「アテナ!!?何やってるんだ、早く!!」

ヨウランの声に漸く我を取り戻したアテナは、急いで自機に乗り込み、発進させた。



奪われる翼11





宇宙に出るなり眼前に広がったのは、多くの地球軍MS。
 インパルスとレイの乗るザクは、それらを破壊しながらも、ただ唯一の、最近では全く見なくなったMAとの戦いに苦戦を強いられていた。

 それを見たアテナは、一種の既視感に襲われたのだった。

似ている・・・似ているのだ。何度も共に死線を掻い潜ってきたからこそ、わかるその癖。MAについているガンパレルが、またより一層彼の機体と重ねさせるのだ。

だから、キラは盗聴されているのも一瞬忘れ、呆然と彼の名を呟いてしまった。

「・・・ムウさん・・・。」

 と。だが、彼はもういないはず。戦後、宇宙空間にヘルメットが漂っていたのだから。彼の最期の状況を思い出しても、彼の助かる見込みは限りなく0に近かったはず。しかし、それでも重なってしまうのだ。メビウス・ゼロ―――ムウ・ラ・フラガがかつて乗っていた機体に・・・。

先程の感覚といい、目の前の機体といい。キラは混乱しながらも、敵機の撃退をしていた。
もちろん、同僚とは違い、一機たりともコックピット及び生命維持に必要なパーツを狙ったりはしない。

 それはもう、半分意地に近いものだった。生憎、議長からは全く戦い方の注文は受けていなかったので、好きなようにやらせてもらう事にする。

 “自分”には、それを出来るだけの力があるのだから。

両手に持ったビームガンを、今はまだ遠くにいるMSに向かって、的確に発射させる。
フリーダムのように燃料が無限ではないから、少ない発射で、より効果的な部分を狙う。

 モニターのある頭部のみ、銃とそれをもつ腕、又は足を。近くにいる敵機から迎撃していき、どんどんリバイブルを敵MS部隊の中に進めて行くのだ。

接近戦が可能な範囲に入ったら、燃料の節約のため、ビームソードを取り出してすれ違い間際に戦闘不能にさせていく。

 重装備と、この速過ぎる速さは、キラがリバイブル設計で最もこだわった部分だった。

おかげで、今だ全く機体に損傷はなし、攻撃自体受けていない。

 次々と地球軍MSを戦闘不能状態にしていき、数分後には、動ける機体はリバイブル、インパルス、それとレイのザク・・・敵軍のMA一機の、計4機のみとなった。

 十数機いたはずの機体は、たった数分でその過半数をリバイブルによって戦闘不能にされていたのだ。




 スクリーンに映るそれを、たった今案内されてブリッジに入ってきたアレックスとカガリは、呆然と見入っていた。

 その戦い方に覚えがあった。いや、あんなことが出来る人物も、やろうとする人物も、自分と“あいつ”の他にいるものか。そう思い、アレックスは己の立場も忘れ、議長に詰め寄った。

「あの機体!あの白い機体の搭乗者は誰です!?」
すると議長はアレックスをちらりと見、名を告げた。

「インパルスのことかね?あれに乗っているのはシン・アスカだ。」

だが、全く聞き覚えの無い名に、アレックスは違う、と確信し、もう一度聞いた。

「あの、たった今地球軍のMSを蹴散らしていった、あの機体です。MAと対戦していた方ではありません。本当に、“シン・アスカ”ですか?」

すると、今度は議長ではなく、艦長が答えた。

「アテナ・ヒビキですね。彼はザフトきっての天才です。パイロットとしてはもちろん、技術開発者としても有名な子ですわ。」

と。微笑み、自慢げに。
先程から、ミネルバはすでに発進しているのにMSの援護をしようとしていない。それはきっと、あの白いMSを信頼しているからこその行動だ。それに、多分援護が逆にあの機体の動きを邪魔するかもしれないから。
 そんなことが艦長やブリッジクルー達の表情から察することができた。

だが、この際そんな事はどうでもよかった。そしてまた思い浮かべていたものとは違う名に、アレックスは眉を顰めたのだった。

 艦長の言い方からは、あの白い機体の搭乗者の名は、本当に“アテナ・ヒビキ”というらしい。だが、まだ納得できないのだ。

 似ているから。動きも、やる事も。

奇しくも、先程のアテナと全く同じような感覚を覚えながら、これ以上無礼を重ねるようなことはせずに、アレックスは無言でスクリーンに視線を戻した。




「おいおい、なんだあの機体は。」

ところかわってMAエグザスの中。ネオは信じられない力量を発揮し、どんどんこちらに近づいてくるMSを、迎え撃とうとした。

 はっきり言って、今まで相手をしていた2機は、まぁ何とか落とす事は可能であろう。しかし、あの白い気体が加わったとすれば、話は別だ。

絶対に勝てない、そんな自信がある。

 そういった結論にいたり、ネオはすぐさま帰艦しようと考えたが、やめた。

 悲痛に彩られた、少年の声が聞こえてきたから。

『貴方は、誰ですか・・・!?名前を、名前だけでも教えてください!!』

と。機器からはどの機体から発信されている声なのかはわからない。
 だがどうやらあの恐ろしいほど強い白い機体が他の機体を制しているように見えるので、その機体からなのだろう。

そう思いながらも、ネオは初めて聞く少年の声に、素直に答えてやった。

今の状況はこちらの圧倒的不利だし、何故か、言わなくては、と思ったから。

「ネオ・ロアノークだ。覚えといてくれよ」

と。息を呑むような音が聞こえたのは気のせいなのだろうか。一瞬そう思ったが、次に聞こえた言葉に驚き、そんなことはどこかに吹き飛んでしまった。

『・・・行ってください。今回は、見逃します。』

と。それを信じられなくて「何だと!?」と聞き返すと、相手はただ『早く』としか言わなかった。

 何かの罠か、と思わないでもなかったが、ネオは素直に少年の言葉に甘んじることにした。

 彼が何を思っているのかはわからない。それを聞く時間もないし、相手だって答えてはくれないだろ。だが、これだけは聞いておきたかった。

「お前、名は。」

すると、少年は数秒感覚をおき、言った。

『キラ・・・。キラです、ネオさん。もうニ度と会わないことを願います』

それを聞きながら、ネオは自艦、ガーティ・ルーへ戻っていった。



 リバイブル、コックピット内。
シンとレイ、それと艦長の詰問の声を聞き過ごしながらも、アテナは自らの考えに浸っていた。

 軽率だったかもしれない。もしかしたら、これを理由に大事な人の指を切り落とされてしまうかもしれない。

 でも、“キラ”は、ネオと名乗る人物を戦闘不能にさせるなど、出来なかった。

 ココはまだザフト圏なのだ。そんな場所で機体を破壊すれば、きっと彼は捕虜になってしまう。
捕虜の扱いは、きっと良いものではない。もしかしたら死が待っているかもしれない。キラは、彼にそのような結末を迎えて欲しくなかった。

 声を聞き、あの感覚を覚え、確信したから。

いつ作ったのかなんて知らない。

 でも、ネオ・ロアノークは、



ムウ・ラ・フラガのクローンだ。



 でなければキラがネオと感応するわけがないのだ。クルーゼというつながりこそあれど、キラとフラガは全くの無関係だったのだから。

 そんな事を考えながら、アテナは帰艦していった。

 




(あとがき)
す、進まねぇ・・・。
精進します。

中身はかなり変わってしまいましたね。
確かこの場面では、レイのザク・インパルス・エグザスしかいませんでしたよね?
 レイとネオの感応も書かなかったし。

しかもすでにアレックスとカガリがブリッジ入りしてたし。
発進したくせにミネルバは援護に出なかったし。

・・・ほんと、頑張りたいです。



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