『・・・・・怖いんだ、僕。・・・・シン達に嫌われるのが・・・・・』


そう言ったキラはやけに辛そうで、その後しばらく黙り込んでしまっても、イザーク達は何も言うことが出来なかった。


しかしふと顔を上げてキラが言った言葉に、思わず変な声を出してしまったのだ。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・僕、馬鹿?』

「「・・・・はぁ?」」


行き成り何を言い出すのか、と困惑げにキラを見ると、彼は顎に手を当て、「う〜ん」と唸ってからボソボソ言い出したのだった。



奪われる翼28





『待てよ? 僕ストライクの事すでに話したから、ネオさんとの関わりをソレとこじつけちゃえばいいんだ。戦い方が似てたから思わず回線を開いてみたら、地球軍にいた時の知り合いだった、と。
名前を隠してたのはとりあえず自分は脱走兵だから地球軍の目を誤魔化すため・・・・。
ストライクに乗った経緯は全部話しちゃっていいかな・・・・・』


そんなことを言い出したキラに、イザークは思わず立ち上がって叫んだ。


「キラ!! お前また嘘で覆い隠すつもりか!? そんなこと、自分の首をしめるだけだと分かっているだろう!!」


 キラはディスプレイからイザークの顔が消えたことに気付き、漸くそちらに意識を戻した。

だが音声を切っている状態なので当然、今イザークが叫んだことなど知る由も無い。

 すぐさまディアッカがテキストに変換したのでイザークが言ったことは伝わったが、キラは無表情と言っていい顔でテキストを打ち返したのだ。


『そんなこと分かってる。でも僕は彼らに真実を話すことなんて出来ない。僕の状況も。フリーダムのことも。僕が本当は誰なのかと言う事も。』


―――フリーダムはレイとシンの仇。


―――ラクスと母は自分の行動次第で危険に合わされる。


―――何故自分が議長に目をつけられたか、本当のところはアスランにだって言っていない。


―――レイは“キラ・ヤマト”が“最高のコーディネイター”として作られたことを知っているのだろうか。


―――“そんなもの”を作る資金が欲しかったからと、ユーレン・ヒビキがレイとクルーゼを作ったことは?


「言える訳が無い・・・・・・!」


思わず声を出してしまったが、キラはそれに気付かなかった。

頭が混乱していて、そこまで気を回すことが出来ないのだ。

更には、焦りと、誰に対する物とも分からない怒りまでもが彼を取り巻く。


「ならどうすればいい!? 僕にだって分からないんだ!!」


激情に任せて机を拳で叩くと、キラはその痛みではっと我に返った。


慌てて自分の口を抑えたが、音にしてしまった言葉を戻すことは出来ない。


―――――今ので自分が誰かと通信をしていたのだと気付かれなかっただろうか。


思い出すのは、プラントに連れてこられてすぐに言われた言葉。



『―――もし君が外界と連絡を取ろうとしたら、その時点でラクス嬢の指を一本切り落とそう。』



「・・・・・・・あ・・・ぁ・・・・・・っ」


 どうしようどうしようどうしよう・・・・・・・・・・・!


こんな事ならばまだ監視カメラがあった方がよかった。

イザーク達と連絡していたのだと感づかれたらどうなるのだろう。

議長はもう次は無いと言っていた。更なる戒めにするためにも、あの人なら実行しかねない・・・・・・!


そう思って青い顔で口を抑えるキラを、イザークとディアッカはディスプレイ越しに呆然と見ていたのだった。



それから、我に返ると同時にはっと息を呑む。


漸く得た平穏をいきなり崩され、

見知らぬ地に連れてこられて、

使いたくなどなかっただろう力を強要され、

半年間、寝るのも食べるのも・・・・・何をするにも監視の目が付いて回る。


他愛の無い会話も、何気ない行動も。

全てを見られ、何か都合の悪い事をすれば、

咎めはすぐさま自分の大切な人へと向かう。


そしてイザーク達が知る由もないが、

常にキラと行動を共にしていたのは、

彼が自分の仇なのだと知らずに慕ってくる少年2人、

そしてどうしても“彼女”を連想させる少女。

議長はそこまでわかっていて彼らを仕掛けたのだ。


・・・・果たして半年間もの間常にそんな状況に立たされて、いつまでも正気を保つことが出来るのだろうか。


真っ青になって小刻みに震えるキラを見て、彼が精神的に追い込まれていたという事に、イザーク達は今更ながら気付いたのである。


 直接会った時にすら気付けなかった自分が不甲斐なくて、イザークも机を叩いて「くそっ!」と悪態を付く。


そんなことをしているうちに、本当に限界が来てしまったのだろう。

ディスプレイの向こうにいるキラがぐったりと机に頭をつけ、それっきり動かなくなってしまったのだ。


それを見て一気に血の気の引いたイザークは、同じように顔を青くしているディアッカにすぐさま指示を飛ばした。


「どんな手を使ってでもいい、今すぐアスランに連絡を取れ!! くっそぉ、こんなことならすぐさまミネルバの後を追えば良かった!!」







(あとがき)
キラ君同じところをぐるぐる回ってます。

これで何度同じ言葉を書いたんでしょうかね、私。

ってかぶっちゃけ、そんなことよりもこの展開事態が実は予想外。

いや、こんなシリアス〜にはならないはずだったのに・・・・。




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