!!」

「シン!」

良く見るとシンの後ろにレイとルナマリアがこちらに走ってくるのが見えた。

 メイリンは慌てた。この後一緒に彼らを探し回るという建前でデートをするつもりだったのに!もっと一緒にいられるはずだったのに!と思ってシンに「来ないで!」と言おうとしたその時。

「メイリン。ここでお別れ…かな?」
とキラが少々見上げるように寂しそうな顔(←バルトフェルトの指示通り)で言ったので。 メイリンはとっさに立ち上がりキラの腕を取って

「行きましょう!」
と笑顔で言った。

シン達はもうすぐそこまで来ていた。
あっけに取られたようなキラを促して、(←あまりにも予想通り動いてくれたので)
「わたし、もっとキラと一緒にいたいです!」
と、爆弾発言をした。近くまで来ていたシン達にもその言葉が聞こえて、シン達の動きが一瞬止まる。
その隙に反対方向へ走ろうとしたその時、

「ちっ」
とキラの舌打ちをする音が聞こえた。え?と思ってキラの方を振り向こうとすると、キラはメイリンを抱きしめて足でテーブルを倒し、メイリンともども体を地にふせた。

その行動にあっけに取られていたシン達三人とメイリンは、すぐにその理由にきづかされた。



『青き清浄なる世界のために!!!』



という掛け声とともに銃声が響いたことによって。






(あとがき)
ターゲット:メイリン・・・。だってこの子が一番騙されやすそうなんだもん。
けど彼女が路地裏でキラとぶつかったの偶然ということで。
 流石幸運の男・キラ!
(実はどうおびき出すか考えんのが面倒だっただけ)



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