「私にも、説明願えるかな?・・・アテナ・ヒビキ」 何故食堂にこの人がいるのだ、とか、何故今更そんな真面目そうな顔でいるのか、とか、やっぱどんな顔をしてようが裏で絶対なんかたくらんでるようにしか見えない、とか、色々思うところはあったが、今キラの頭を占めていたことは。 (そういや、盗聴した音を聞く機器って・・・議長が、肌身はなさず持ってたりするのかな・・・?) という、このタイミングで現われたからこそ持ってしまった、議長の更なる変態疑惑であった。 奪われる翼18食堂の入り口に立ち、険しい顔でこちらを見る人物・・・それは、言わずもがな、プラントの最高評議会議長、ギルバート・デュランダルであった。 アテナは静かにアスランから離れ、立ち上がって議長に向けて敬礼を送る。 それに漸く我を取り戻したクルー達も、アテナに習い議長に対して敬礼を送った。 それを軽く手を上げることで答え、議長はもう一度、先程の問いを繰り返したのだった。 「アテナ、私は君のその背中の件、一度も聞いたことは無かったのだが。」 と。議長がザフトきっての天才、アテナ・ヒビキの後見人である事は前々から公表されていた事実であったから、それについては驚く者はいなかったが、その彼もアテナの背中については知らなかったという。 その事実に、驚きと不信の交じったクルー達の視線が議長に刺さったが、彼は全く気にした風も無く、“アテナ”の答えを待った。 「申し訳ありません。言うほどのことでも無いと思いましたので。」 そう言って、まっすぐこちらを見てくる少年と、床に膝をつき、アテナの背中を食い入るように見ている少年を交互に見、議長はやはり真面目くさった、厳しい顔で言った。 「その傷、継続して治療を受けなければならないものだったのだろう。それでも君に取っては“言うほどのものではない”というのかね?」 と。それに言葉に詰まり、視線をわずかにそらした少年を見、更に言葉を続ける。 「君にそのような傷を負わせる任務を、この半年間課したことは無かったはずだ。」 その言葉にアテナははっとしたように目を見開き、そらした視線を議長に戻した。 そしてすぐに、恐る恐るアスランを振り返る。 予想通り、アスランはすでに青くなっていた顔から更に色を無くし、唇をかみ締めてキラをじっと見ていた。 それからなんとか根性で視線をはずし、議長を睨むように見る。 ―――この男、何をしたいんだ。 わざわざアスランに「軍で負った傷じゃない」と認識させ・・・つまり、「半年よりも前に負った傷である」と、そう、教えたのだ。 そして外野には、「任務で負った」という可能性を消してやり、軍人になる前は誰もが民間人であるはずだから・・・その半年よりも前に、“何かの事件によって”負った傷であると、そう認識させた訳だ。 そしてなにより、先程のアスランの言動と、それを出来る立場にあった・・・少年が軍人であったという、事実。 それらを考慮して、この場にいる全ての者たちが確信してしまっただろう。 “アテナ”のこの傷が、過去、“アスラン・ザラ”によってつけられた傷である、と。 議長の考えがまるで読めない。 でもきっと、今、議長のミネルバでの印象が、悪化の一途をたどっている事に気付いているだろうから・・・、このままの状況を、彼が甘受するはずが無い、と、それだけはわかっている。 ならばどうする? ―――“何か”を使って、一気に状況を、自分の有利な方向に傾けさせる。 そう考えるのが妥当だろう。 今は“何”を使おうとしているのかがわからないため、キラはそれがわかるまで、あえて議長の言に乗る事に決めたのだった。 「・・・そうです。これは、僕が戦時中に負った傷ですから。」 彼の前で認めてしまうのは、心苦しいけど。 後ろで彼が体をピクリと動かしたことに気付いたけれど。 今、議長の思惑通りに進まられるわけにはいかないのだ。 これは勘でしかないが・・・きっと、議長はアスランを害そうとしている。 そう思い、キラは、決意した。 彼を守るためなら、何だってしてやる。 彼女達を守るためなら、 自分なんて、どうだっていいさ。 「なるほど。それで先程の、彼の言動の説明は?」 そう言って視線をアスランに移す。 議長のその白々しいセリフに、腹が立つのを抑えながら、キラは、議長の思惑がおぼろげながらつかめてきた感じがした。 先程から、議長は矛先をアスランにばかり向けている。そして、自分の勘も告げていた。 ・・・・・・というかもう、これしか考えられないだろう。 議長は“アスラン”を使う気だ。 「・・・事実です。説明は不要でしょう。」 「そうか。・・・ならば、仕方がない。」 アテナの言に、しばらく考慮した議長は、アスランに刺すような視線を向け、おもむろに告げた。 「アスラン・ザラ。どのような理由があろうと、民間人への暴行や殺戮は禁止されている。それが例え、君が軍人であったときであろうと、なかろうと。 国に帰ったら、国際法によって裁かれることを、覚悟しておきなさい。」 と。およそ予想通りに進むことに、キラは内心、心の中で暗く笑った。 アスランを悪者に仕立て上げ、その次に来るものを予想しながら。 辺りがしんと静まる中、議長はアテナに視線を戻し、今度は打って変わって優しげな瞳で言った。 「アテナ、言っただろう。私は君を害する者を許しはしない。君を守りたくて色々なプロテクトをかけたというのに、君はそれを無に返す気かね?」 と、苦笑しながら。 それに内心の嫌悪感を押し隠し、キラは心の中で呟いていた。 いつ、そんなことを言いやがった。 というか、薄ら寒い・・・なんか告白された気分だ、と。 だがこれが、議長のシナリオだろう。 “アテナ”を害した者を裁き、“アテナ”を守るために動いた。 “アテナ”を守りたいがためだけに、彼に偽りの名を語らせるという、行動をした。 その理由までもはわからないが、議長の行動全て、“アテナ”のためだったのだ。 どうやら議長殿はそう、周りに認知させたいらしい。 まだ何かを言おうと、いつもの穏やかな笑みを浮かべ、口を開こうとした議長に、だがアテナはその次の言葉を聞きたくないとでも言いたげに、議長よりも早く言葉を発した。 「すみません、議長。ですが、違うんです。彼は悪い事など何もしていない・・・。むしろ、誉められるべき事をしたんですよ!」 と、涙混じりの、どこか懇願を含むような口調で。 それによって、議長の言に納得し、アスランに仇を見るかのような視線を送っていた者たちの視線が、アテナへ移った。 アテナは周囲の怪訝そうな視線も目に入っていないらしく、ただ議長を見て、重ねて言った。 「現に、彼は僕を倒したことによって、ネビュラ勲章を与えられた!彼は、 と。錯乱してきたのか、焦点を失った瞳で。 「・・・っキラ!?」 それを見、アスランは漸く我を取り戻し、すぐに立ち上がって持っていた軍服でキラを包んでから、抱きしめた。 言ってはいけない。お前の立場が悪くなる。俺は、大丈夫だから! そんな意志の伝わってくる、アスランの温もりに嬉しくなりながらも、だがキラは見た目とは真逆に、冷静に物事を把握していた。 ごめん、アスラン。でも、これが一番良い方法だから。 そう思い、それを伝えたくて、アスランを抱きしめ返す。 それに驚いたように腕の力を弱めたアスランに、他には見れないように小さくウィンクを送り、本当に小さな声で「ごめんね」と呟いた。 そして、言う。 「アスランは、何も悪い事はしてないんです。ただ、敵軍MSを、ストライクを討っただけ!この傷は、その時についた傷なんです!ストライクが、イージスに討たれた時に!!」 と。はっきりと言われ、アスランの腕にまた力がこもったが、キラはもう一度心の中だけで「ごめん」と呟くだけして、何かを言おうとしている議長を、また遮るように言葉をつなげた。 「今まで、黙っていてすみません、議長!僕は、ストライクの元パイロットだったんです!!」 と、爆弾発言を。それに一気に食堂がざわめき、困惑の声が上がる。 そしてまた、議長が何かを言う前に、アテナは口を開いた。 「すみません、落ち着いたらどんな裁きも受けます!でもアスランは、彼は裁かれる理由はないんです!だから・・・っ」 そこで、感極まったように言葉を詰まらせ、涙を隠すようにアスランの肩口に顔を押し付ける。 ・・・ちょっとやりすぎたかな・・・。と思いつつ、もちろん嘘泣きのキラであった。 でも、多分これで間違ってはいないはず。 議長の面目は一応保たれたし、アスランの疑いも晴れた(?)し、ぶっちゃけさっき「君のために〜(省略)」とか公言しちゃった挙句、人質も取っちゃって、後には引けないわけだから、議長がアテナを裁けるはずも無く。 ちなみに周りには、アスランとキラの仲良しこよしな状態をしっかり見せてやったし、ちょっと弱々アテナ(=涙を浮かべて友人の無罪を請う美少年)も目に焼き付けさせてやるという、ケアも忘れなかった。 つまるところ・・・完☆璧・・・な状態だったりする。 もっとも、アスランの危惧する「アテナの立場」とやらも、大丈夫だろう。周り皆、アテナに同情的だし、上記のとおりアテナの意外な一面(=魅力)も出血サービスで見せてやったことだし。ちらりと見れば、ストライクのことそっちのけで少年達の友情に涙を浮かべるおっさんたちが多数確認できたし。 ・・・・・・・・・ちょっと最近精神的に弱々だったから、どうやら復活の反動が素晴らしかったらしい。 黒キラ全開★なんちってv ・・・・・・・・・・・・・・・それはともかく、まさか反撃を受けるとは思わなかったのであろう、言葉を失い、顔を引きつらせている議長をちらりと見、それに何だかものすごく愉悦を刺激されながらも、さらに言葉をつなげようとした、その時。 「大変です、議長!!ユニウスセブンが!!」 という、ドアップにされてもなんら嬉しくも無い、アーサーの焦った顔が、食堂のディスプレイに映し出されたのだった。 (あとがき) 壊れかけてますよ・・・。何がって、私が。 な〜にが「なんちってv」だよって・・・。読み返して鳥肌が・・・(汗 でもま、ちょっと面白かった(自虐)んで、そのまま残す事に決定。 しっかし、ザフトレッド存在うっすいっすね!もう、その他大勢と一緒くた! だってアニメの彼らが気に食わないんだもんよ。ケッ |
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