優秀な生徒が何百人もいる中、代表として、一人の少年が壇上に立った。 その少年がザフトの伝説のエースとまでいわれた人物の成績を、遥かに凌ぐ驚異的な結果を出して主席に収まり続けていた事は、既に周知の事実である。 その紫の瞳と両耳にある深い青のピアスが、彼の不思議な魅力を引き出していた。 奪われる翼7静まり返り誰もが壇上の少年に集中する中、彼は緊張の欠片も見せずにわずかに微笑んで、卒業生代表としての責務を果たした。 少年・・・アテナがこの軍事アカデミーに来てから、あっという間に一ヶ月が過ぎていた。 その間、彼は常に最高の成績をキープし、その容姿と相まって随分と注目された。おかげでアカデミー関係者で「アテナ・ヒビキ」の名を知らない者は一人としていないほどだ。 しかし卒業間近まで、彼の配属先が決められることは無かった。アテナの噂を聞いた者達が互いに牽制しあいながらも、自らの陣営に組み込もうとしていたのだ。結果、通常は卒業の一週間前には決まるはずだった配属先が卒業当日まで先延ばしされたと言う。 ちなみに、まだシンたちはアテナの配属先を聞いていない。彼らも赤を纏ったまま卒業する身、互いに忙しすぎて話す時間が無かったのだ。 だから、シンは面倒な行事が終わった途端、数メートル離れて伸びをしているアテナに近づき、単刀直入に訊いたのだった。 「アテナ、配属先決まったんだろ? 何処?」 しかしアテナは眠そうな顔で 「全く、なんたって卒業式なんて面倒な事に参加しなくちゃならないんだろうね」 と言って歩き出してしまう。 まだ質問には答えてもらっていない。そう言おうとしてアテナの眼前に回りこんだ途端、シンはその身を固まらせる羽目になった。 ほんの一瞬だった。アテナがシンを視界に入れた途端、その表情はいつもの柔和な笑みに一変した。 だがシンはしっかり見てしまったのだ。アテナの暗く、憤りを抑えたような笑い顔を。 それは大変美しいモノだったが、それ以上に禍々しかった。 鳥肌が立つのを感じながら、シンは「どうかしたのか・・・?」と恐る恐る訊いてみる。 しかし案の定アテナは苦笑して、「なんでも無いよ」としか言わなかったのだ。 それに不服そうな顔をしているシンの腕に手を絡め、アテナは「ほら、ルナマリアが呼んでる」と言って一変して顔が赤くなったシンをぐいぐい引っ張って行った。 ――――わかっていたはずだ。彼らと仲を良くしすぎてはいけないことは。 入学直前、ギルバートから受け取った書類には3人の少年少女のデータがあった。 訊けばその子達と積極的に仲良くしとけ、と言う。 ギルバートの言に従うのも嫌だったし、その子達も巻き込まれる可能性が高かったので、程々に付き合っていればいいか、と当初は思っていたのだが、思いの他彼らのことが気に入ってしまっていた。 予想以上に始終行動を共にし、楽しそうに会話してしまったのだ。 それを知ったあの男がどのような行動に出るかなんて、粗方予想がついたはずなのに。だからこそ余計に思うのだ。彼らまで巻き込むことは許せない、と。 しかし結果はやはりというか、彼らと同じ隊へ配属されることになっていて。もう巻き込むことは決定事項のようだ。 それを申し訳なく思いながらも、アテナはちょっとシンが単純な性格でよかった、と思った。 見られた。自分の醜い部分・・・弱みを。 願わくば、あの表情が何から来るものなのか、シンが探ろうとは考えないことだ。 これ以上、巻き込みたくないから。 「ルナマリア〜、どうかした?」 「アテナ」は笑う。偽りの性格、偽りの笑顔で。そうする事しかもう、手が無いから。 「写真とりましょう、写真!ほら、ヴィーノ達が待ちくたびれてるわ。早く!!!」 そう行って今度はアテナの腕にルナマリアが手を絡め、密着しながら輪の中心へ誘う。 彼も笑いながら輪に入り、カメラに向けて微笑みかける。 卒業、配属、従軍。さぁ、これから何をさせるつもりだ?ギルバート・デュランダル!! (あとがき) 短!!最近多いな〜短いの。 でもま、キリがいいので黙認をv |
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