「それでは、これより説明を開始します。」 


3艦すべてが揃い、準備が整ったところで、タリアがそう口を開いた。



奪われる翼23





場所はミネルバのブリッジ。居るのはブリッジクルー、各艦艦長・副官、それとミネルバの赤たちだけだ。

無論、入りきらなかった者達にも状況がわかるように、この会話は3艦全体に流れるようにしてある。


「幸い、ユニウスセブンが地球の重力に捕われるまで若干の時間があります。」

この数値はユニウスセブンの軌道から、すでにアテナが割り出している。

そのことを知っている軍人たちがちらりと彼に視線を寄越したが、当の本人は我関せず、とばかりにミネルバの火気制御装置と小型の端末をつなげ、一心不乱にキーを叩いている。

その指の早さに目を奪われてしまった他艦の軍人たちは、幸いなことに慣れて耐性がついているタリアの咳払いによって、ようやく我を取り戻したのだった。


「ゴホン。・・・・・・ですから、少々時間はかかりますが、確実に粉砕できる方法を取りたいと思います。」


その言葉と同時にディスプレイに映し出されたのは、ユニウスセブンと、ここにいる3艦の模型。配置はと言うと、ユニウスセブンを囲うように、3艦がきれいなトライアングルを作っている状態である。


「まず最初はMS部隊。各所にメテオブレイカーを配置し、すぐさま帰還。その際、起動はさせずに戻ること。全自動で一斉に起動させます。
 それと同時に3艦の全砲弾をユニウスセブンに集中放火。各個でやるよりも何倍もの相乗効果が出ますわ。」


ディスプレイがタリアの説明通りに動き、最終的にユニウスセブンで大爆発が起こり、そのまま巨大な大地は消滅してしまった。

その作戦は、正に一番効率のいい方法と言えよう。だが、決して見逃すことのできない問題がひとつあった。


「しかしグラディス艦長、メテオブレイカーには時間式自動装置はついてないぞ。どうするつもりだね?」

口を開いたのはルソー艦長。そのもっともな質問に、だがボルテール艦長とミネルバ艦長は一点に視線を向けるだけだ。

怪訝に思って二人の視線の先をたどると、そこには手を止めてこちらを見ていたアテナ・ヒビキが。

彼は美少年然とした顔でにっこり笑い、「ご安心ください、すでに細工済みです」と言ったのだ。

彼の優秀さは耳にたこができるほど聞いている。どうやら他艦の艦長二人も彼を信頼しているようだし、ルソー艦長もそうか、とだけ言って納得したのだった。


「アテナ、あちらの作業は終わったの?」

「はい。終わりました」

その返事と同時にアテナは座っていた椅子からするりと降り、ルソーとボルテールの艦長に向けて微笑んで言ったのだった。


「申し訳ありませんが、各主砲の発射のみは ミネルバ こちら で操作させていただきます。」


その不可解な言葉にルソー艦長が説明を求めれば、意外な事にジュール隊長が答える。


「より効果的にするために、まったくの同時にユニウスセブンに主砲を当てたいのだろう? そうなると、各艦の目標からの距離や砲弾の速さを調整する必要がある。
 今お前がやっていた操作は、その為の物だな?」


その言葉に驚いたようにアテナを見れば、彼は微笑んで「はい」とだけ答えたのだった。


確かに、座標や設計図を見ればそれもまたできないことはないだろう。だが、果たしてこの短時間でできるものなのだろうか。

ルソー艦長はそう考えてからため息をこぼし、畏敬の念を込めてアテナを見、言う。


「君の能力には恐れ入るな・・・。わかった。そちらに主砲の発射は任せよう。ジュール隊長も依存はないと見た。早速行動にでるかね?」


タリアとアテナは顔を見合わせたあと、見た目からして好々爺らしいルソー艦長の物分りの良さに、内心安堵のため息を吐いたのだった。







「キラ・・・。」


作戦説明も終わり、パイロットスーツにも着替えてさぁ愛機に乗り込むか、と思った矢先、背後から声をかけられた。

考える必要もなく誰の声だかわかり、キラは苦笑して「“アテナ”だよ。」と言ってから振り返る。

「どうかした?アスラン。」

振り向いた先にはやはり幼馴染の姿があって、キラは顔が弛緩したのを感じながら、アスランに近づいて行った。

彼は少し俯いて、何かに悩んでいる様子だ。キラは内心「変わらないなぁ」と呟きつつ、何も言わないアスランから視線を逸らし、そこに自分の愛機を発見して苦笑する。


「アスラン、艦内放送、聞いてた?」

「ぁ?・・・あぁ。お前、やっぱすごいな。」


視線を戻せば、アスランは顔を上げ、キラに苦笑を向けていた。

その言葉を受け、キラは笑みが自嘲のそれにならないように注意しながら、続けて言う。


「あれが、今の僕の立場だ。力を厭っておきながら、躊躇いなく振るう。・・・・・・できるから、しなければならなかったから。」


アスランはキラの言葉に息を呑み、だが何も言わずに彼の言葉を聞いていた。

 すでにキラが、自分の内心の迷いを見抜いているのだと、気づいたから。


「確かに今君がMSで出撃してくれたら、僕たちは助かるよ。けど、その後を考えて。君の今の立場を考えて。・・・・・・僕のことも、ちょっと考えて。」


もし、粉砕活動中に戦闘があったら。アスランもその戦闘に加わるだろう。

だが民間人の戦闘行為は犯罪だ。・・・・・・するとまた、デュランダル議長に弱みを握らせることとなる。 

そうなれば更にキラへの戒めが増すのだ。最悪、アスランまで軍に戻される可能性もある。

・・・それこそが、議長が去るときに見せた微笑の意味なのかもしれない。このような迷いをアスランが持つことを、彼は予想していたのだ。


アスランは、確かに力を振るい、粉砕活動を助けることもできるだろう。だが、ただ見ているだけ、ということもできる立場にあるのだ。


「幸い、僕らは今、そう差し迫った状況にあるわけでもない。ま、僕がいれば十人力だし?君の力なんて今更必要ないわけよ。」

そう言って、最後は鼻で笑う。


アスランは顔を引きつらせながらも、キラの言い分がもっともであることをすでに知っていた。

確かに自分は今、出撃せずに済む立場にあり、それに甘んじることができる。そしてそうする事こそが一番の良策なのだ。それにやはり、キラの負担にはなりたくない。


だがそれでもどかしい感じは抜けないらしい。微妙な顔で黙りこくっているアスランをどう思ったのか、キラがまた苦笑し、踵を返しながら口を開いたのだった。


「・・・・・・アス。僕の活躍、よく見てて。それで帰ってきたら、カガリと一緒に「おかえり」っていってほしいな。」


そう言って、今度は振り向きもせずに愛機へ向かっていってしまった。

 その言葉を、キラがどのような顔で言ったのかは見ていない。

だがきっと、頬を染めて微妙な顔で言ったのだろう、とアスランは当たりをつけたのだった。


彼の後姿を無言で見送ったアスランは、徐に壁に背を預け、手で目を覆いながらポツリとつぶやいた。


「相変わらず、わがままで、甘ったれな奴・・・・・・・・・・・・。」

その口元には、わずかに笑みが浮かんでいる。若干頬が赤いのは、多分気のせいだろう。


時間なんてなかったろうに、自分のほうが辛いだろうに、いつもそうやって他人ばかり気にするのだ、キラは。

アスランの場合はたまに失礼な言葉も混じるけど、でもやはり含まれる感情は穏やかで、他人を気遣うものなのである。

さっきだってそうだ。傲慢に聞こえる言葉も、裏を返せばアスランを気遣うもので。その言葉一つ一つが、やけに優しい。


こそばゆい思いをしながらもしばらくの間そうしていてから、アスランはカガリの元に足を向けたのだった。

――――――――ブリッジに入ることを要請するよう、彼女にお願いをしに。

 



 
(あとがき)
微妙。ぶちゃけ夏バテしてて脳みそがよく働かないのです・・・Uu
 話も進まないし〜。(泣

だんだん捏造度が上がってきましたね。
ぶっちゃけユニウスセブンは随分と差し迫った状態で破壊されましたからUu



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