≪アスラン!! 何やってんだよ、お前!!≫ アスランがベットで就寝していると、突如繋がった回線から珍しく焦ったようなディアッカの声が部屋に響き渡った。 『・・・・・・・・・何って、お前こそ何なんだ・・・・・。』 行き成り起こされた事に少々ムッとしながらも返すと、ディアッカは怒鳴るように言ったのだ。 ≪キラの様子がおかしい!! 今すぐ部屋に行けこの腰抜けがぁ!!!≫ ディアッカ、イザークの口調移ってる・・・・・。 まだ覚め切っていない頭でまずそう思ってから、アスランはディアッカの言葉に「・・・・・は?」と返した。 今なんか、信じられない言葉を聞いたような・・・・・・。 そう思いつつも回線端末を耳から放してそれを見ていると、それでも十分聞こえるディアッカの声が、漸くアスランの脳に目覚めを促す。 ≪そんなんだからヘタレとか何とか言われるんだよお前!! キラがぐったりして動かないんだ!! 早く行け!!≫ いつに無く攻撃的なディアッカの言葉を理解すると同時に、アスランは端末を投げ捨て、部屋から走って出て行ったのだった。 奪われる翼29本当は、ザフトでも無いアスランが歩き回るべきではないだろう。 しかしそう思いながらも彼は、嫌な汗をかきながらミネルバ艦内を走り回っていた。 アスランは“アテナ”の部屋を知らないのだ。だから勘の促すまま足を進め、どうやらパイロットの移住スペースらしき所までたどり着いたが、ドアの数が多すぎてどれが“アテナ”の部屋なのかは分からない。 とりあえず格納庫から近い場所から虱潰しに探していくしかないか、と覚悟を決め、アスランはまず最初に目についたドアを持っていた小型ハロで開錠して部屋に押し入った。 「おわぁ!? 何だよあんた!!」 しかしそこにキラはいない。アスランは舌打ちして、次のドアへと向かおうとした。 だがそれは、丁度ドア付近に立っていた少年がアスランの肩を掴んだことで止められてしまったのである。 「放せ!!」 「無理に決まってるだろ!! 民間人のあんたが そう怒鳴ったのは、あの気に食わない赤目の少年―――シン、だ。 アスランはらしくも無く一気に頭に血が上り、シンの胸倉を掴んで怒鳴るように返す。 「キラの部屋はどこだ!!」 そんな鬼気迫るアスランの様子に思わず息を呑んでから、シンも負ける物かとどなり返す。 「あんたなんかに教えるわけないだろ!! 戻れよ!!」 ちなみに、双方頭に血が上り始めていて、ドアが開いたままになっていることに気付いていない。 廊下を歩いていたレイは、突如彼らの怒鳴り声が聞こえたので慌てて自室に戻ってきた。 それからルナマリアも何事かと自分の部屋から顔を覗かせる。 「言え!! キラの部屋はどこだ!!」 シンの胸倉を掴んで尚もそう叫ぶアスランを、駆けつけたレイは慌てて引き剥がした。 ルナマリアも慌てて寄ってきて、逆に掴みかかろうとしているシンを引き離す。 「何があったんです?」 強張った表情で冷静にそう問うレイを頼もしく思いながら、ルナマリアはアスランを凝視する。 「キラの部屋は何処だと聞いているんだ!!」 だが興奮している様子のアスランは同じ言葉を繰り返すだけ。 同じく興奮しているらしいシンを無視し、ルナマリアとレイは頷きを交わすと、アスランを解放して「あそこです」と言った。 「レイっ!?」 簡単に教えてしまったレイにシンは信じられない、とでも言いたげに名を呼ぶが、彼は気にした風も無くアスランを促す。 アスランは冷静に対応するレイの様子につられるように冷静さを取り戻し、急いで彼が指差したドアへと向かった。 そして、今度もまた小型ハロで開錠して部屋に入ると、そこには―――――・・・・・。 「キラ!!」「「「アテナ!!!」」」 いつの間にか椅子から落ちてしまったらしいキラが、ぐったりと床に体を横たわらせていたのだ。 アスランはキラの脈を慌てて取って、意識の無い彼を抱き上げながらふと向けた視線の先に、電源のついたディスプレイを発見することが出来た。 そこに映っていたイザークに頷くと、彼は悔しそうに唇を噛みながらもすぐに電源を落としたのだ。 無論それを、アスランと一緒に“アテナ”の部屋に入ってきていたシンたちも見た。 「あ、あれジュ」 驚いたようにイザークの名を呼びそうになったシンをレイが慌てて止め、それに怪訝そうな瞳を向けてくるルナマリアとシンに「今見たことは誰にも言うな」と口パクで伝えると、彼らは困惑しながらも頷いてくれた。 アスランも自分の後ろでなされたそんなレイの行動に困惑しながら、キラを持ち上げて立ち上がったのだった。 それから、ふと感じた違和感にぎょっとする。 「キラ、お前・・・・・っ」 そう呟いて、アスランもまたイザークと同じように悔しそうに唇を噛み、そのまま歩き出した。 「あ、あの・・・・・?」 ルナマリアの困惑した声が聞こえたが、アスランは振り返らずに「医務室に連れて行く」と言ってそのまま行ってしまったのだ。 シンもルナマリアと同じような顔をしながらも、それ以上にアテナの具合が気がかりで、小走りにアスランの後を追う。 レイとルナマリアもそれを追って、結局皆して医務室へと転がり込んだのだった。 「何が・・・・・・あったんだ・・・・・。」 キラを医務室に連れて行ってすぐ。 アスランはカガリが気を失った時の数倍はキラの事が心配だったが、付いて来たシン達に何も言わずに医務室を出た。 誰もいないレクルームがあったのでそこに腰をおろし、小型ハロの通信システムを起こしてそう言ったのである。 通信の相手は言わずもがなイザークだ。すでに夜中といっていい時間帯だったが、双方そんなことを気にしたりなどしない。 ≪・・・・・・・・・・・俺も良くはわからん・・・・・。≫ 声からして意気消沈しているイザークに、それ以上何かを言う気にもなれず無言でいると、イザークはぼそりと呟いた。 ≪・・・・・シン、という赤服がいたはずだが・・・・・・・≫ 「・・・・あぁ。」 ≪・・・・・そいつらに、嫌われるのが怖いのだと言っていた。≫ 「はぁ・・・・・?」 内心またあいつか、と嘆息しながら、アスランは無言で続きを促す。 ≪・・・理由はよくわからん。だが、そいつらに“真実”を言うことが出来ないと悩んでいた。≫ 嫌われたくないから全てを話してしまいたい。でも全てを話せば嫌われてしまう。 その狭間で迷っていたことを、アスランも薄々感づいてはいた。 だが、 「真実・・・?」 偽名のことか。 そう問うとイザークは数秒悩んだ後、≪それだけではないみたいだな≫と返す。 ≪フリーダムの名が出てた。思えばあの状況でフリーダムはあまり関係が無い気がする。・・・お前、何か聞いていないのか?≫ 「フリーダム・・・・・・?」 そう言われて、ふと思い出す。 『彼はオーブからの移住者なので・・・』 『流石、綺麗ごとはアスハのお家芸だな!!』 「シン・・・オーブ・・・・フリーダム・・・・・・・アスハ・・・・? ・・・・・そうか!」 ≪なんだ?≫ イザークが訝しげな声を掛けたが、アスランはあえて無視した。 オーブ国民がかの地から移住しなくてはならない状況に陥ったのは、先の大戦中、2回続けて行われた地球軍によるオーブ攻略戦の時のみ。 その時フリーダムはどちらの戦いにも参戦していたのだ。 「仮定でしかないのだが、キラがフリーダムに乗っていた時、シンはオーブで・・・・・・・・!? 誰だ!!」 アスランは不意にレクルームの入り口付近で物音がしたように感じ、自分の迂闊さに後悔しながら鋭い声を上げた。 すると、数秒の間を開けて入り口に立ったのは、長い金髪をなびかせる赤服の少年。 「君は・・・・・。」 「レイです。立ち聞きをしてしまい申し訳ありませんでした。」 そう言って頭を下げるレイに、動揺している様子は見られない。 アスランはとりあえず聞いていたのがシンでなかったことに安堵して、「いや・・・・・」と歯切れ悪く返す。 するとレイは、何を考えているのかよくわからない無表情で言ったのだ。 「今の話は聞かなかったことにします。」 「あ、あぁ。・・・・・・・・すまないな。」 「いえ。それでは失礼します。」 何かに対して謝罪をするアスランを冷静に見やり、レイは入り口から姿を消した。 それをなんとなく見送ってから、数分後、アスランはハロに向かって言った。 「・・・・・場所を移動する。」 ≪あぁ・・・。≫ そうしてアスランがレクルームの部屋を出た時、すでにレイの姿はどこにも見当たらなかった。 本当に迂闊だった、とどうやら未だキラが倒れたことに動揺しているらしい自分に舌打ちして、アスランは与えられた部屋へと引き上げたのだった。 ―――――アスランは知らない。 本当は、レイにもキラとフリーダムの関係を知られてはいけなかったという事を。 キラの言う“真実”が何なのか。 そして、 話を聞いてしまった者が、レイだけではなかった事を――――――・・・・。 (あとがき) 一応解説しておきますけど。キラの言う真実とは、フリーダムに乗っていたという過去と、自分の出生の秘密です。ぶっちゃけ名前はどうでもよさげ。(ぇ 暗い暗いクライ。翼・・・・・・・・早くギャグに移りたいよ・・・。 |
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