『青き清浄なる世界の為に!!!』

その掛け声とともに銃声を轟かせる者たちなんて、一つしか思い浮かばなかった。

ブルーコスモス。

奴らは迷いも無く俺達に向けて発砲してきた。



知られざる真実と信実4





 気付かなかった。実際に発砲して来るまで、ブルーコスモスの存在に。レイですら気付かなかったのに今俺達の傍らで銃を発砲して奴らと応戦しているこの男は、いち早く気付き、メイリンを守った。
 何ものだ?と思いながらその男を観察する。ちなみに今俺達は傍らの男がしたようにテーブルを転がしてそれを盾として身をまもっている。
 ルナマリアとレイは携帯していた小型の銃で応戦している。俺は運悪くというか銃を忘れてきて応戦できないので、手持ぶたさ解消のためにこの男を観察する事に専念する。

 男は大変見目がよかった。年はアスランさんと同じ位だろう。顔のタイプは全然逆だけど。アスランさんは男らしいカッコ良さってかんじだけど、この人は中性的な美だ。横顔は女のひとみたいにきれいなのに、片腕にメイリンを抱いて銃で応戦している姿は非常に凛々しくかっこいい。……ん?片腕?

 「…片腕!!!?」

ついつい立場を忘れて大声を出してしまった。その声にレイとルナマリアも攻撃を一旦やめ、男の姿をみとめて驚きの表情を浮かべる。

 ブルーコスモスを見ると男の放った弾はすべて奴らの銃を持つ手をねらい、的確に戦意を削っていた。

 普通、銃は両手で撃つものだ。例え格好は良かろうが、腕に掛かる負担は半端じゃないし、反動のせいで狙いもさだまらない。それなのに男は難なくかつ的確に発砲している。見た目に反してかなりの腕と筋力をもっているようだ。

 それ以前に、この男が銃を携帯していたということの異常性に今更ながらに気付く。この男の民間人ではありえない点の数々に、三人同時に一つの仮説にいきついた。

この男、軍人…か?

 すでにその動きや容姿から、彼がコーディネイターであるということは確信している。軍属しているとするならば当然所属はザフト、しかもここに私服でいるということはこのカーペンタリア所属の軍人であるはずだ。

 しかしこんなに目立つ人物のはずなのにその噂も姿を見たことも一度もない。先ほどの察知能力といい銃の腕といい、実力主義の軍部ではかなり高い位置…少なくとも一般兵ではないはず。ならばカーペンタリアについた時点で紹介されているはずだ。
 なのにこの男の顔は初めて見るもの。

 そんな風に憶測が飛び交って軽く混乱しているシン達が見つめる中、弾を撃ちきったのか男が頭を伏せて弾の入れ替えを瞬時にした。その見事さに3人ともついつい(というかさっきからずっと)攻撃の手を緩めて男に見ほれていた事に気がついたのか、男が不意にこちらに視線を向けた。そして銃を持っていないシンを怪訝におもってか、短く問うた。

「銃は」
「ない」

それを聞いた男は目を見開いて、そのあと俺に銃を渡した。

 こちらの攻撃がピタリと止まったのをいいことに、ブルーコスモスの連中がすぐそこまで迫っていた。ふとレイ達の方をみると、弾切れだと目が言っていた。

男もそれに気付いて、俺達に指示を出した。

「動かないで、待機。ここからでるな、発砲するな。」

最後の言葉はまだ弾の残っている俺に向けて言ったようだ。
 だがそんな命令きけるか、と思い文句を言おうとしたが、結局言わずに終わった。男がどこからかナイフを取り出してブルーコスモスの中へ突っ込んで行ったからだ。
 みると連中の数は15,6人。とても一人で太刀打ちできる人数じゃない。あんなに銃を乱発したのにまだこんなにのこっているのか、と思いながら援護するために銃を構えた。

 そして出て行った男に銃を向けていたブルーコスモスの一人に向けて発砲する。レイの「やめろ!」と言う声が聞こえたが遅かった。俺はトリガーをひいてしまっていて、ブルーコスモスの男に向けて発砲したはずの弾は、味方のはずの男の腕に吸収されていた。

 俺が外したわけではない。男が銃弾の通り道とブルーコスモスの間に入ってきたのだ。俺が発砲する寸前、男はあのブルーコスモスから30メートル以上離れたところにいたはずだ。なのに弾が届くまでの一秒弱の間に、その30メートルを詰めてブルーコスモスに隣接していたのだ。
 その速過ぎる動きを俺は読めなくて、命令にそむいて発砲した結果、味方を傷つけてしまった。

 呆然とする俺をかばうように、レイがテーブルからはみ出した俺の体を引っ込めた。そうしながらも、レイも、俺も、ルナマリアもメイリンも、男の動きを目で必死に追っていた。

 男は腕を打たれたとは思えない動きで、ブルーコスモスの連中を体術で伸していった。密接してしまえば味方に弾が当たるのを恐れて発砲してこないのを見越しての行動だった。
 主に蹴り技重視の攻撃で、軽やかな動きなのにこちらまで空気を切る音が聞こえてくるほどの威力を持った攻撃により、一度攻撃が当たれば起き上がって来る者はだれ一人としていなかった。

 男は明らかに手馴れていた。一度の攻撃で必ず二人は倒す。銃弾も難なく交わす。先ほどの相手の行動を見越した動きといい、華麗な体術といい、銃の腕前といい。

 この場にいた誰もが男の正体を知りたがった。やはり軍人という線がさっき以上に強くなったが、なにか違和感を感じた。

 そして、気付いた時には男のほかに立っているものは居らず、彼はシンに腕を撃たれた際に落としてしまったナイフを回収して、こちらに戻ってきていた。

そしてフっと笑ってシンに向けて言った。

「命令違反は軍法会議ものだよ?」

と。そしてシンは男の腕を自分が撃ったことを思いだし、一気に血の気が抜けた。

 仮説が当たっていたとするとこの男は上司、または先輩である。そんな人の命令に違反し、銃をむけたのだ。
だから勢い良く頭を下げる。
「申し訳ありませんでした!!!」

「いいよ。それより大丈夫だった?怪我はない?」

 シンはその言葉を聞いて泣きそうになった。この人はやさしい。自分はバカだ。相手の力を勝手に決めつけて命令に背いて。兵士にあるまじき行動だ。
「なさけない…」

シンのそんなつぶやきが聞こえたのか、キラは穏やかに微笑んでいった。
「失敗を次に生かす事が大事だよ。ほら、いつまでもくよくよしてないで。」
シンの肩をぽん、とたたいて、どこかへ歩き出そうとしたのを、レイがあわてて止めた。

「待ってください。失礼ですが、あなたは?」
「…キラ」

その問いに名前だけを答える。しかしレイは食い下がった。

「軍関係者ですか」
男の言動からしてそうだと確信を持っていながらも、あえて訊いた。
 レイもキラと名乗る男に興味が湧いたのだ。もう少し話を聞きたい。そう思っての行動だった。

「…民間人と言っても信じてくれなさそうだね。…元軍人、だよ。君達と同じ赤をまとった事がある。それだけ。」

 嘘は言っていない。軍は軍でもザフトではなく連合軍であったり、わずか数時間しか赤い制服は着たことがないけど。

レイ達はそれに妙に深く納得してくれたようで、
「軍関係者なら私達の艦での治療が可能だと思います。銃創の治療は、こちらの方が街の医者よりも良い治療ができるはずです。」
と言った。

…軍艦に直接入るのか…。まぁ、いいか。

「では、よろしく」

その返答を聞いた4人がどこか嬉しそうに見えたのは気のせいだろうか。
 キラがそんなことを頭の片隅で思っていると、ルナマリアが腕の止血をしてくれ、それからミネルバに向けて歩き出した。

 ミネルバクルーの子供達は完全に誤解していた。キラがザフトの軍人である、と確信していたのだ。…キラがそう仕向けたのだが。

キラはそんな彼らの様子に苦笑して、経験不足だね、若い若い。と内心つぶやいていた。





(あとがき)
最後の台詞に
 キラ様、あなたいったいお幾つですか・・・?
と、自分で書いておきながら思ってしまいました。

 今回キラが銃とナイフを携帯していたのは、一応「護身のため」
という名目でバルトフェルトが持たせた、ということにしといて
ください。

 しかしなぜレイたちはすでに引退したのだと言ったのに銃をもっていた
キラを不信に思わないのか、という質問には、
「そりゃぁ、恋は盲目ですからv」(あ、引かないでくださいね)
とでも答えておきましょう。



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