新造艦「ミネルバ」の進水式当日。

 L4に新設されたザフトのプラント「アーモリーワン」に、3人の少年少女たちが秘密裏に足を踏み入れた。

時を同じくして、厳しい顔をしたオーブとプラントの代表も、また秘密裏に同じのコロニーでの面会を果たそうとしていた。



奪われる翼8





 ミネルバ艦内、すでに与えられた自室で、キラはココアを片手にパソコンに向かって地球の情報を集めていた。

 とりあえず満足ができるまで情報収集をし終わり、さて、次はプラントの方も覗いてみるか、と画面を切り替えようとした一瞬、キラの動きが止まった。
だがまたすぐに作業を開始する。まるで何事もなかったかのように。

だが、キラの心中はかなり荒れに荒れていた。

 ほんの些細な変化だった。ただ、画面の移り変わりがいつもより一秒弱ほど遅れたというだけ。
普通の人ならばそれを疑問すらに思わないだろう。だが、それが異変だとキラに感づかせるには十分な変化だった。

 キラは幼い頃からハッカーを天職として生きていたからか、自分でも不思議に思えるほど自分のパソコンのメンテナンスは毎日欠かさずにやっている。

ハッキングは一秒、一瞬のフリーズが命取りになりかねないのだ。危険な区画に入った途端パソコンが動かなくなった、などと言う事が起こったらお話にならない。

 だから、毎日入念にOSとハードのメンテナンスを行っているのだ。
それこそ、最新の技術と最新型のパソコンなんぞ、足元にも及ばない性能をもたせてしまうほどの力のいれようなのである。

 そんな力作が、今、一瞬だけだが思い通りに動かなかった。

ここ最近で、これが何によって引き起こされた事なのかは大体想像つく。

無論このまま放っておくつもりは全く無い。

 問題は、いかに気付かれずに相手の策略を無に返すか、だ。

ミネルバに来てすぐ気付いたのだが、この艦、いたる所に隠しカメラがある。
 もちろんキラの部屋とて例外ではない。パソコンの画面を覗ける位置はもちろん、この部屋全体に死角がなくなるようにはりめぐらされているのだ。もう、ばれるのを前提としてやっているとしか思えない。

 だがキラには気付かれて良くても、他のクルー達に気付かれるのはよろしくないらしい。廊下や他の人の部屋には、ある一点から見渡せる位置にぽつぽつとあるだけだ。

 だからキラは何気なく他人や自分の体でカメラの視界を遮ったり、偶然を装って植物をカメラの目の前に置いたりとしてこんな無謀なことをしでかす人物の邪魔をしてきたのだが、相手はまだ数枚上手だったらしい。

 まさか肌身放さず持っていたパソコンにまで細工を施されていたとは。

流石というのか。
というかこんなことをやるのも出来るのも一人しか思いつかない。言わずもがな、ギルバート・デュランダル議長閣下である。

 まだプラントやザフトの重要機密を覗いてなくてよかった・・・と思いながらも、キラはメンテナンスを装ってどのような仕掛けがしてあるのか探ってみた。

まずはハード面。

 丁寧にカバーを剥がしていき、配線とメモリのチェックと洗浄をしていく。

(あった・・・。)

 進めていくうちに、一つのメモリに行きあたった。

小さい上に他のに似通っている。これでは、いくらキラでも先に「何かある」とわかっていなければ、気付くことはなかったであろう。

 それを気付いていないかのように普段通りもとにもどし、次にOSの方を見てみた。

しばらくスクロールを続け、調整を進めていると、一ヶ所だけ不自然な点があった。

(あ、いじられてる。でもすごく綺麗に隠してある・・・あの人、こんなことにプラントの最新技術使ってる場合なわけ?)

 そんな点で密かに呆れながらも、キラはそのままその画面をスクロールして、調整を最後まで終わらせた。

 ここでごまかしてある点を暴いていく事はできないのだ。
前記した通り、パソコンもキラも監視されているのだから。

だから、キラはメンテナンスの終わって電源を切ったパソコンをたたみ、監視カメラの無い屋外で実行するべく、私服のまま部屋を出た。

 キラもなぜかは知らないのだが、先日、急にキラにだけ休日を言い渡された。

共にそれを聞いていたシンとヴィーノがしきりに羨ましがっていたが、キラは全く嬉しくなかった。
 何度も言うようだが、こんな強行策に出れるのはあの食えない大人しかいないのだ。
今度は一体何をたくらんでいるのだ、とかんくぐってしまっても仕方がないだろう。この急な休暇が恐ろしくすら思えてくる。

 そんなことを考えているうちに、途中顔なじみと軽い会話をしながらも、キラはミネルバから出た。


 そして一人になれる場所はないかな・・・と、当ても無くしばらくぶらぶらと歩いていると、ふとずっと後を付いてきている気配に気付いた。気配を上手く消しすぎて逆にわかってしまったのだ。

(・・・何だ?・・・・・・まさか、監視?うわ、ありえる・・・!)

あの腹黒議長ならやりかねないのだ。最近本当に変態化してきているのだから。

盗聴、盗撮はもちろんストーカー行為まで・・・段々プラントの行く末が不安になってきた。

 キラは一つため息をついて、付いてくる気配をまくために人ごみに紛れ込んだ。

自らも気配を殺して、冷静に相手の距離と気配を探る。

 数分動いていたが、まだまけない。だんだんいらいらしてきたキラは、足早かつ闇雲に曲がり角を曲がり始めた。

 結果、みごと数十分には相手の影も形も無く、完全に巻く事に成功した。だが、達成感に浸るのもつかの間、


「何処だココ・・・・・・・・・」


完璧に迷ってしまったのだった。    




(あとがき)
やっと本編に入りました!ですが、多分あんまり話に沿ったお話じゃないと思います。
キラ様に沢山出てもらう予定なので、自然とひん曲がった方向とか、違う視点とかで。
話は大体(大まかに)同じような流れで進ませるつもりですが。

・・・なんかもしかして言ってる事矛盾してる?



 BACK  TOP  NEXT
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送