「彼は今日から君達と同じカキュラムでこの学校に通う事となった。
私は忙しい。よって君達に彼の案内役をして欲しいのだ。では、よろしく。」


そう矢継ぎ早に言った教官は、逃げるように食堂を後にした。



奪われる翼4





あっけに取られてしばし呆然と教官の後姿を見ていたシンとレイだが、笑いを含んだ少年の声で我に返る。


「大丈夫?」


慌てて少年に視線を戻せば、彼は穏やかに微笑み、かわいらしく小首をかしげていた。


・・・・・・・・か、かわいい・・・!


その時、レイとシンの頭に駆け巡った言葉は、この一言だけである。

シンは慌てて赤くなりそうになった頬を抑え、少年に答えた。


「ああ、うん。大丈夫。ええと、アテナ・ヒビキだっけ?変わった名前だな。」


しまった。初っ端から相手の不興を買うような言動を取ってしまった!!

シンは言ってからすぐに後悔して顔を青ざめ、恐る恐る相手の顔を見てみると、アテナは笑って、「僕もそう思う」と返してくれた。

どうやら全く気にしていないようで、シンは内心ホッと息を吐きながらも、アテナともっと話そうとその話題に食いつく。

しかしここで注意して欲しいのは、それを全く顔に出していないことだ。曲がりなりにもエリート候補生、相手に弱く見られるのは理性が拒絶する。外野から見れば、彼は明るく、爆弾発言も気にせずに快活に話を続けているように見えるだろう。

まぁ、アテナもレイもシンの心情なんてお見通しなのだが。

しかしそれも表に出すことなく、アテナはシンとにこやかに会話を続けていた。


「自分の名前なのに?」

「うん。僕の名付け親ってほんと趣味悪いから。ちょっとうんざりするくらい」


そう、心なしか黒いオーラを漂わせ、誰かに言い聞かせるかのように言ったが、それについては大して気にせず、レイも会話に加わった。


「そうか?アテナ・・・いい名前だと思うぞ?」


ぴったりだ。と、いたってクールに言ってのけたのだ。

するとアテナはシンからレイに視線を移すと、「ぴったり・・・?」と訝しげに聞き返した。

レイは微笑み、先程ルナマリアから渡された紙の束を見せなから告げる。


「アテナ・・・知恵と戦と技術の女神だろう? このデータを見れば、誰もがぴったりだと言うさ」


その言葉に驚いたのはシンだ。当の本人は「よく知っているねぇ」などとのんきに言っているが、今レイはなんと言った?彼が言ったのは、つまり・・・


「この驚異的なデータは、あんたのか!!」

という事だ。よくよく見てみれば、アテナはエリート候補生の証である赤いアカデミーの制服を着ている。


今日来たというにも関わらず、トップ20に入るものしか着れない赤い制服を、この儚げなかわいらしい少年が。


そこまで思い至って、シンは根本的におかしい点に気付いた。

「あと、一ヶ月で俺達卒業するんだけど・・・。」

そう、時期的に今アテナが入ってくるのはおかしいのだ。しかも卒業までの一ヶ月は、後半二週間は卒業テストで埋め尽くされる。

つまり実際には、普通の授業が受けられるのは、残り二週間しかない。なのにアテナは入学(?)してきた。今入るくらいなら、来期を待って普通に入学した方が良いのではないか。

 シンが軽く混乱していると、レイがシンを冷静に見ながら、ぼそりと呟いたのだ。


「この成績じゃ、授業なんて受ける必要はないだろう。」


その言葉にシンは考えるのを止めた。

そりゃそうだ、と妙に深く納得してしまったためだ。

アテナはそんな二人の様子を仲良いね〜などと言いながら見ていたが、彼らはどこかちょっと抜けてるな、とも思っていた。

今手元にあるデータを見たものならば普通、気付く。これから専門的な教育を受けると言うのに、非常識な知識と技術を持っている少年の異常性に。
だが彼らは大してそれを気にしてはいないようだ。

アテナは内心あきれながらも、彼ら自身も入学当時から優秀だったせいだろうな、という結論に至っていた。

そんなこんなで、彼らが取り留めのない会話をしていると、急いで昼食をとて来たルナマリアが彼らに向かって走ってきた。

そして見覚えのある姿を見つけると、足を止めて口を覆い、甲高い声で呼んだのである。


「アテナ・ヒビキ!!!」


するとアテナが驚いたようにルナマリアに視線を向け、数秒後にやわらかく微笑んで、「さっき、すれ違った子だね」と言った。

覚えていたのか・・・! とアテナ以外の三名は驚いていたが、ルナマリアは歓喜で震えている。

そして、

「あぁ、はい!覚えていてくれたんですね!!私、ルナマリア・ホークって言います!どうぞ宜しく!!!」

と言って勢いよく頭を下げたのだ。

アテナはそれにまた驚いたが、「よ・・よろしく・・・」と少し引きながらも返した。


しかしそんなアテナの様子を気にしたりはせず、ルナマリアはまた足を進めて彼らに近づいていき、「ほら!あと講義開始まであと三分しかないわ!!」といって彼らを促した。
それに驚いて回りを見てみると、食堂にはもう、シンたち四人しか残っていなかった。

移動にかかる時間は約5分。状況のわかっていないアテナをすぐさま促して、走って次の講習先に向かった。







(あとがき)
短い・・・。
でもなんかきりが良かったので、ここで切らせていただきます。

スミマセン・・・!

ってかこの「奪われる〜・・・」読んでくれてる人いるのかな?
なんも反応が無いのにちょっち悲しくなる今日この頃・・・。




って書いたら一時間で複数の感想が返ってきましたよ。
ありがとうございます皆様!!あとがきも読んでてくれてたんですね!!(嬉泣

頑張るきが増えました!感謝!!



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